事業承継とは?意味や種類、準備のポイントをわかりやすく解説!
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昨今の少子高齢化により、中小企業の経営者の高齢化、そして後継者不在の状況は深刻化しています。
そうしたなか、廃業による雇用や技術の喪失を防ぎ、企業を存続・成長させる手段として、事業承継の重要性が増しています。
しかし、
「事業承継って何?なぜ重要なの?」
「事業承継にはどんな種類があるの?」
「事業承継をするための流れが知りたい!」
といった疑問をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか?
この記事では、事業承継の基礎知識や準備の手順、そして事業承継に役立つシステムをご紹介しています。
事業承継について知りたい方や、将来を見据えて事業承継を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
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事業承継の基礎知識

まずは、事業承継の基礎知識を確認していきましょう。
事業承継とは?
事業承継とは、会社の経営を現在の経営者から後継者へと引き継ぐことを意味します。
冒頭でも触れた通り、昨今の少子高齢化により、中小企業の経営者の高齢化および後継者不在という状況が深刻化しています。
日本企業のうち99%の割合を占める中小企業は、日本の経済・社会を支える重要な存在。
そして、中小企業が経営者の高齢化や後継者不在によって廃業してしまうことは、日本にとって大きな損失だと言えます。
こうした背景から事業承継の重要性が非常に高まっており、中小企業庁による事業承継の啓発、および支援制度の拡充といった取り組みが進められています。
新事業承継税制
事業承継税制とは、事業を引き継いだ後継者が事業を継続することを条件に、本来納税が必要な相続税や贈与税について、一定の条件のもと猶予され、将来的には免除される制度です。
平成30年の税制改正により、これまでの措置に加え10年間の期限付きで特例が創設されたため新事業承継税制と呼ばれています。
改正を機に、より多くの中小企業が円滑に事業承継を行えるようにすることで、前述にあるような後継者不足を解消することが狙いとなっています。

なお、特例を受けるためには令和6年3月までにアクションを起こす必要があります。
事業承継で引き継ぐ3つの要素とは?
事業承継では、単に「経営者の交代」や「株式の承継」を行うだけではなく、以下の3つの要素を後継者に引き継ぐ必要があります。
事業承継の3つの要素
- 人の承継
- 資産の承継
- 知的資産の承継
事業承継で引き継ぐ3つの要素について見ていきましょう。
人の承継
「人の承継」とは、「経営権の承継」を意味します。
中小企業においては、経営者個人にノウハウや取引との人脈・関係性などが集中しているケースが珍しくありません。
そのため、ただ経営権を後継者に引き継ぐのではなく、後継者教育を適切に行い、経営者としての資質を高めることも重要になります。
資産の承継
「資産の承継」とは、事業を行うために必要な資産を後継者に引き継ぐことを指します。
ここでいう資産には、以下のようなものが含まれます。
事業承継で引き継ぐ主な資産
- 株式
- 事業用資産(不動産や設備、備品など)
- 資金(運転資金や借入など)
知的資産の承継
事業承継では、株式や不動産といった有形の資産だけでなく、知的資産も継承する必要があります。
主な知的資産として、以下が該当します。
事業承継で引き継ぐ主な知的財産
- 経営理念
- 従業員のスキル
- ノウハウ
- 経営者の信用
- 取引先との人脈・関係性
- 顧客情報
- 特許などの知的財産権
- 許認可 など
「事業承継」と「事業継承」の違いは?
事業承継に非常によく似た言葉に「事業継承」があります。
「承継」と「継承」は同じ漢字で構成されているため混同しやすく、その意味も非常に似通っています。
「承継」と「継承」の意味
- 承継:(地位や事業、精神などを)受け継ぐこと
- 継承:(身分や権利、義務、財産などを)受け継ぐこと
「承継」と「継承」の意味をくらべてみると、「承継」には「精神(理念や想いなど)を受け継ぐ」という意味合いが含まれる点が大きな違いと言えそうです。
会社の経営を後継者に引き継ぐ際は、基本的に経営理念やビジョンも含めて引き継がれるため、「事業承継」の方が適切だとされています。
また、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(中小企業経営承継円滑化法)」「事業承継税制」など、法律や制度における表記からも、「事業承継」の方がより一般的な表現だと言えるでしょう。
事業承継の種類

事業承継は、「誰に承継するのか」によって以下3つの種類に大別することができます。
事業承継の種類
- 親族内承継(子息など親族へ承継)
- 従業員承継(親族以外の従業員へ承継)
- M&A(第三者企業への承継)
各種類について、詳しく見ていきましょう。
親族内承継(子息など親族へ承継)
「親族内承継(同族承継)」とは、現経営者の子息など、親族への事業承継を指します。
従来、事業承継と言うと「親族内承継」が一般的でしたが、近年では徐々に減少しており、後述する「従業員承継(内部昇格)」と同水準の割合となっています。
親族内承継の主なメリット・デメリットは以下の通りです。
親族内承継のメリット
- 社内外の関係者(従業員や取引先など)から心情的に受け入れてもらいやすい
- 後継者を早期に決定することで、後継者教育のための準備期間を確保しやすい
- 相続や贈与によって財産や株式を容易に後継者へと移転できる
親族内承継のデメリット
- 承継する親族に経営者としての資質があるとは限らない
- 後継者以外の相続人への配慮が必要
従業員承継(親族以外の従業員へ承継)
「従業員承継(内部昇格)」とは、自社役員や社員など、親族以外の従業員への事業承継を指します。
先述の通り、近年「従業員承継」の割合が増加しており、従来主流であった「親族内承継」と同水準の割合となっています。
従業員承継の主なメリット・デメリットは以下の通りです。
従業員承継のメリット
- 社員のなかから経営者としての資質がある人材を見極めて承継することができる
- 長期間働いてきた従業員であれば、経営方針等の一貫性を保ちやすい
従業員承継のデメリット
- 親族内承継以上に、株式取得などの資金力が後継者候補に求められる
- 従業員のなかに経営者としての資質がある人材がいるとは限らない
M&A(第三者企業への承継)
「M&A」は第三者企業や創業希望者へと事業を引き継ぐ手段のひとつで、親族や社内に後継者として適任な人材がいない場合でも事業承継を行える点が特徴です。
M&Aマッチングサービスの登場や、事業承継を支援する制度の充実などにより、M&Aによる事業承継は年々増加しています。
M&Aの主なメリット・デメリットは以下の通りです。
M&Aのメリット
- 親族および社内に後継者候補がいない場合でも、広く後継者を探すことができる
- 現経営者は、会社売却による利益を得ることができる
M&Aのデメリット
- 希望の条件を満たす買い手が見つからない可能性がある
- 従業員の待遇・モチベーションが悪化する恐れがある
事業承継の基本的なプロセス

次は、事業承継のプロセスを大きく5つのステップに分けてご紹介します。
事業承継に向けた5ステップ
(1)事業承継準備の必要性を認識
(2)経営状況・経営課題などの把握
(3)事業承継に向けた経営改善
(4)事業承継計画の策定/M&Aマッチングの実施
(5)事業承継の実行
(1)事業承継準備の必要性を認識
まず、経営者自身が事業承継の準備を行うことの必要性を認識することが大切です。
多くの場合、事業承継の準備に要する期間は3年から10年、もしくはそれ以上と言われています。
つまり、「事業承継を行う」と決断したとしても、すぐに実行できるものではありません。
そのため、経営者は事業承継準備の必要性について早い段階で理解し、会社の将来を見据えて着実に準備を進めていく必要があるのです。
(2)経営状況・経営課題などの把握
事業を後継者に承継するためには、経営状況や経営課題を可視化し、現状を正しく把握する必要があります。
自社の強み・弱みや、組織体制について客観的に見直し、解消すべき経営課題を明確にしていきます。
これは、経営者が自社の状況について理解を深めるだけでなく、(3)の事業承継に向けた経営改善を行ううえでも欠かせないプロセスです。
(3)事業承継に向けた経営改善
次に、(2)で明確化した経営課題を踏まえ、事業承継に向けた経営改善に取り組みます。
現経営者は、後継者へとバトンを渡すまで、事業の維持・発展に努める必要があります。
とくに近年、親族内承継が減少している背景には、事業の将来性や経営の安定性について後継者候補が懐疑的になっていることも一要因だと考えられています。
親族内承継に限らず、従業員承継やM&Aによる事業承継を予定している場合も、経営改善の取り組みは非常に重要だと言えるでしょう。
(4)事業承継計画の策定/M&Aマッチングの実施
(4)は、事業承継に向けたより具体的なステップとなります。
親族あるいは自社従業員への事業承継の場合には「事業承継計画の策定」を、M&Aによる第三者への事業承継の場合には「M&Aマッチング」に着手していきます。
(4-1)親族内承継・従業員承継の場合
↑出典:中小企業庁「事業承継ガイドライン」
事業承継計画とは、会社の10年後を見据えて「いつ」「どのように」「なにを」「誰に継承するのか」という具体的な計画を指します。
現経営者は後継者と共同で事業承継計画を策定し、上図のような「事業承継計画書」にまとめます。
(4-2)M&Aの場合
M&Aでの事業承継を行う場合には、後継者候補(買い手)とのマッチングに移行します。
マッチングを行う際は、M&Aに関する専門的なノウハウを有する仲介機関への相談が一般的です。
信頼できる仲介機関を選定し、希望する売却条件を伝えた上で、条件に合う後継者(買い手)を探していきます。
(5)事業承継の実行
(1)~(4)のステップを踏まえ、経営課題の解消および経営改善に取り組みつつ、事業承継計画やM&A手続きなどに従って資産の移転や経営権の移譲を実行していきます。
この間も、状況の変化などに応じて事業承継計画を修正・ブラッシュアップする必要があります。
また、事業承継の実行段階では、税負担や法的な手続きが多数必要になるため、弁護士や税理士など専門家に協力を仰ぎながら実行することをおすすめします。
事業承継の準備にワークフローシステムが役立つ理由

ここまでは、事業承継の流れについてご紹介しましたが、具体的に何から着手すべきか分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような場合、ワークフローシステムの導入から事業承継の準備に着手するのも一策です。
ワークフローシステムとは、社内で行われる稟議や申請などの各種手続きを電子化するツールのこと。
次は、ワークフローシステムを導入するメリットをご紹介します。
株式会社エイトレッドと株式会社マイナビM&A、 2025年問題打開へ向け中小企業の経営支援で業務提携
可視化による課題の明確化
ワークフローシステムを導入する際は、社内で行われている業務を整理し、システム上に反映していきます。
あらためて業務を見直すことで、これまで気付くことができなかった業務課題の発見につなげることができるでしょう。
また、ワークフローシステムによって業務の流れ(ワークフロー)が可視化されるため、ボトルネックとなっている作業や無駄な作業を特定しやすくなり、継続的に業務改善を行える土壌が整います。
生産性・企業価値の向上
業務手続きが電子化されることで、紙ベースで行われていた業務の無駄を大幅に削減することができます。
たとえば、紙文書の回覧待ちや押印のためだけのハンコ出社などは、紙を使った業務特有の無駄だと言えるでしょう。
ワークフローシステムによってこれらの無駄を削減することで、本来の業務に注力することができ、生産性の向上、ひいては企業価値の向上につなげることが可能です。
内部統制が強化され、経営の透明性が向上
ワークフローシステムを用いた業務手続きでは、申請の種類や内容に応じて、事前に設定した承認ルートへと自動的に回付されます。また、「いつ」「誰が」「何を」承認・決裁したのかという記録がシステムに保存されます。
そのため、不正な手順による決裁や、文書の改ざん・紛失といったリスクを防止することが可能です。
こうした特徴から、内部統制の強化および経営の透明性向上といった効果も期待できるでしょう。
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事業承継を機にDXに着手!ワークフローシステム導入事例
ガソリンスタンド事業を起点に自動車関連サービスを提供する京南オートサービス株式会社(以下、京南オートサービス)は、父から子へと親族内承継を行った企業のひとつ。
2代目経営者である田澤孝雄氏(以下、田澤氏)は、新卒で入社した大手電機メーカーでの勤務を経て、実父が経営する京南グループへと入社しました。
当時の京南オートサービスの職場では、外部とのコミュニケーションは電話とFAXで、Eメールはおろか、PCもほとんど使われていない状況。
前職との大きなギャップに驚かされた田澤氏は、事業承継に向けた準備と並行し、DXに着手することを決意します。
その後、着実に社内のインフラを充実させていき、DXの第一歩としてワークフローシステムを導入。
社内コミュニケーションや文書管理、そして意思決定が電子化されたことで、業務の効率化およびDXの推進に大きな手ごたえを実感しています。
まとめ
今回は、事業承継の基礎知識や準備の流れ、そしてワークフローシステムが事業承継の準備に効果的である理由をご紹介しました。
中小企業における経営者の高齢化および後継者不在が深刻化しているなか、事業承継は日本の経済・社会にとって非常に重要な取り組みです。
後継者不在にお悩みの企業や、将来の事業承継を見据える企業は、今回ご紹介した情報も参考に事業承継の準備に着手してみてはいかがでしょうか。
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