目指すは攻めのバックオフィス~総務とワークフロー~(前編)
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本記事はワークフロー総研 フェローに就任した『月刊総務』 編集長 豊田 健一氏とワークフロー総研 所長 岡本が「総務×ワークフロー」のテーマで対談した内容を前編・後編でまとめたものです。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け全国的にテレワークが推奨されましたが、総務はじめバックオフィスの方が多く関わる業務であろう社内申請や契約書関連の業務がテレワークの体制に対応しておらず、問題視されています。
5月にワークフロー総研が経営者層を対象に実施した実態調査では、稟議や社内申請がBCP(事業継続計画)見直しの対象として、多く回答票を得ています。(参考記事はこちら)
今回の対談では上記のような課題を背景に、総務はじめバックオフィスの皆さんが抱えるリアルな課題やどのように改善に取り組んでいけばよいか、自身も過去総務の立場を経験され、長年総務の取材を続けてきた豊田氏と、ワークフローを軸に働き方改革に取り組む岡本が議論を交わしました。
「縁の下の力持ち」から「企業のリーダー」に!
これからの総務に必要不可欠なワークフローシステム
本書では、総務部門の業務効率化において、ワークフローシステムが役立つ理由について解説しています。
こんな方におすすめ
・総務部門の業務を効率化したい
・戦略総務へと転換を図りたい
・紙の書類の処理や問い合わせ対応が負担
OUTLINE 読みたい項目からご覧いただけます。
~今回対談を実施した環境~
緊急事態宣言を受け、Zoomで対談を実施しました。
総務は社内営業を乗り切るための良きパートナーを求めている
岡本:本日はどうぞよろしくお願いします。
豊田:こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。
岡本:実は豊田さんは以前からエイトレッドのほうでセミナーにご登壇いただいたこともあって、何かとご縁があったのですよね。
豊田:そうなんです。2017年に拙著『戦略総務』を出版しました。
このタイトル通り、攻めの姿勢で、能動的に会社を変えていける総務を目指した思想は数年前から持っていたわけですが、とはいえ、まだまだバックオフィスに対する世間の期待値は低かったのが現実でした。
しかしエイトレッドさんはワークフローシステムというバックオフィスに大いに関わる領域の製品を開発・提供されているので、認識している課題が同じだったんですね。
各所でセミナーをご一緒して反響もいただいて、少しずつ風向きが変わってきているのを感じています。
岡本:はい。著書拝読しましたが、今の世の中にとても求められている内容だと思っています。ワークフロー総研がメディア開設に至ったのは、「ワークフロー」という単語の認知拡大、働き方改革への貢献のためです。
ではなぜこの時期にしたかというと、コロナ禍で本質的な働き方改革への社会的要請が高まったからです。
特に、半ば強制的にテレワーク体制へ移行していた時期、申請や契約関連の処理をするためにオフィスにやむなく出社せざるをえず、不満が噴出していました。
いわゆる「紙、ハンコ問題」は総務はじめ、いわゆるバックオフィスが大いに関わる業務ですよね。
豊田さんのご参画で、戦略総務に変わるための知見をぜひ共有いただきたいと考えています。
豊田:もちろんです。実はこれまで活動をする中で、気になっていたことがあります。それを解消するためにワークフロー総研の活動に参画させていただくことに決めたんですよ。
岡本:もう少し詳しくお聞かせいただけますか?
豊田:はい。私が『月刊総務』はじめ、セミナーなど発信活動を行う理由の一つは、総務の方に戦略総務という概念を知っていただいて、行動につなげていただく一助とするためです。
しかしその後の話を聞くと、経営者の理解が得られない、あるいは現場の抵抗があって結局改善には至らないというケースも多いのです。
このような結果を聞いて、経営者・現場の皆さんからの総務に対する固定概念や期待値を変えるということもあるのですが、私はどうも総務の皆さんは丸腰で戦っているように思うのですね。
丸腰というのは、総務が具体的な事例、改善後の姿を彼らに示せていないのではないかということです。
一度挫折すると次の提案はしにくいものです。結果、改善がなされないままになってしまいます。
私がワークフロー総研に参画したのは、こうした状況を変えるべく、総務はじめバックオフィスの人たちが本当に参考にできる、提案のために使えるような事例や知見を提供したいと考えたからです。
いわば社内営業に勝つための“武器”を持っていただくのが目的です。
ワークフローシステムについて詳しく知る
岡本:ITツールの導入時となると、情シスの方向けに、社内提案のためのTipsや製品比較表をお渡ししたりします。
しかし総務の方は、製品比較というよりまず業務改善のステップを現場の方に説明したり、部署や役職、あるいは現場と経営で異なる改善の効果をそれぞれの立場で説明したり、彼らに納得してもらわないといけません。
そのための情報が求められているということなのですね。
豊田:おっしゃる通りです。何かを変えるというのは、前例がないことをやろうとしているということです。
当然総務にとっても初めてのことですし、業務改善やITツール導入のプロではありません。
そのためワークフロー総研の活動を通して、専門家による支援を提供したいと考えています。
岡本:なるほど、それはぜひワークフロー総研が総務の皆さんのパートナーとして支援していきたいですね。
総務が悩む、あるべき姿と現実とのギャップ
岡本:豊田さん、少し話が戻りますが、ここで改めて「戦略総務」について詳しく教えていただけますか? 総務の皆さんが「戦略総務」を目指すために、ワークフロー総研は何ができるのかを考えていきたいと思います。
豊田:はい。これまでの総務といえば受け身で、営業や企画など、特定の部署以外の仕事は全部総務の仕事と言われるくらいのいわゆる“何でも屋”。
あらゆる部署から突発的に飛んでくる仕事を捌くのに精一杯で、業務改善というキーワードにも縁がない。
このイメージから、周囲からの総務に対する期待値は決して高くはありません。
残念でならないのが、何より総務自身が従来の総務の固定概念に囚われてしまって、そのあり方でい続けてしまっているのが総務を取り巻くイメージ、そして現状でしょう。
このような従来の総務とはまったく逆のあり方を示しているのが「戦略総務」です。
能動的に社内を動き回り、経営にも関わる役割を果たします。定期的に仕事の棚卸をし、積極的に外部のBPOやITツールを活用して、本来リソースを割くべき戦略企画に集中するようなイメージです。
岡本:確かに、総務というと会社によってそのポジションは様々あると思いますが、ご指摘されたような従来の組織のあり方が今でもほとんどなのでしょうね。
たまに、総務と経営が強く結びついていて総務のプレゼンスが高いという会社も見聞きしますが、固定概念を作ってしまっている要因は何かありますか。
豊田:これまで出会ってきた戦略総務を体現していらっしゃる総務の方は、経営とよくコミュニケーションをとっているという特徴があります。ただ、このように上手くいっている例は多くありません。
総務は全社とのつながりがありますから大きな仕事ができる立ち位置である一方、全社とのつながりがある故に、様々なところでハレーションが起きてしまって、抵抗に遭いやすいんです。
たとえ経営者からの指示で何かアクションを起こしても、不具合が生じれば矢面に立つのは総務です。
経営者に直接不満は言えませんから。こんな状況は総務じゃなくても誰だって避けたいですよね。こんな一面もあって、積極的になれないということもあると思います。
岡本:なかなか難しい立場ですね。 そのような状況で自分たちの業務改善も進めつつ、全社の改善に取り組むのはハードルが高いということが分かりました。
総務のDXは小さな成功事例を作ることから始める
岡本:総務の方からすると、何かを変える・導入するといった際には経営者への説明もそうですし、現場の方への説明も、両方必要だということですね。
それぞれが納得できるようにしなければならないと。うまく立ち回っている方はどんな動きをしているのか気になります。
豊田:そうですね。進め方でいうと、これまで上手くいっている総務の皆さんは全社一斉に何かを実施するということはやっていないようです。
例えば課題を持っている部長と事前に調整をして、一部で効果検証したものを横展開していると聞きます。スモールスタートで始め、小さくても何かしらの実績を作って進めているんですね。
岡本:なるほど。そのほうが経営にとってもプロジェクトを推進する総務の立場でもリスクが少なくて済みますね。
その進め方に沿ってワークフロー総研から業務改善とそれに伴うDX(デジタルトランスフォーメーション)に何か提案ができるとすれば、成功事例のストーリーをお伝えするのもそうですが、改善に着手しやすい業務領域や、導入ハードルの低いITツールをお伝えするということができるかもしれません。
例えば現在紙の書類で、場所はオフィスで業務を行っているとすれば、まず情報共有やコミュニケーションから電子化していければ良さそうですので、チャットやグループウェア、ワークフローシステムというITツールが使えることが分かり、その際の課題や乗り越えるためにはこういったポイントがあります、といったようなことをお伝えできれば皆さん行動に移しやすくなるでしょうか。
豊田:そうですね。本来であれば業務改善の大きな絵を描いて、業務改善withデジタル、つまりITツールを手段としてどのように業務設計をするかという戦略を描ければよいのですが、そのための時間もとれないという総務も多いですから、まず目の前の業務を圧縮していくことから始めていこうと伝えています。
総務にとって今ある業務から始めるのが効率化に直結しますし、よく分かっている業務なので一番取り組むハードルが低いはずなんです。
新しいパッケージシステムを買ってきて新しい業務をゼロから作りあげるのは大変です。失敗したときのリスクも大きい。
だからこそ今ある業務をそのまま電子化・置き換えできるワークフローシステムや、RPAといったITツールをある種入門編として使ってみて、1つでいいので成功例を作るのが、最初の一歩と言えます。
岡本:製品を提供する側も領域を絞って導入するようであればサポートもしやすく、一緒に成功事例を作りやすいと思います。
小さな一歩であってもその後のDXの行く末を占うことになりますから、注力すべき場所は明確で成功しやすいほうがいいです。
手前味噌ですが目の前の業務の効率化でいうと、ワークフローシステムは非常に大きな実績を出しているので最初のITツールとしておすすめです。
例えば数百種類の書類が電子化できた、書類の回覧と承認で20日かかっていたのが最短3日に短縮されたといった事例が報告されています。実績を作れるといった意味でも最適ではないでしょうか。
DXについて詳しく知りたい人はこちら
豊田:最初の事例を作るその一歩が、今後様々な変革に対するリトマス紙であると、総務もその覚悟を持って取り組まないといけませんよね。
目の前の業務を型化して自動化していくというのは業務改善の定石と言えます。何とかして成功事例を作っていけば、総務の業務改善をさらに広げ、それを社内展開へ発展させる足場となるはずです。
ワークフロー総研の活動を通して最初の成功事例作りを支援していきたいと思っています。
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「縁の下の力持ち」から「企業のリーダー」に!
これからの総務に必要不可欠なワークフローシステム
本書では、総務部門の業務効率化において、ワークフローシステムが役立つ理由について解説しています。
こんな方におすすめ
・総務部門の業務を効率化したい
・戦略総務へと転換を図りたい
・紙の書類の処理や問い合わせ対応が負担
<対談者プロフィール>
豊田 健一氏
ワークフロー総研 フェロー
株式会社月刊総務 代表取締役社長
『月刊総務』 編集長、戦略総務研究所 所長
早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、販売会社の管理、株式会社魚力で総務課長を経験後、ウィズワークス株式会社を経て、株式会社 月刊総務へ。現在、日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』の編集長、戦略総務研究所の所長。一般社団法人 ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事やAll Aboutの「総務人事・社内コミュニケーション・ガイド」も務める。
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ワークフロー総研 所長
岡本 康広
ワークフローシステムを開発・提供するエイトレッドの代表取締役社長も務める。
ワークフローを出発点とした働き方の見直しが意思決定の迅速化、組織の生産性向上へ貢献するという思いからワークフローの普及を目指し2020年4月、ワークフロー総研を設立して現職。エイトレッド代表としての知見も交えながら、コラムの執筆や社外とのコラボレーションに積極的に取り組んでいる。
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「ワークフロー総研」では、ワークフローをWork(仕事)+Flow(流れ)=「業務プロセス」と定義して、日常業務の課題や顧客の潜在ニーズの視点からワークフローの必要性、重要性を伝えていくために、取材やアンケート調査を元にオンライン上で情報を発信していきます。また、幅広い情報発信を目指すために、専門家や企業とのコラボレーションを進め、広く深くわかりやすい情報を提供してまいります。