トーエイ物流株式会社のワークフローシステム導入事例
外部に頼らず、現場で育てる。トーエイ物流が実践する「内製DX」という経営判断
埼玉県久喜市に本社を置くトーエイ物流株式会社は、1963年創立、従業員 583名・車両213台を擁する中堅の総合物流会社だ。運送業・倉庫業・梱包事業・流通加工事業を手がけ、大阪豊中市と埼玉県上里町にも2025年11月にケミカルセンターを開所した。
同社は2010年からワークフローシステムを利用していたが、クライアントモジュールのインストール負荷が課題となり、2017年に「X-point(エクスポイント)」(パッケージ版)へ移行。2024年には「X-point Cloud(エクスポイントクラウド)」へ移行し、活用の幅をさらに広げている。
職種が多岐にわたる人事評価や、PCを使わない乗務員が多いという同社特有の事情に対応した経費精算を中心に、財務・給与システムとのRPA連携までを含めたワークフロー基盤を構築している。
業務システム課の皆様
課題・背景
- 職種(乗務職・作業職・一般職・リーダー職・部長職など)ごとに評価フォームと承認ルートが異なり、運用が複雑化
- 評価はExcelとEメールでやり取りされ、承認の埋もれや誤送信のリスクが常態化
- 最終段階では紙に印刷され、役員が年2回、数百枚の評価シートを目視でレビュー
- 承認状況を追跡する手段がなく、進捗確認のたびに電話でのやり取りが必要
- トラック乗務員・倉庫作業員はPC操作の時間がなく、自力での経費申請が困難
業務効果
- 職種別の複雑な評価フローと承認ルートを、既存運用を変えずにシステム上に再現
- クエリ機能で評価ランク別に即フィルタリング。役員の評価レビューが大幅に効率化
- 代理申請機能でPCを使わない乗務員分も経費申請が可能に。承認状況もシステムで即時把握
- 財務・給与システムとRPAで連携し、承認後の仕訳データを自動転記
【経緯・課題】企業特性とアナログ運用が生み出した3つの課題
同社のDX推進部は、業務システム課・システム開発課・システムインフラ課の3課で構成される。業務システム課は社内システムの保守・管理や現場からの問い合わせ対応を担い、X-point(現X-point Cloud)の運用を2名体制で主管している。
メンバーのうち1名はもともと乗務員をしており、もう1名はシステムとは畑違いの職種から入社したが、いずれもすぐにX-pointCloudの操作を習得し、一人で対応できるようになったという。現場を知るメンバーやIT未経験のメンバーが運用を支えていることも、同社らしい特徴のひとつだ。
しかし、こうした同社ならではの特徴が、ワークフローの運用において以下のような課題を生んでいた。
課題1:職種の多様さが生む、評価フローの複雑さ
人事評価の運用は、職種の多様さゆえに複雑だった。
トラック乗務員(乗務職)・倉庫作業員(作業職)・一般職・リーダー職・部長職など、職種によって評価基準・フォーマットがまったく異なり、承認ルートもそれぞれ異なっていた。
X-point導入前は、人事部が職種別に作成したExcelの評価シートを各部署にメールで送付・回収する運用で、承認状況を追跡する手段がなく、メールの回覧が滞留することによる進行の遅延や、送付先の誤りによる情報管理上のリスクも課題となっていた。
また、評価シート自体の作成も負担の大きい作業だった。対象者一人ひとりの氏名・役職をあらかじめ入力した個人専用のExcelファイルを、人事担当者が対象者数百名分、一枚一枚作り込んでいたという。全社員分の評価シート作成とメール添付・回収・集計を、限られた人数の人事担当者が抱え込んでいた。
課題2:役員による評価レビューの負荷
最終評価の段階では、各職種の評価結果が印刷され、役員が年2回、数百枚に及ぶ評価シートを紙でレビューする運用が続いていた。評価の全体像を把握するには相応の時間がかかり、人事部にとっても大きな工数負担となっていた。
課題3:PCを使わない乗務員という、物流会社特有の壁
トラック乗務員・倉庫作業員は業務中にオフィスでPCを操作する時間がほとんどなく、「経費が発生しても自分でシステムに申請できない」という根本的な制約があった。また自家用車のガソリン代精算に必要な燃料単価は市況に応じて毎月変動し、個人計算によるミスも生じていた。
▲X-point 導入前の人事評価運用。Eメールを基本としたワークフローで、最終段階では数百枚の紙が発生していた
【選定・導入】自社で育て、使いこなすためのシステム刷新
そこで同社では、上記の課題を解決すべく、かねてからクライアントモジュールのインストール負荷等が問題視されていた、旧システムの入替を決断。
システム選定時に同社が大切にしているのは、要件定義を自社で見極め、仕組みを使いこなす体制を整えることだという。ベンダーに任せきりにするのではなく、自社で運用しながら育てていく――そうした思いのもと、2017年にX-pointが導入された。
主な選定の主なポイントは以下の通り。
| ① ブラウザベース動作 | クライアントモジュールが不要。ブラウザだけで動作する点は、セキュリティ強化やクライアント運用の軽量化が求められる時流に合致し、大きなメリットとなった。 |
| ② 既存フローをそのまま移行 |
複雑な承認ルートや職種別フォームなど、既存の運用フローを変えずにシステム上に再現できる柔軟性。仕訳連動など、今までの運用を網羅する要件にも応えられた。 |
| ③ データ連携機能 | 財務・給与システムとのデータ連携が可能。WebAPIによるデータ抽出、ユーザー固有マスタで独自テーブルを保持できる拡張性も評価された。 |
「X-point」から「Xpoint Cloud」へ
2017年の導入後、8年にわたって人事評価・経費精算を中心に活用を深めてきたが、サポート終了を契機に2024年に「X-point」から「X-point Cloud」へ移行。
この移行時には、電子帳簿保存法対応などを目的に導入を決めていた別のグループウェア(ワークフロー機能を含む)への一元化も検討したが、最終的にXpoint Cloudを選んだ理由は、パッケージ版で開発してきた仕組みを工数を抑えて移行できたこと、そしてXpoint Cloudの方がきめ細かな制御ができた点だ。クラウド移行後も、積み上げてきた運用フローはそのまま継承されている。
こうした判断の背景には、同社が徹底している「原価計算」の文化がある。社内向けのシステム導入であっても、着手前に必ず原価を算出し、依頼元の部署にコストを把握してもらった上で実施の可否を判断するという。声の大きさだけで意思決定をしないための、同社なりの規律といえる。
【活用と工夫】現場を混乱させない、既存フローを踏襲したシステム構築
システムの活用にあたって同社が徹底しているのは、「現場に負担をかけず、既存の運用を変えずにデジタル化する」という方針でした。物流会社特有の多様な働き方や複雑な業務プロセスを、システムの柔軟性を活かしてそのまま再現した具体的な工夫を紹介します。
活用詳細① ── 人事評価のデジタル化
職種別の複雑なフローをシステム上で完全再現
人事評価のデジタル化で最も重視したのは「既存の承認フローを一切変えないこと」だった。「フォームやルートを今までの運用から変えずに、そのままシステムに乗せることが最初のポイントでした。物流会社は職種ごとの評価の仕組みが複雑なので、システムに合わせるためにフローを変えてしまうと現場が混乱します」(清水氏)。乗務職(3段階)・管理本部・営業部・事業所など、職種・職位に応じて8種類の異なるフォームが用意され、評価対象者に応じて適切なフォームが適用される。
▲ X-point Cloud導入後の人事評価運用。すべての伝達手段をX-pointに統一し、クエリー機能を活用
クエリ機能:役員の評価レビューを劇的に効率化
役員の評価レビュープロセスに最も劇的な改善をもたらしたのが「クエリ機能」だ。導入前は数百枚の紙を並べていた役員が、今ではシステム上の評価一覧を評価ランクでフィルタリングし、特に注目すべき社員の評価シートへ即座にアクセスできるようになった。導入から2〜3年ほどで運用が定着し、今では社長も評価レビューの操作を日常的に行っている。
▲ 管理者向けクエリー画面。評価ランクや部署などの条件で絞り込み、該当社員の評価シートへワンクリックでアクセスできる
波及効果:業務フロー全体の見直しと部門間連携
評価運用の見直しにあたっては、DX推進部が承認ルートやマスタの設定を管理し、人事部門と連携しながら運用を進める体制を整えた。この取り組みを通じて、システムの見直しに合わせて業務フロー自体も整理され、利用者向けマニュアルの整備も進んだ。人事部門とDX推進部の連携が深まったことも、想定していなかった副次的な効果だという。
評価結果がデータベース化されたことで、過去の個人評価を横断的に参照できるようになった点も大きな効果だ。以前は人事部門が独自に評価の管理表を作成していたが、今ではXpoint Cloudのデータ管理機能の中で自動的に整理されるようになっている。
活用詳細② ── 経費精算のデジタル化とシステム連携
乗務員向け「代理申請」――あえて残したアナログ工程
同社の経費精算では、経費精算書・接待交際費精算書・自家用車交通費精算書など主に5種類の申請書をXpoint Cloudで運用し、すべての精算手続きが財務システムの仕訳データとして連動する。中でも特徴的なのが、PCを使わない乗務員・倉庫作業員向けの「代理申請」機能だ。乗務員が領収書をスキャンして事務員に送り、事務員がXpoint Cloudへ精算内容を入力、承認フローで最終承認を得たうえで印刷。乗務員本人が原本を確認し押印してから、経理部門へ提出する。
印刷後の確認・押印は、ワークフロー上の承認ステップではなく、乗務員本人が内容の正しさを確認するための工程だという。全てを電子化するのではなく、現場の実態に合わせて紙のプロセスを意図的に残す――この設計思想が、代理申請フローの核心にある。乗務員が200名を超える中、ライセンスの運用方法を工夫し、効率的な体制を実現している点も特徴のひとつだ。
▲ 代理申請フロー。乗務員が事務員に依頼し、Xpoint Cloudでの承認後に印刷・確認・押印という工程をあえて残している
ユーザー固有マスタとシステム連携
自家用車のガソリン代精算では「ユーザー固有マスタ」機能を活用。毎月変動する燃料単価を経理部門がマスタに登録すると、申請者は走行距離を入力するだけで精算額が自動計算される。ユーザー固有マスタには、財務・給与システムと連動する各種マスタと、燃料単価のように手動で管理するマスタの両方が集約されており、外部システムのマスタは自動連携、手動管理が必要なものはXpoint Cloudt内で完結させる設計だ。
経費精算の承認完了後は、RPA経由で仕訳データが財務・給与システム「MJSLINK DX 財務大将」へ自動連携される。全て夜間バッチ処理で自動実行されるため、手作業での転記は発生しない。
▲ システム連携の全体構成。X-point Cloudと財務・給与システム「MJSLINK DX 財務大将」(ミロク情報サービス社製)をRPA(CLモジュール+Microsoft Access、X-point Cloud API)で連携し、データの受け渡しや仕訳処理等を全て自動実行。
その他の活用業務 ── 標準機能を組み合わせた独自の工夫
人事評価・経費精算のほかにも、同社では稟議書、業務システムマスタ登録・変更申請書、IT機器関係購入・移動申請書、車両移動報告書・事故報告書など幅広い業務をXpoint Cloudで運用している。中でも、標準機能を組み合わせた2つの工夫を紹介する。
IT機器購入申請 ── 差し戻しを組み合わせた承認ルート設計
IT機器の購入申請では、見積り確定後の金額に応じて決裁者を分岐させたい(例:一定額以上は社長承認、それ未満は簡易承認)というニーズがあった。そこで同社は、現場からの申請をいったん調達担当(IT機器を管理するDX推進部側)に回し、見積り取得や金額確定を行った上で申請元に一度差し戻し、確定した金額に応じたルートで改めて回すという運用を組み立てた。標準機能を組み合わせた工夫のひとつだ。なお、同型機種の在庫を優先して払い出す運用にしているため、タイミングによっては新規購入費用がかからずに完了するケースもある。
事故報告書 ── 「差し戻し」を多段階ワークフローの接続点として活用
車両事故が発生した際は、まず「事故報告書」を安全管理部門へ提出する。安全管理部門が内容を確認すると、次の段階である「是正処置報告書」を作成してもらうために、あえて申請者へ一度差し戻す。是正の会議結果などを添付して再提出されると、安全管理部門が確認し、必要に応じてさらに「教育訓練簿」の添付を求めて再度差し戻す、という流れだ。教育訓練簿の提出が不要なケースもあるため、固定の多段階フローにしてしまうと使われないステップが残ってしまう。そこで、本来は申請内容の不備を戻すための「差し戻し」機能を、段階を進めるための接続点として意図的に活用することで、可変長のフローを1つの帳票・1つのフローに集約した。これにより、1つの事故に対してどこまで報告書が上がってきているかが、単一の帳票から一目で把握できるようになっている。
【導入効果】工数半減と業務スピードの劇的な向上
Xpoint およびXpoint Cloudの活用により、同社では現在、以下のような効果が生まれている。
定量的な効果
・人事部の評価業務工数を「全体の半分以下」レベルで削減
・評価データの提出期限が「1週間前必須」から「前日でも対応可能」へ短縮
・評価シートの印刷・配布作業がゼロに(年2回×数百枚)
・承認状況確認のための電話連絡が不要に(システムで即時把握)
・経費精算の仕訳データはRPAで自動転記され、手作業への依存がなくなった
定性的な効果
・職種別の複雑な評価フローと承認ルートを、既存運用を変えずにシステム上へ再現
・PCを使わない乗務員も、代理申請機能で経費申請が可能に
・評価結果がデータベース化され、過去の個人評価を横断的に参照できるように
・拠点が分散していても、承認の迅速化により意思決定のスピードが向上
・乗務員や異なる職種から加わったメンバーもノーコードで運用に対応できている
【今後の展望】社内管理から「顧客向け業務」へ。
同社はXpoint Cloudの活用を「社内管理業務」から「顧客向け業務」へと拡張する計画を持っている。
社内のあらゆる申請業務をシステムに集約した上で、顧客との業務接点にも活用の幅を広げることが同社の基本方針だ。
①顧客向け業務の迅速化・内部統制の強化
顧客対応のスピードアップとガバナンス強化を目的に、以下のデジタル化を構想している。
見積もり管理の一元化:輸送や保管サービスの見積書をXpoint Cloud上に集約し、顧客への提案プロセスを迅速化。
受託案件の原価管理:顧客から受託するシステム開発の原価計算書を保管し、費用根拠や承認履歴を可視化することで内部統制を強化。
②社内業務の完全ペーパーレス化とAI活用
従業員数の増加に伴うバックオフィスの負担軽減と、さらなる業務効率化を目指し、社内体制のアップデートも進めていく。
紙・メール申請の順次撤廃:緊急連絡先・扶養異動申請書・通勤方法申請書などの書類を順次Xpoint Cloudへ移行。人事部からの「推薦書の電子化」など、現場からの要望にも継続的に対応する。
経費精算の体制強化:処理件数の増加を見据え、バックオフィスの処理能力とガバナンスを両立させる運用を構築。
AI活用の検討:稟議書に添付される契約書の内容チェックにAIを活用するなど、最新技術を用いた新たな業務改善にも取り組む。
X-point Cloudの検討企業へ
同社業務システム課 課長代理高田氏は、X-point Cloudについて次のように評価している。
「ベンダーへの丸投げではなく、私たちのように自社で内製し、運用していきたい企業に適していると感じます」
そのうえで、検討時に大切にしたいポイントを3つ挙げた。
目先の効果だけを求めない
システム化・業務改善は全体で見れば工数が減っていても、一部の担当者にとっては局所的に負担が増えたと感じられることがある。後工程まで含めて全体で削減できているかを見極める必要がある。
運用しやすい範囲で機能を選んで使う
情報システム部門の人数は限られているため、必要な機能を見極めて活用することを意識している。人間の判断で対応できるところにはやみくもに制限を入れず、シンプルな申請書にすることで、運用の負荷を抑えながら継続しやすくしている。
デジタルとアナログ運用を適切に組み合わせる
全てを電子化する必要はなく、業務の実態を見極めて、どこを電子化し、どこをアナログのまま残すかを判断することが合理化の鍵になる。
最新のシステムを導入して満足するのではなく、現場の状況や運用負荷とのバランスを常に考慮する。この「地に足の着いたIT活用」の姿勢こそが、同社が新システムを社内に深く定着させ、全社的なDXを力強く推進できている最大の理由と言えるだろう。
お客様プロフィール
| 会社名 | トーエイ物流株式会社 |
|---|---|
| 本社所在地 | 〒346-0104 埼玉県久喜市菖蒲町三箇379 |
| 創立 | 1963年 |
| 従業員数 | 583名(2025年4月1日現在) |
| 事業内容 | 運送業・倉庫業・梱包事業・流通加工事業・自動車運送取扱事業・車両運行管理請負業・物流関連作業請負業 |
| URL | https://www.toei-logistics.co.jp/ |


