これからの働き方を考える

相互牽制機能を持つ経営体制が、バランスを取った成長を実現する

相互牽制機能を持つ経営体制が、バランスを取った成長を実現する

前回は、私が「一般社団法人日本パートナーCFO協会」の代表理事を務める立場から、企業の成長戦略と稟議を解説するうえで経営においてはCEO・COO・CFOによる三権分立が重要だとお伝えしました。今回はこの三権分立をより深掘りしつつ、稟議との関連性を述べていきたいと思います。

<プロフィール>

高森厚太郎

ワークフロー総研 フェロー
高森厚太郎

一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事
東京大学法学部卒業。筑波大学大学院、デジタルハリウッド大学院修了。日本長期信用銀行(法人融資)、グロービス(eラーニング)、GAGA/USEN(邦画製作、動画配信、音楽出版)、Ed-Techベンチャー取締役(コンテンツ、管理)を歴任。現在は数字とロジックで経営と現場をナビゲートするプレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFOとして中小・ベンチャー企業などへの経営コンサルティングのかたわら、デジタルハリウッド大学院客員教授、グロービス・マネジメント・スクール講師、パートナーCFO養成塾頭等も務める。2020年9月にはワークフロー総研のフェローに就任。著書に「中小・ベンチャー企業CFOの教科書」(中央経済社)がある。

経営の役割分担と相互牽制が重要

経営者には経営理念や戦略の策定、戦略実行の監督、リソースの調達と配分、そしてエグゼクティブへの渉外活動、大きく分けて4つの仕事があります。しかし、毛色の異なる4つの仕事を自分ですべてこなしていくことは容易ではありません。そこで、例えばCEO・COO・CFOによる3人体制で、一人ではこなせない経営の仕事を役割分担することが大切になります。そして役割分担以上に重要と考えるのは、三者が存在することによる「相互牽制」機能です。

経営には常に矛盾がつきものです。例えば、CEO最高経営責任者が描く理想とするビジョンとそれを達成するための経営戦略に対して、資金調達が追いついていないというギャップは至る所で見受けられます。また、CEOはパッション先行で、現実の組織が乖離しているケースもあります。さらにCEOのキャラクターの強烈さで、組織が疲弊してしまう可能性もあります。

ただ、その熱量は会社の成長には欠かせません。CEOが数字に冷静になりすぎると全体が守りに入り、チャレンジすべきところで妥協してしまうと成長ができません。熱量と冷静さという矛盾する要素を一人が持つのは非常に困難であり、ともするといずれかの強みを殺すことになりかねません。

CEOの相棒であるCFO最高財務責任者は数字で事業を把握し、ファイナンスの戦略を練り、実行していく存在です。事業の数字や進捗にツッコミを入れる立場です。CEOが熱量、CFOが冷静さを分担して持てば、一見バランスは取れます。しかし、実際に組織を動かし、事業を成長させていくかという点について、熱量や冷静さとは違った側面の専門性、例えば包容力が必要だったりします。そこで、事業や組織を円滑に回し、成長させていく役割として、COO最高執行責任者が重要となるのです。

ちなみに、三者のうちCFOがいない会社はCEOのビジョンを語る力とCOOの組織を動かす力を持つため、攻めには強くなります。しかし、CFOの冷静で客観的な事業管理力を欠くので、守りが弱いと言えます。勢いに乗っていた会社が、思わぬ難障に乗り上げて、CFOを欠いていたためあっさり折れてしまった例はいくつもあげられます。

この3人の責任や業務の棲み分けが合理的であり、かつ各人の権力や能力が拮抗していて、相互チェック機能も健全に働いている状態が三権が分立している状態です。あるべき経営体制と言えるでしょう。

CEO・COO・CFOによる三権分立

経営バランスがよくなると会社が安定し従業員に安心が生まれる

この三権分立は、企業の従業員が30人を超え、100人規模を目指していく「組織化」のステージには体制を構築しておくべきです。ただ、この段階に来るとすでにCEOにはそれなりの業務量があるため、理想を言えばより早い段階のほうが望ましいと言えます。しかし、マネジメント職への一定程度の報酬などを鑑みると、「組織化」のステージで体制構築を行うというのが現実的だと言えるでしょう。

組織化ステージ、従業員が30人を超えてくると、創業者一人では全員を見きることができない状況になってきます。組織運営のみならず、事業戦略面でも難しさが高くなってくる組織化ステージ、業務量が増えるとともに質も求められ、マネジメントの難しさが出てくる段階でもあります。このタイミングで三権分立体制を整え、相互牽制により経営チームがバランス良く強みを発揮させられることができると、従業員にも安心が生まれ、業務の遂行も安定します。

仮に経営がバランスを取れておらず、CEOのみで会社を引っ張ろうとすると、ともすると強引になりがちで、独善性が強くなってしまうものです。すると、部下はCEOの顔を見て仕事をするようになります。もしCEOに気に入られなかったとしたら、守る者もいないことから、居場所を無くしてしまいがちです。しかし、もし経営体制のバランスが取れていれば、その部下はCEOではなく、COOやCFOのもとに駆け込むことができます。もしその従業員がCFOと関係性がよければ、CEOも「CFOが見ているからまぁいいか」と考え、その部下に対して強く干渉することは無いものです。バランスというのは、組織にとっても重要なのです。

経営は矛盾をはらんでいると前述しましたが、矛盾の中で会社が急速に伸びると、細かい綻び、ダウンサイドのリスクを伴うものが多くなります。そうして、どこかで綻びが手に負えない大きさとなり成長が止まり、ともすると衰退に向かって一直線になってしまうものです。また、企業が成長するとステークホルダー含め、様々な人が会社を注視するようになります。しかもその目線は厳しいです。ダメなところはどこか?とあら探しをされるなど、全て好意的に見てくれるわけではありません。

上場をする、あるいは上場を目指す企業はコンプライアンスを重視するとともに、リスク管理も重要です。しかし、経営者一人ではどこにリスクが潜んでいるか、全てに気づくことはできません。冷静で客観的なCFOがリスク管理を担い、思わぬ落とし穴にハマらないようになる。これも経営における三権分立が有益な理由です。

バランスを保った意思決定の可視化に、稟議を活用

現実的には、経営レベルの相互牽制が機能していない会社は多くあるでしょう。では、どのようにバランスとって進めていくべきか。これは、意思決定を可視化することに尽きます。

具体的には組織体と会議体、そして職務権限規程を作り、意思決定をプロセスとともにテキストで残すことです。組織体については、誰が責任者かをまずは決める。職務権限規定では、課長、部長、役員など、彼らが一体どこまで権限を持ち、いくらまで使っていいかなどのルールを決め、運用していく。ルールの運用では、口頭だけではなくきちんと記録が残る方法で文書化することです。属人的な組織の動かし方から、文書による組織の動かし方に変わる、いわばこれは、属人的な人治主義から、ルールに基づいた法治主義へとも言えます。

こうして意思決定をルール化し、文書で可視化し、経営の統制バランスをとる。そのために必要なツールこそが、文書による集団的意思決定「稟議」です。統制バランスをとるためのツールである稟議を使いこなすには、意思決定の可視化が必要であり、一方で意思決定を可視化するために稟議の活用が必要になります。これはにわとりと卵の関係でもあるため、やり始めは難易度が高いかもしれません。しかし、やればやるだけ累乗的に効果を実感していくものでもあります。

DXにより経営にもスピードが求められ、ましてやコロナ禍によって急激な変化にも的確に対応できる意思決定も求められています。さらには情報化や多様化でコンプライアンスが厳しくなり、リスク管理も欠かせません。

これらの経営に必要なツールというのは、昔は大きなコストがかかっていましたが、現代はクラウドの登場によって価格もリーズナブルです。導入ハードルが低くなった今、稟議のデジタル化で低コストな法治組織を実現し、強くしていくことが重要になるでしょう。

ワークフロー総研<br>フェロー<br>高森厚太郎
この記事を書いた人 ワークフロー総研
フェロー
高森厚太郎

一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事
東京大学法学部卒業。筑波大学大学院、デジタルハリウッド大学院修了。日本長期信用銀行(法人融資)、グロービス(eラーニング)、GAGA/USEN(邦画製作、動画配信、音楽出版)、Ed-Techベンチャー取締役(コンテンツ、管理)を歴任。現在は数字とロジックで経営と現場をナビゲートするプレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFOとして中小・ベンチャー企業などへの経営コンサルティングのかたわら、デジタルハリウッド大学院客員教授、グロービス・マネジメント・スクール講師、パートナーCFO養成塾頭等も務める。2020年9月にはワークフロー総研のフェローに就任。著書に「中小・ベンチャー企業CFOの教科書」(中央経済社)がある。

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