リスクマネジメントとは?企業が取り組む意味や効果的な手法、事例を紹介!
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社会情勢やビジネス環境の変化が著しい現代、企業における「リスクマネジメント」の重要性が高まってきています。
しかし一方で、
「リスクマネジメントとは?」
「リスクマネジメントのプロセス(手法)は?」
「リスクマネジメントに役立つシステム・ツールはある?」
といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、重要性が増しているリスクマネジメントに焦点を当て、その意味やプロセスについてわかりやすく解説します。
リスクマネジメントに役立つシステムや事例についても紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
OUTLINE 読みたい項目からご覧いただけます。
リスクマネジメントとは?
リスクマネジメントとは、企業経営の目的達成に影響を及ぼし得るリスクをあらかじめ調査・分析し、リスクの回避もしくは低減を図る手法・プロセスを指します。
企業経営におけるリスクの定義として、国際標準化機構(ISO)による標準規格「ISO 31000」で示された以下の定義が代表的です。
effect of uncertainty on objectives(目的に対する不確実性の影響)
企業を取り巻くリスクの例
では、リスクマネジメントの対象となる具体的な事象について確認していきましょう。
企業を取り巻くリスクの例として、以下を挙げることができます。
- 自然災害…地震、洪水・津波、台風、火災、など
- 感染症…新型コロナウイルス、新型インフルエンザ、SARS、など
- 犯罪・テロ…従業員による犯罪、戦争、テロ、など
- 情報リスク…情報流出・漏えい、サイバー攻撃、データ改ざん、など
- 法務・コンプライアンス…過重労働、知的財産権の侵害、など
- その他…取引先の倒産、為替変動、経済状況の変化、など
このように、企業経営におけるリスクは組織内部だけでなく外部にも存在します。
事業の持続的な成長を図り、企業経営の目的を達成するためには、リスクマネジメントに取り組み、組織内外のさまざまなリスクの回避・低減に努めることが大切だと言えます。
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リスクマネジメントの関連用語
リスクマネジメントには、意味を混同しやすい類似用語や関連用語がいくつか存在します。
ここでは、リスクマネジメントの類似用語、関連用語をご紹介します。
クライシスマネジメントとは?
クライシスマネジメントとは、企業が危機的状況に直面した際の対応を管理する手法・プロセスを指します。
リスクマネジメントとよく似た意味合いですが、クライシスマネジメントは危機的状況の発生を前提としている点が特徴です。
リスクマネジメントは危機的状況につながるリスクを低減したり回避するための予防的な管理手法ですが、クライシスマネジメントは危機的状況が発生した際に対処するための管理手法という点が最大の違いだと言えるでしょう。
リスクアセスメントとは?
リスクアセスメントとは、潜在的なリスクを特定・分析・評価を行うことを指します。
リスクマネジメントのプロセスの一環であり、リスクアセスメントを行うことで適切なリスク対応を実行することが可能になります。
BCP(事業継続計画)とは?
BCPは緊急事態の際に損害を最小限に抑えつつ、中核業務を継続・早期復旧するための計画のことで、リスクマネジメントの一環としてBCPを策定するケースが一般的です。
リスクマネジメントは企業経営の目的達成を阻むあらゆるリスクを対象としているのに対し、BCPは事業継続に関係するリスクを対象としている点が違いだと言えます。
ヒヤリハットとは?
ヒヤリハットとは、重大な災害や事故に直結する一歩手前の出来事を指します。
業務のなかで発生するヒヤリハットを収集することでリスク要因の特定・対策につなげることができるため、リスクマネジメントの観点で多くの企業が重要視しています。
「VUCA時代」のリスクマネジメント
グローバル化の進展やデジタル技術の発達、スマートフォンの普及により、「VUCA(ブーカ)」というキーワードが注目を集めています。
「VUCA」とは、社会やビジネスにとって未来の予測が困難な状況を意味する造語で、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字から取られています。
あらゆる物事・情報が目まぐるしく変化する「VUCA時代」とも言える現代、自社を取り巻く環境の変化を速やかに捉えるリスクマネジメント体制が求められています。
たとえば、ノートPCやタブレット、スマートフォンなどで業務を行えるようになったことで、サイバーセキュリティやコンプライアンスは今まで以上に重要になりました。
さらに、SNSの普及により情報拡散のスピードは以前とは比べものにならないほど早まっており、不祥事やトラブルが発生した際の初期対応の重要性も高まっていると言えるでしょう。
このことから、時代に合わせたリスクマネジメント体制はもちろん、意思決定のスピード感も今まで以上に必要性が増しているのです。
リスクマネジメントの構成要素(原則・枠組み・プロセス)
リスクマネジメントは、以下3つの要素で構成されています。
- リスクマネジメントの原則
- リスクマネジメントの枠組み
- リスクマネジメントのプロセス
リスクマネジメントの構成要素についてそれぞれ詳しく見ていきましょう。
リスクマネジメントの原則
「リスクマネジメントの原則」とは、リスクマネジメントに取り組むうえで組織が遵守すべき事項であり、リスクマネジメントの指針となる要素です。
「ISO 31000:2018」では、「価値の創出および保護(Value Creation and Protection)」という大原則の下、以下8つの原則を設けています。
- 統合(Integrated)
- 体系化および包括(Structured and comprehensive)
- 組織への適合(Customized)
- 包含的(Inclusive)
- 動的に繰り返し行う(Dynamic)
- 利用可能な最善の情報を使う(Best available information)
- 人的および文化的要因を考慮する(Human and cultural factors)
- 継続的な改善の促進(Continual improvement)
(参照:ISO 31000:2018(en), Risk management — Guidelines)
リスクマネジメントの枠組み(フレームワーク)
「リスクマネジメントの枠組み」とは、後述する「リスクマネジメントのプロセス」を有効かつ継続的に循環させるための仕組み・フレームワークを指します。
「ISO 31000:2018」では、経営者による「リーダーシップおよびコミットメント(Leadership and commitment)」を軸に、以下5つのプロセスでPDCAを回す体制が示されています。
- 統合(Integration)
- 設計(Design)
- 実施(Implementation)
- 評価(Evaluation)
- 改善(Improvement)
リスクマネジメントのプロセス
「リスクマネジメントのプロセス」は、実際にリスクの特定や分析、対処などを行うプロセス・手法を指し、先述した「リスクマネジメントの枠組み」よりも現場活動に近いと言えます。
「ISO 31000:2018」では、リスクマネジメントのプロセスとして以下の要素を示しています。
- コミュニケーションおよび協議(Communication and consultation)
組織内外のステークホルダーと連携し、コミュニケーションを取ってリスクに対する意識と理解を促進し、協議を行い適切な意思決定のための意見と情報を収集します。 - 適用範囲、状況、基準(Scope, context, criteria)
リスクアセスメントおよびリスク対応を効果的に進めるために、取り組みの適用範囲、組織内外の状況、リスク基準(許容するリスク・回避すべきリスクの基準)を明確化します。 - リスクアセスメント(Risk assessment)
リスク特定(Risk identification)、リスク分析(Risk analysis)、リスク評価(Risk evaluation)を行う工程です。 - リスク対応(Risk treatment)
リスクアセスメントの結果を踏まえ、リスクに対処するための選択肢を決定し、実践する工程です。 - モニタリングおよびレビュー(Monitoring and review)
継続的にリスクマネジメントの有効性を高めていくために、プロセス全体が有効に機能しているかどうかを客観的にモニタリング・レビューします。 - 記録および報告(Recording and reporting)
リスクマネジメントプロセスの実施結果を記録し、組織内外のステークホルダーに対して報告します。
(参照:ISO 31000:2018(en), Risk management — Guidelines)
リスクアセスメントの手順
次は、リスクマネジメントのなかでも重要なプロセスである「リスクアセスメント」の具体的な手順をご紹介します。
リスクの特定
まずは、リスクマネジメントの適用範囲において、どのようなリスクが潜んでいるのかを特定していきます。
業務の流れを整理・可視化し、「誰が」「何を」「どのように」行っているのかを明確化しましょう。
そのうえで、担当者・関係者に対してヒアリングを実施したり、ヒヤリハットを収集したりして、考えうるリスク要因をすべて洗い出します。
リスクの分析
洗い出したリスクに対して、「リスクの発生確率」および「リスクが顕在化した場合の影響度」という2軸で分析を行います。
その際、縦軸を「発生確率」、横軸を「影響度」として、マトリクス分析を行うのがおすすめです。
作成したマトリクスに洗い出したリスクを配置することで、リスクの重大性(発生確率×影響度)を定量的に把握しやすくなります。
発生確率や影響度を定量的に算出できないリスクは、「大・中・小」のように区分する方法もあります。
リスクの評価
リスク分析の結果を基にリスクの重大性を評価し、優先的に対応するリスクを決定します。
重大性が高いリスクから対処するのが基本ですが、金銭的なコストや人的リソースも鑑みながら優先順位を決定しましょう。
リスク対応の手法とポイント
リスクアセスメントによって対応の優先順位が決まったら、リスクへの対応方法を選定して実践していきます。
中小企業庁では、リスク対策の選択肢として2つの区分と6つの手法を示しています。
- リスクコントロール:損失の発生頻度と損失を軽減する方法
1.回避…リスクを伴う活動自体を中止してリスクを回避する手法
2.損失防止…予防措置を講じてリスク・損失の発生を未然に防止する手法
3.損失削減…事故発生を想定した対策を講じ、損失拡大を防止・軽減する手法
4.分離・分散…リスクの発生源を分離・分散する手法 - リスクファイナンシング:損失を金銭的に補填する方法
5.移転(共有)…保険や契約によって、損失発生時の補填を第三者から受ける手法
6.保有…リスクを認知したうえで、金銭的な損失を自己負担する手法
これらの手法は1つに絞る必要はなく、リスクの特徴や重大性に応じて複数の手法を組み合わせることができます。
基本的には、リスクコントロールによって発生頻度や損失を軽減し、リスクファイナンシングを実行することが有効だとされています。
(参照:リスクマネジメントの必要性|中小企業庁)
ワークフローシステムがリスクマネジメントに役立つ理由
ここまでは、リスクマネジメントの意味や必要性、リスクマネジメントの構成要素(原則・枠組み・プロセス)について解説してきました。
しかし、具体的に何から着手するべきかわからないという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、リスクマネジメントに役立つ具体的なソリューションとして、ワークフローシステムを紹介します。
ワークフローシステムとは、社内で行われる各種申請・稟議などの手続きを電子化するシステムのこと。
ワークフローシステムがリスクマネジメントに役立つ理由を詳しく確認していきましょう。
業務の流れを可視化
ワークフローシステムを導入する際は、既存の業務の流れを整理し、システム上に反映していきます。
その過程で、属人化して業務の停滞やミスが発生しやすい業務、不正などが起こり得る業務の発見につなげることができるでしょう。
さらに、業務の流れが可視化されることで、継続的にリスクの特定・評価を行う基盤が整い、リスクマネジメントを効率的に行うことが可能になります。
意思決定スピードの向上
ワークフローシステムの導入は、意思決定のスピード向上に効果的です。
先述の通り、現代社会は「VUCA時代」と形容されるように、あらゆる物事が目まぐるしく変化しています。
そうしたなか、変化するリスク要因を捉え、予期せぬ非常事態に迅速に対応するためにも、意思決定のスピード感が重要視されています。
ワークフローシステムを活用することで、ノートPCやタブレット、スマートフォンなどでいつでもどこでも申請・承認・決裁を行うことが可能になります。
そのため、紙を使った申請・稟議よりも効率的かつ迅速な意思決定を下すことができるでしょう。
内部統制の強化
ワークフローシステムの導入は、内部統制の強化にも効果を発揮します。
ワークフローシステムで申請・稟議を行う場合、あらかじめ設定してあるルールに基づき、適切な承認ルートが自動で判別されます。
そのため、然るべき承認・決裁を経ずに申請や稟議が処理されてしまうリスクを回避することができます。
また、証跡管理機能がついたワークフローシステムであれば、「いつ・誰が・何をしたか」という記録を確認することが可能です。
これらの特徴により内部統制が強化され、意思決定プロセスにおける不正やミスといったリスクを低減することができます。
テレワークへの対応
ワークフローシステムを活用することで、テレワークを促進することも可能です。
大規模な災害や感染症などのパンデミックが発生した場合、出社することが困難になる可能性があります。
しかし、テレワークを実施する体制が整っていない場合、通常通りに業務を遂行することができず、損失が大きくなってしまったり、場合によっては事業を存続できなくなる恐れもあります。
ワークフローシステムを導入することで、社内で行われていた業務手続きをPCなどのデバイス上で行うことができるため、テレワークでも対応することが可能です。
そのため、非常事態によって出社が困難な状況に直面したとしても、業務の停滞を防げる可能性が高まります。
ワークフローシステムを活用したリスクマネジメント事例
最後に、ワークフローシステムをリスクマネジメントに活用した企業事例をご紹介します。
株式会社大和総研様の事例
国内有数の総合シンクタンクである株式会社大和総研様は、社内の申請・決裁業務を展開するインフラとしてワークフローシステムを導入しました。
同社では、申請・決裁業務のペーパーレス化だけでなく、業務を自動化するための情報基盤としてワークフローシステムを活用しています。
たとえば、セキュリティールームへの入室申請と利用実績の自動チェックもそのひとつです。
セキュリティールーム利用のための事前申請をワークフローシステムで電子化し、この申請データと利用実績データをシステムで突き合わせることで、リスク管理面の強化と業務効率化を実現。
このように同社では、ワークフローシステムによる申請・決裁の電子化によって、さまざまな業務の効率化・迅速化・リスク軽減に取り組んでいます。
株式会社デジタルハーツホールディングス様の事例
ソフトウェアテスト専門企業である株式会社デジタルハーツホールディングス様は、事業規模拡大に伴う内部統制強化の一環としてワークフローシステムを導入しました。
同社では以前、紙の申請・決裁による意思決定スピードの遅延や、意思決定プロセスがブラックボックス化していることによる内部統制上のリスクが課題となっていました。
そこで同社は、意思決定の迅速化およびコンプライアンス確保のためにワークフローシステムの導入を決定しました。
紙とハンコによるアナログな決裁プロセスから脱却したことで、意思決定スピードが向上。さらに、承認プロセスが明確化し記録できるようになったことで、内部統制上のリスク解消にもつながっています。
まとめ
今回は、重要性が増しているリスクマネジメントについて、その意味やプロセス、ワークフローシステムがリスクマネジメントに役立つ理由・事例をご紹介しました。
社会情勢やビジネスを取り巻く環境が急速に変化する現代、企業が健全に経営を続け、持続的な成長を図るためには、リスクマネジメントが必要不可欠です。
リスクマネジメントに課題を感じている企業や取り組みの強化を検討している企業は、今回ご紹介した情報も参考にワークフローシステムの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
もっと知りたい!
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「ワークフロー総研」では、ワークフローをWork(仕事)+Flow(流れ)=「業務プロセス」と定義して、日常業務の課題や顧客の潜在ニーズの視点からワークフローの必要性、重要性を伝えていくために、取材やアンケート調査を元にオンライン上で情報を発信していきます。また、幅広い情報発信を目指すために、専門家や企業とのコラボレーションを進め、広く深くわかりやすい情報を提供してまいります。