業務改善とは?BPRとの違いや役立つフレームワーク、成功事例を紹介!
- 更新 -
生産性向上やコスト削減を目的に、業務改善に取り組みたいと考えている企業は多いことでしょう。
しかし一方で、
「そもそも業務改善とは?」
「業務改善の手順は?」
「業務改善に役立つツール・システムはある?」
といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、業務改善の基礎知識から取り組み手順についてご紹介します。
業務改善にワークフローシステムが役立つ理由や事例もご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
OUTLINE 読みたい項目からご覧いただけます。
業務改善とは?
業務改善とは、「現状の業務の流れ(ワークフロー)を維持しつつ、生産性向上やコスト削減を図ること」を指します。
業務改善に取り組むことは、市場での競争力を高めていくうえで非常に重要です。
また、長時間労働の是正や属人化の解消など、従業員にとって働きやすい環境整備という面でも業務改善は効果的な取り組みだと言えます。
業務改革(BPR)との違い
業務改善とよく似た言葉に「業務改革」があります。
業務改革とは、「業務全体を根本から見直して再構築すること」を指し、「Business Process Reengineering(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)」の頭文字を取って「BPR」とも呼ばれます。
業務改善は「既存の業務の流れを維持する」のに対し、業務改革は「業務全体を根本から再構築する」という点が最大の違いと言えるでしょう。
業務改善が必要な理由
業務改善の必要性が高まっている要因として、大きく以下の2点を挙げることができます。
- 人手不足への対応
- グローバル市場における競争力強化
それぞれ詳しく見ていきましょう。
人手不足への対応
業務改善が必要な理由の1つめが、人手不足の深刻化です。
少子高齢化が進む日本では、1995年をピークに生産年齢人口が減少しており、今後もこの傾向は長期にわたって続くと考えられています。
生産年齢人口の減少にともない、さまざまな業界で人手不足が深刻化しています。
そして、人手が限られるなかで事業を継続していくためにも、業務改善の重要性が高まっているのです。
とくに近年は働き方改革が普及したことにより、業務改善による長時間労働の是正や労働環境の整備に取り組む企業も増えつつあります。
グローバル市場における競争力強化
グローバル化が急速に進む昨今、国際的な市場競争は激しさを増しています。
しかし、日本企業の労働生産性は先進各国のなかでも低水準であり、時間あたりの労働生産性はOECD加盟38か国中23位、一人あたりの労働生産性は38か国中28位であるという調査も報告されています。
(参照:労働生産性の国際比較2021 | 調査研究・提言活動 | 公益財団法人日本生産性本部)
今後ますます競争が激化する国際市場で日本企業が競争力を高めていくためには、業務改善に取り組み生産性を維持・向上する工夫が求められるでしょう。
業務改善の効果
それでは、業務改善によってどのような効果が得られるのかみてみましょう
1.業務効率化
業務改善を行う過程で、業務を可視化するため、それぞれの業務における「ムダ・ムリ・ムラ」を排除することが可能になります。
また、このことにより、業務が標準化され、マニュアルなども整備されることから業務効率化につながります。
2.コスト削減
業務の効率化やマニュアルの整備により、不要な残業や人材育成にかかるコストを削減することができます。
また、ペーパーレス化などデジタル化を行うことで、コピー用紙や郵送代、紙の保管スペースの賃料、キャビネットやファイルなど備品代など、金銭的なコストを削減することもできます。
3.従業員のモチベーション維持
「ムダ・ムリ・ムラ」の多い仕事を排除することにより、従業員はコア業務に集中することができるようになります。
また、特定の部署や従業員に業務が偏ることを防止できるので従業員のモチベーション維持につながります。
業務改善の基本的な取り組み方
業務改善のQCD
業務改善の具体的な取り組み方について解説する前に、まずは大前提として意識すべきこととして「QCD」の概念について紹介します。
QCDとは、品質を表す「Quality」、コストを表す「Cost」、納期を表す「Delivery」の3つの頭文字から構成されています。
業務改善というと、Cのコストにばかり目がいきがちですが、業務改善により大きな効果を得ようとするのであれば、3つの要素全てを連動させ向上させていく必要があります。
業務改善の5ステップ
次に、業務改善の基本的な取り組み方として、以下の5ステップをご紹介します。
業務改善の基本的な5ステップ
- 業務の可視化
- 課題の把握・整理
- 計画の策定
- 計画の実行
- 評価と改善
各ステップについて詳しく確認していきましょう。
(1)業務の可視化
業務改善の最初のステップとして、まずは既存の業務を可視化していきます。
業務の一連の流れのなかでどのような工程が存在し、各工程で「誰が」「何の作業を」行っているのかを洗い出していきます。
ステップ(1)は、ステップ(2)~(5)のPDCAサイクルを回していくための基盤となるため、現場の声をヒアリングしつつ徹底的に可視化していきましょう。
(2)課題の把握・整理
ステップ(1)で可視化した業務フローをもとに、ボトルネックとなっている課題や問題点を洗い出していきます。
複数の課題・問題点が見つかるケースがありますが、業務フロー全体への影響度を鑑みて、優先的に対策するべき課題を明確化しましょう。
(3)計画の策定
ステップ(2)で把握した課題・問題点を解消するために、具体的な計画を策定します。
課題・問題点を解消するためにはどういった対策が考えうるのかを洗い出したうえで、必要なタスクの整理やスケジュール、推進体制を整えていきましょう。
また、ステップ(4)に移行する前に、計画について現場へと周知し、理解を得ておくことも重要です。
(4)計画の実行
ステップ(3)で策定した計画を実行するステップです。
当初の計画通りにプロジェクトは進行しているか、現場に混乱は発生していないかといった点に注意しつつ、着実に計画を進めていきましょう。
(5)評価と改善
業務改善は、計画を実行して終わりではありません。
計画を実行したことで課題を解消することができたのか、しっかりと評価したうえで、次なる改善に活かすことが重要です。
ステップ(2)~(5)のPDCAサイクル を回しながら、中長期的な視点で業務改善に取り組んでいきましょう。
業務改善に役立つフレームワーク
取り組みの手順が分かったところで、今度はより円滑に業務改善を進めるためのフレームワークをいくつか紹介したいと思います。
ECRC
ECRCは「Eliminate」(排除)、「Combine」(結合)、「Rearrange」(交換)、「SimplifySimplify」(簡素化)の頭文字から構成されたもので、イクルスと読みます。
効果を最大化させるためには、E→C→R→Sの順で業務改善を行うことが重要であるとされています。
・Eliminate(排除) 現状の業務で1部を省略したり、全部を廃止できるものはないか検討します。
・Combine(結合) 業務の廃止や省略が難しい場合に、複数人で行われていたり、別々に行っている業務を統合し、まとめることで工数削減できないか検討することを指します。
・Rearrange(交換) 例えば、特定の業務を外注したり、アナログ業務をデジタルに置き換えるなど、人員の配置換えや業務プロセスの見直しを行うことを指します。
・SimplifySimplify(簡素化) 業務の排除や統合が難しい場合に、できるだけシンプルなオペレーションに変えることを指します。たとえば、メール文のテンプレート化、データ入力項目を減らすなどがこれにあたります。
PDCAサイクル
PDCAサイクルは「Plan」(計画)「Do」(実行)「Check」(確認)、「Action」(改善)のプロセスを繰り返し行うことを指し、特に業務効率化によく利用されます。
ロジックツリー
ロジックツリーは課題の原因を深堀りするためのフレームワークです。1つの課題に対して、思いつく原因を書き出し、さらに書き出した原因についても、それぞれ同様の作業を行います。
業務改善に役立つ5つのアイデア
業務改善の基本的な手順はわかりましたが、具体的にどのような施策があるのでしょうか。
次は、業務改善に役立つアイデアとして以下の5つをご紹介します。
- 文書のペーパーレス化
- ノンコア業務の自動化・省力化
- コミュニケーションツールの活用
- データ・ナレッジの活用・共有
- 人材配置の最適化
文書のペーパーレス化
業務改善につながる有効なアイデアとして、文書のペーパーレス化を挙げることができます。
ペーパーレス化することで、主にバックオフィス業務の効率化に効果が期待できるほか、データ活用の促進やテレワークの導入にもつなげることができます。
たとえば、後述するワークフローシステムであれば、各種申請書や稟議書などの社内文書を電子化することが可能です。
また、電子帳票サービスや電子契約サービスを活用することで、社外向けの文書も電子化することができるでしょう。
ノンコア業務の自動化・省力化
定型作業が中心のノンコア業務に関しては、RPAツールで自動化したり、アウトソーシングサービスを利用したりといった方法で省力化を図ることが可能です。
ノンコア業務を自動化・省力化することで、より付加価値の高いコア業務にリソースを集中させることができるでしょう。
コミュニケーションツールの活用
コミュニケーションツールを導入して情報共有を効率化することも、業務改善を行ううえで有効なアイデアです。
たとえば、グループウェアやオンライン会議システムを活用することで、従業員同士のコミュニケーションが円滑化し、業務スピードの改善やイノベーションにつながるアイデアの創出にも効果が期待できるでしょう。
データ・ナレッジの活用・共有
業務改善を効率的に進めるには、社内に蓄積されたデータ・ナレッジの活用も有効です。
たとえば、チャットボットなどの社内FAQシステムを導入することで、問い合わせ対応の負担を軽減することが可能です。
また、データ・ナレッジをまとめて業務マニュアルとして共有することで、属人化を解消して業務のムラを防ぐことができます。
人員配置の最適化
業務改善においては、適材適所の人員配置を行うことも大切です。
タレントマネジメントシステムなどを活用して人員配置の最適化を図ることで、既存の人材リソースで生産性を高めることができるかもしれません。
また、テレワークの導入も有効です。多様な人材が活躍できる環境が整い、人材配置の幅をさらに広げることができるでしょう。
ワークフローシステムが業務改善に役立つ理由
ここまでは、業務改善の意味や取り組み方についてご紹介してきましたが、「具体的に何から取り組めばよいかわからない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような場合、ワークフローシステムの導入から始めてみるのもひとつの方法です。
ワークフローシステムとは、社内で行われている各種申請や稟議といった手続きを電子化するシステムのことで、近年多くの企業で導入が進んでいます。
次は、ワークフローシステムが業務改善に効果的である理由についてご紹介します。
業務の可視化を実現
先述した通り、業務改善の最初のステップは業務を可視化することです。
ワークフローシステムを導入する際は、既存の業務内容を洗い出して整理することになります。そのうえで、ワークフローシステム上に業務フローを再現して可視化していきます。
つまり、ワークフローシステムを導入することで、業務改善の最初のステップである業務の可視化を実現することができ、その後の業務改善を円滑に進めるための基盤を整えることが可能です。
また、業務改善だけでなく、属人化の解消という面でも業務の可視化は非常に有効です。
アナログ業務特有の非効率を解消
業務の可視化を実現できるだけでなく、アナログ業務特有の非効率を解消できる点も、ワークフローシステムの利点だと言えます。
従来の紙を使った業務では、印刷した文書を手渡しで回覧し、ハンコを使って承認・決裁という作業が発生します。承認者・決裁者が外出・出張しているために、業務が停滞してしまうケースも少なくないでしょう。
ワークフローシステムを導入することで、上記のような作業をシステム上で遂行することができ、オフィスにいなくてもノートPCやスマートフォン上で承認・決裁を行えます。
業務の進捗や承認状況を確認できたり、承認者に対して督促通知を行うこともできるため、業務の迅速化・効率化を実現可能です。
データ活用を促進可能
ワークフローシステムを導入することで、データ活用を促進することも可能です。
ワークフローシステムで各種申請や稟議を電子化することで、そのプロセスや決裁内容がデータとして社内に蓄積されていきます。
これらのデータを活用することで、より精緻な意思決定につなげたり、さらなる業務改善に役立てたりすることができるでしょう。
また、RPAツールやBIツールと組み合わせることで、定型業務の自動化やリアルタイムなデータ可視化の実現など、DXを促進していくことも可能です。
ワークフローシステムを活用した業務改善事例
次に、ワークフローシステムを活用して業務改善を促進した企業事例をご紹介します。
株式会社いえらぶGROUP様の事例
不動産関連の各種ITシステムを提供し、「“住”領域のワンストップマーケティング事業」を展開する株式会社いえらぶGROUP様では以前、直接取締役まで口頭やメールで説明を行い、了承を得ていました。
しかし、申請内容が混在している点や、拠点間での決裁に多くの時間を要してしまう点が課題となっていました。 そこで同社では、業務精査と書類電子化のためにワークフローシステム「X-point Cloud」を導入。
決裁権限の切り分けによって、経営層に一任されていた承認業務の分担と効率化に成功。他にも、作業依頼を機能や目的ごとに詳細に分類して、申請書の起案から承認までをデジタル上で一気通貫に行えるようになるなど、業務の効率化と迅速化を実現しています。
学校法人藤田学院様の事例
鳥取県内で教育機関を運営する学校法人藤田学院様は、紙文化からの脱却を目指し、ワークフローシステムを導入しています。
ワークフローシステムの導入以前、紙を使った申請手続きにより業務負担が増加していたものの、組織内に紙文化が根強く残っており、教職員にもペーパーレス化への抵抗感が見られていました。
そこで、経営層を中心としたトップダウン型でワークフローシステムを導入し、ペーパーレス化を推進。
導入から7年間で約500種の書類が電子化され、大幅な業務効率化を実現しただけでなく、教職員の業務改善意識の醸成にも効果を実感されています。
株式会社さくら経営様の事例
会計を軸とした経営支援サービスを提供する株式会社さくら経営様は、「自社が率先して業務改善を行う」という思いのもと、ワークフローシステムによる業務改善を行っています。
ワークフローシステムの導入により、同社の経理部門ではほぼ完全にペーパーレス化を実現。
全国の支社と円滑に稟議処理を行える基盤が整い、決裁期間が最大4日短縮されるなど、大きな効果を実感されています。
オカモト株式会社様の事例
ゴム・プラスチックの総合メーカーであるオカモト株式会社様では以前、紙の稟議書による決裁業務が行われていました。
しかし、稟議の申請から決裁までに数日から一週間以上かかっており、意思決定の遅れや業務の停滞だけでなく、紙の消費という観点でも課題となっていました。
そこで同社では、業務改善の第一弾としてワークフローシステムによる稟議書の電子化を実施。
ワークフローシステムの導入により、最短当日に決裁が完了するなど、業務の効率化と迅速化を実現しています。
まとめ
今回は業務改善に焦点を当て、その意味や取り組み方、ワークフローシステムの活用が効果的である理由をご紹介しました。
企業が生産性を高めていくためには、既存のワークフローを見直して業務改善を繰り返していくことが大切です。
そして、業務改善を効率的に行うために、ワークフローシステムの導入は非常に有効な手段だと言えます。
今回ご紹介した情報も参考に、業務改善の取り組みの一環としてワークフローシステムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
もっと知りたい!
続けてお読みください
「ワークフロー総研」では、ワークフローをWork(仕事)+Flow(流れ)=「業務プロセス」と定義して、日常業務の課題や顧客の潜在ニーズの視点からワークフローの必要性、重要性を伝えていくために、取材やアンケート調査を元にオンライン上で情報を発信していきます。また、幅広い情報発信を目指すために、専門家や企業とのコラボレーションを進め、広く深くわかりやすい情報を提供してまいります。