トレンドでひも解くこれからの人事の在り方とは
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企業経営になくてはならない役割の1つに「人事」が挙げられます。
人事とは、経営資源である「ヒト」に関連する業務全般を指し、人事を担う部門が円滑に機能するかしないかで、企業経営の成果を大きく左右するといっても過言ではありません。
そこで、今回の記事では、人事の基本的な業務について整理すると同時に、各業務における昨今のトレンドを押さえることで、これからの人事の在り方について考えたいと思います。
OUTLINE 読みたい項目からご覧いただけます。
人事部門の基本的な業務
人事部門の基本的な業務は、大きく「採用活動」「人材育成」「人事制度」「労務管理」「組織改編」の5つに分けることができます。
それでは、それぞれの業務について詳しくみてみましょう。
採用活動
採用活動とは、自社が求める人材を獲得するための活動を指します。
人事といえば、採用をイメージする人が多いと思いますが、一概に採用といっても、その活動内容は多岐にわたります。
主な採用活動
- 採用計画の策定(求める人物像、採用人数、予算、スケジュールなど)
- 求人募集(求人票の作成、採用コンテンツの作成、メディアへの掲載、説明会など)
- 選考(書類、面接、グループワーク、適正検査など)
- 内定と入社手続き(内定通知、内定式、受け入れ準備、書類手続きなど) など
人材育成
人事部門における人材育成とは、従業員の成長を促し、ひとりひとりのスキルや価値を向上させることを指します。
前述にあるように、「ヒト」は経営資源の1つであるため、「ヒト」が成長することにより、企業経営も成長することができるといえるでしょう。
主な人材育成
- 研修 (社内研修、外部集合研修など)
- OJT(先輩社員や上司が実践形式で指導する方法)
- 自己啓発(本人の意思による育成。資格取得、講座の参加、ビジネス書の講読など)
- e-ラーニング(インターネットを活用) など
人事制度
既定の評価基準に基づいて従業員を評価し、処遇を決定することを人事制度といい、「評価制度」「等級制度」「報酬制度」の3つで構成されます。
従業員のモチベーションに大きくかかわる業務であるため、人事の仕事の中でも重要な業務であるといえます。
人事制度を構成する3つの要素
- 評価制度…既定の指標を基に、従業員の能力や会社への貢献度を評価する仕組み。
- 等級制度…従業員の能力や職務、役割などを分類し、階層化する仕組み。
- 報酬制度…等級や評価に基づき、従業員への給与や賞与などを決定する仕組み
労務管理
労務管理とは、従業員の環境や条件など労働に関連する業務を指します。
労務管理が行われる目的は「生産性の向上」と「リスク回避」の2つで、手間のかかる業務が多いですが、適切に行われることで従業員は安心して働くことができ、企業は世間からの信頼を獲得することができます。
主な労務管理
- 法定三帳簿の管理
- 給与計算
- 勤怠管理
- 保険の手続き
- 福利厚生
- 就業規則
- 業務改善
- 安全衛生管理 など
組織改編
組織改編とは、企業の目標を達成するために組織構成を変更することを指します。
市況や経営・事業戦略、従業員個人のスキルなど、幅広い視野が必要となる業務です。
主な組織改編
- 新規部署立ち上げ
- 部署の統合・分割・解体
- 部署の名称変更
- 人事異動 など
各業務における昨今のトレンド
人事における基本的な業務が分かったところで、次は各業務における昨今のトレンドについてみてみましょう。
テレワーク
採用活動における昨今のトレンドとして、「テレワーク」が挙げられます。
2021年に、就職情報サイトを運営する学情が、2022年3月卒業予定の大学生を対象に調査を実施したところ、およそ57%がプレエントリー時にテレワーク制度があるか重視する傾向があり、また、75%を超える学生が、テレワーク制度があれば「利用したい」もしくは、「どちらかといえば利用したい」と回答しています。 出典:ITmedia NEWS「就活で「テレワーク」重視は6割 入社後の人間関係構築には不安も」(2021年2月19日)
また、テレワーク制度は、新卒のみならず、中途採用の求職者からの需要も高まっており、特に昨今どの業界からも引く手数多のIT人材は、テレワークでの就労を前提条件にしていることも少なくありません。
これらの状況を鑑みても、業務上難しい場合を除き、採用活動を有利に進めるためにもテレワーク制度の整備がマストであるといえるでしょう。
リスキリング
次に、人材育成の分野で昨今注目を集めるのが「リスキリング」です。
リスキリングとは、新たな業種・職種に順応するため、あるいは現在の業種・職種の変化に対応するためにスキル・ノウハウを習得する取り組みを指します。
2022年10月の、岸田文雄総理による臨時国会における所信表明演説でも、リスキリングの支援に今後5年間で1兆円の予算を投じる方針が明言され話題を集めました。
技術革新やビジネスモデルの変化が激しい昨今において、DX人材を育成する重要な人材戦略として、リスキリングの取り組みは業界を問わず必須であるといえるでしょう。
ジョブ型
人事制度における近年の大きな潮流として「ジョブ型(役割主義)」と呼ばれるものがあります。
ジョブ型とは、年功序列による不公平や、成果主義による従業員への過度なプレッシャー、チームワークの悪化といった旧来の人事制度のデメリットを取り除く、新しい評価基準として台頭してきた人事制度で、企業があらかじめ明確に規定した職務内容に基づいて、職務や役割に応じて従業員を評価する制度を指します。
富士通や日立製作所をはじめとした大企業で相次いで導入・拡大されていることから、昨今注目を集めています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)
労務管理と組織改編のトレンドとして挙げられるのは「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。
2つの業務の共通の課題は、作業の手間が膨大で本来注力すべき仕事に集中できないという点です。
そこで、勤怠管理システムや、人事システム、ワークフローシステムなどさまざまなDXツールを導入・連携して業務をデジタル化することで、業務効率化および生産性向上の実現を目指します。
\人事業務のDX化をはじめたい/
これからの人事の在り方とは
トレンドを見て分かるように、昨今の人事戦略では従業員を「組織の中のひとり」ではなく、「それぞれの個性を持った個人」として捉える傾向にあります。
そして、企業が継続的に成長するためには、その個人の価値を最大化させる必要があるのですが、そのために重要になるのが多様性への対応です。
人事部門が取り組むべき多様性への対応
それでは、人事部門がいま取り組むべき多様性への対応についていくつかご紹介します。
人的資本経営
人的資本経営とは、「ヒト」をコストではなく資本として捉え、積極的に投資を行い、その価値を高めることで、企業の持続的な成長につなげるという経営手法を指します。
「ヒト」にスポットライトが当たっていることから、人的資本経営の実現において人事部門が重要な役割になるといえます。
明確な時期は明らかになっていませんが、大手企業4000社を対象に、早くて2023年3月期以降の決算において、有価証券報告書の内容に多様性の分野を含む人的資本情報の開示が求められることとなりました。
DEI推進
DEIとは、「Diversity(ダイバーシティ、多様性)」「Equity(エクイティ、公平性)」「Inclusion(インクルージョン、包括性)」の略で、従業員の個性を発揮することが企業の価値を創造するという概念を指します。
今までにないイノベーティブな経営を実現する取り組みとして注目を集めています。
DEI推進における人事の役割はさまざまにありますが、中でも特に重要なのは組織への浸透です。
場合によっては社内の理解を得ることが難しいこともありますが、経営層と手を組み、根気強く必要性や重要性、DEI推進により企業が目指すビジョンについて情報発信したり、従業員たちと対話するようにしましょう。
まとめ
さて今回の記事では、人事部門の業務に焦点を当て、昨今のトレンドや今後の人事の在り方についてまとめてみました。
グローバル化、少子高齢化、ICT技術の急激な進歩、自然災害、コロナ禍などVUCA時代とよばれる予測困難な現代の中で、人事部門は、人々の価値観の変化とともに変化し、柔軟に対応することが求められています。
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