フリーアドレスとは?メリット・デメリットと導入のポイントを解説!
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ICT(情報通信技術)の発展やテレワークの普及により、「フリーアドレス」というオフィススタイルを導入・検討する企業が増えつつあります。
しかし一方で、
「そもそもフリーアドレスって何?」
「フリーアドレスにはどんなメリットがあるの?」
「フリーアドレスをうまく導入する方法は?」
といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、注目度が高まっているフリーアドレスに焦点を当て、その意味や注目を集めている背景、導入のポイントについて解説します。
フリーアドレスの導入・運用に役立つシステムも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
OUTLINE 読みたい項目からご覧いただけます。
フリーアドレスとは?
「フリーアドレス(Free Address)」とは、オフィス内に個人専用のデスク・席を設けないオフィススタイルです。
英語圏においては、このようなオフィススタイルを指して「ホットデスキング(Hot Desking)」と呼ぶのが一般的です。
フリーアドレスでは、フロアに設置された共用のデスク・席のほか、リラックスしながら業務を行えるソファ席や、Web会議用のブース席、立ったままPC作業を行えるスタンディングデスクなどが設置されているオフィスも存在します。
従業員ごとの固定席ではないので、従業員はその日の気分や業務内容に応じて就業場所を選択でき、ノートPCなどのモバイルデバイスをインターネット接続して業務を行います。
フリーアドレスが注目を集めている背景
意外にも、フリーアドレスは日本で誕生したオフィススタイルです。
1987年、大手総合建設会社である清水建設株式会社の技術研究所が試験的に導入したのが最初だといわれています。
その後、1990年代から2000年代にかけて徐々にフリーアドレスが浸透し、とくに近年はフリーアドレスを導入・検討する企業が急速に増えつつあります。
では、フリーアドレスが注目を集めている背景について詳しく確認していきましょう。
ICT(情報通信技術)の進化
フリーアドレスへの注目度が急速に高まっている背景には、ICT(情報通信技術)の著しい発展があります。
フリーアドレスというオフィススタイルが提唱され始めた1980年代後半から1990年代にかけては、PCやインターネットが普及し始めた時期であり、固定電話やFAX、郵便などによる通信が主であり、就業場所の自由さという面で物理的な障壁が多く残っていました。
やがて、ICTの発展により無線LANやモバイルデバイスが普及したことで、遠隔地でも円滑に通信できる環境が整います。
さらに、ペーパーレス化・デジタル化を実現するITシステムやクラウドサービスが登場したことで、業務を行う上での物理的な障壁も解消することが可能になりました。
これらのICTの発展によって、フリーアドレスなどの「場所に縛られない働き方」を取り入れるハードルは大きく下がったと言えるでしょう。
テレワークの普及
先述したICT技術の発展に加え、国が主導する働き方改革や、昨今の新型コロナウイルス感染症の流行拡大により、国内企業でテレワークを導入する動きが急速に広まりました。
これにより、オフィス以外の場所で働くことのメリットが認知された一方で、コミュニケーションの希薄化をはじめとしたテレワークの課題も顕在化しました。
また、出社人数の減少によってオフィススペースに余剰が生まれたことで、オフィスの在り方について見直しはじめる企業が増え始めます。
そうしたなか、柔軟な働き方を推進しつつ、コミュニケーションの活発化やオフィススペースを有効活用する手段として、フリーアドレスへの注目度が高まってきています。
ハイブリッドワークやABWへの関心の高まり
テレワークから一歩進んで、ハイブリッドワークやABW(Activity Based Working)といった働き方にも注目が集まっています。
ハイブリッドワークとは、テレワークとオフィスワークを組み合わせた働き方のことで、2つのワークスタイルの「いいとこ取り」とも言えます。
ABWは、「場所」と「時間」を自由に選択できる働き方のことで、従業員にとってより自由度の高いワークスタイルです。
ハイブリッドワークやABWといったより柔軟な働き方をを見据えて、フリーアドレス導入によるオフィス環境の整備を検討する企業が増えてきているのです。
フリーアドレスを導入するメリット
次は、企業がフリーアドレスを導入することの主なメリットとして、以下の3点をご紹介します。
フリーアドレス導入のメリット
- オフィススペースの有効活用
- コミュニケーションの活性化
- 業務効率・生産性の向上
それぞれ詳しく確認していきましょう。
オフィスの有効活用
フリーアドレスを導入することで、オフィスのスペースを有効活用することが可能です。
従来型のオフィスは従業員ごとにデスクやキャビネットが割り当てられるため、外回り営業や出張、あるいはテレワークによる出社人数の変動で、デッドスペースが生まれがちです。
一方、フリーアドレスオフィスはレイアウトの自由度が高く、従業員数や出社人数の増減にも柔軟に対応することができます。
また、テレワークとフリーアドレスの併用によって出社人数をコントロールできれば、現状の執務スペースの規模を維持する必要がなくなります。
そのため、Web会議用のスペースやコミュニケーションエリア、集中作業ブースなどを拡張したり、場合によってはオフィスを移転・縮小してコストを大幅削減することも可能です。
コミュニケーションの活性化
フリーアドレスのメリットとして、部署部門の枠を超えたコミュニケーションの活性化を挙げることができます。
従来の固定席が撤廃されることで、部署部門を超えた従業員同士の交流が生まれやすくなります。
これまで交流する機会が少なかった部署や従業員同士が接することで、互いが持つノウハウ・ナレッジの共有が進み、業務課題の解決や商品・サービスの改善や開発につながるアイデアが生まれるかもしれません。
業務効率・生産性の向上
フリーアドレスの導入は、業務効率や生産性の向上にも効果的です。
業務内容や従業員の気質によっては、関係者とコミュニケーションをとりながら作業を進めたほうが効率的な場合や、一人で集中して作業に没頭するほうが効率的な場合もあるでしょう。
フリーアドレスオフィスであれば、各従業員がその日の気分や業務内容に応じて適切な環境で仕事に取り組むことができ、業務効率化や生産性向上につなげることができます。
自ら就業場所を選択できるため従業員の主体性が育まれたり、仕事に対するモチベーション向上といった効果も期待できるでしょう。
フリーアドレス導入のデメリット
フリーアドレス導入を検討する際は、メリットだけでなくデメリットにも目を向ける必要があります。
フリーアドレス導入によるメリット・デメリットを吟味したうえで、導入するか否かを判断していきましょう。
初期コストの負担
フリーアドレス導入には、初期コストが発生します。
レイアウト変更やオフィス家具・備品の買い替え、ネットワーク環境の整備やITシステム・クラウドサービスの導入など、フリーアドレスを機能させるための環境整備が必要になります。
マネジメントの煩雑化
マネジメントの煩雑化もフリーアドレス導入のデメリットと言えます。
部署部門単位でまとまった固定席ではないため、業務の「報連相」がスムーズに行えなくなったり、部署部門への帰属意識が希薄化する可能性が考えられます。
職種によっては固定席のほうが適しているケースも
職種によっては、フリーアドレス制よりも固定席での業務の方が適しているケースもあります。
たとえば、紙ベースで帳票類を運用している場合、経理などのバックオフィス部門がどこにいるかわからずに請求・支払処理が停滞してしまう恐れがあります。
また、サーバー保守・運用や機密情報を取り扱う業務では、セキュリティの観点から就業場所が限られてしまうケースも考えられます。
フリーアドレス導入を成功させるポイント
フリーアドレスの導入を成功させるには、覚えておくべきいくつかのポイントがあります。
フリーアドレス導入を成功させるポイント
- フリーアドレスの導入目的を明確化
- 入念な事前調査とルール策定
- 業務のペーパーレス化・デジタル化は不可欠
それぞれ詳しく確認していきましょう。
フリーアドレスの導入目的を明確化
まずは、「なぜフリーアドレスを導入するのか」という目的を明確にしておくことが大切です。
目的がはっきりしないままフリーアドレスを導入しようとしても、従業員の理解を得られないだけでなく、漠然と期待している効果を得ることはできません。
フリーアドレス導入の目的を明確にした上で、指標を設定して継続的に検証・改善を行いましょう。
入念な事前調査とルール策定
フリーアドレス導入を成功に導くには、入念な事前調査が欠かせません。
空席・在席状況を調査して設置するデスク・席などの数を検討するのはもちろんのこと、どんなエリアや設備が必要か従業員の意見も収集してレイアウト設計することが大切です。
また、フリーアドレス導入後の運用ルールも策定する必要があります。
たとえば、「出社ルール」や「共用設備の利用ルール」、「私物の取り扱い」、「セキュリティガイドライン」などです。
まずは一部のフロアや部門などに試験導入して検証を行ったり、段階的に範囲を拡大していくのも一策です。
業務のペーパーレス化・デジタル化は不可欠
フリーアドレスを有効に機能させるためには、業務のペーパーレス化・デジタル化が不可欠です。
従来のオフィス勤務と異なり、フリーアドレスは固定席を設けないため、誰がどこで仕事をしているのかを把握しづらくなります。
そのため、紙ベースで業務を行っていると、手渡しでの回覧に時間がかかる、承認者・決裁者が不在で業務を進められない、といった事態に陥りかねません。
自由に就業場所を選択できるというフリーアドレスの利点を活かすためにも、ペーパーレス化・デジタル化を進めて、どこでも業務を行える環境を整えましょう。
フリーアドレス導入・運用にワークフローシステムが効果的
次は、フリーアドレス導入・運用に役立つソリューションとして、ワークフローシステムをご紹介します。
ワークフローシステムとは、社内で行われる各種申請・稟議などの手続きを電子化するシステムのこと。
では、ワークフローシステムがフリーアドレスの導入・運用に効果的な理由を見ていきましょう。
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業務のペーパーレス化・デジタル化を促進
先述の通り、フリーアドレス制の利点を活かすには、業務のペーパーレス化・デジタル化が不可欠です。
ワークフローシステムを導入することで、社内で行われる各種申請・稟議をシステム上で再現でき、社内業務のペーパーレス化・デジタル化を実現可能です。
ノートPCやタブレット、スマートフォンなどのデバイスで申請から承認、決裁まで行うことができます。
そのため、フリーアドレスでも社内業務が停滞することなく、効率的かつ迅速な意思決定につなげることができるでしょう。
外部システムとの連携でさらに便利に
ワークフローシステムと外部システムを連携することで、フリーアドレスオフィスでの業務やマネジメントをさらに効率化することが可能です。
たとえば、電子帳票システムや電子契約システムと連携することで、企業間取引や契約業務をペーパーレス化・デジタル化することができます。
また、勤怠管理システムや人事システムと連携すれば、フリーアドレスで煩雑化しやすいマネジメント業務も効率化することができるでしょう。
ワークフローシステムで場所に縛られない働き方を推進した事例(コニカミノルタジャパン株式会社)
コニカミノルタジャパン株式会社は、「紙と場所に縛られない働き方」の実現に向けてワークフローシステムを導入しました。
2013年から「働き方変革プロジェクト」に取り組んできた同社では、2014年の本社移転をきっかけにフリーアドレスを導入。
しかし、当時の同社の業務プロセスは紙を主体としており、徐々にフリーアドレスは形骸化してしまいました。
そこで同社は、紙ベースの業務プロセスを根本的に見直し、「紙と場所に縛られない働き方」を実現するためにワークフローシステムを導入。
押印を伴う業務文書や利用頻度の高い文書を電子化したことで、年間12,000時間もの処理工数削減に成功したほか、「以前にくらべて場所に縛られない働き方が可能になった」と効果を実感されています。
まとめ
今回は、近年注目を集めているフリーアドレスオフィスについて、その内容やメリット・デメリット、導入のポイントを紹介しました。
フリーアドレスは、適切に導入することで企業・従業員の双方にとって大きなメリットをもたらす可能性があり、「ABW」や「ハイブリッドワーク」などの柔軟な働き方の実現にもつなげることができます。
今回ご紹介した情報も参考に、フリーアドレス制の導入、そしてワークフローシステムの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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