これからの働き方を考える

論理的思考力は稟議で試される−稟議力と仕事力の深い関係−<前編>

論理的思考力は稟議で試される−稟議力と仕事力の深い関係−<前編>

本記事は、一般社団法人日本パートナーCFO協会代表理事であり、ワークフロー総研のフェローに就任した高森厚太郎氏と、ワークフロー総研 所長 岡本の対談をまとめたもの、その前編です。

「稟議」をテーマに、前編では高森氏の専門分野のひとつである論理的思考力や意思決定について、また、稟議と仕事力や思考力にまつわる話を語りました。

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論理的思考力は稟議で試される−稟議力と仕事力の深い関係−<後編>

<対談者プロフィール>

高森厚太郎

ワークフロー総研 フェロー
高森厚太郎

一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事
東京大学法学部卒業。筑波大学大学院、デジタルハリウッド大学院修了。日本長期信用銀行(法人融資)、グロービス(eラーニング)、GAGA/USEN(邦画製作、動画配信、音楽出版)、Ed-Techベンチャー取締役(コンテンツ、管理)を歴任。

現在は数字とロジックで経営と現場をナビゲートするプレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFOとして中小・ベンチャー企業などへの経営コンサルティングのかたわら、デジタルハリウッド大学院客員教授、グロービス・マネジメント・スクール講師、パートナーCFO養成塾頭等も務める。2020年9月にはワークフロー総研のフェローに就任。著書に「中小・ベンチャー企業CFOの教科書」(中央経済社)がある。

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ワークフロー総研 所長
岡本 康広

ワークフローシステムを開発・提供するエイトレッドの代表取締役社長も務める。

ワークフローを出発点とした働き方の見直しが意思決定の迅速化、組織の生産性向上へ貢献するという思いからワークフローの普及を目指し2020年4月、ワークフロー総研を設立して現職。エイトレッド代表としての知見も交えながら、コラムの執筆や社外とのコラボレーションに積極的に取り組んでいる。

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先が読めない時代だからこそ思考力が大切

岡本:まずは思考力のお話から聞かせてください。昨今のコロナ禍により、経済やビジネス環境が大きく変わりつつある中で、これからはどのような思考力が必要となるでしょうか。

高森:大変ですよね。新幹線はガラガラ、飛行機は飛ばない、外国の方を見ないなど、まるで鎖国のようになっています。これはだれも想像できませんでした。

今回のような感染症もですが、テクノロジーも同じです。スマホが登場したり、WEB会議で仕事したりなんて、だれも見通せなかったわけです。

岡本:確かに、世の中って何かのきっかけでガラリと変わりますね。

高森:コロナの収束に関しても様々な説が出ますが、答えはだれにもわかりません。これは経営に関しても同様で、業種によっては厳しい企業もあるでしょう。

しかしだからこそ、流されずに自分で考えないといけません。情報をつかみ、読み取る中でやれることをやっていくと。

岡本:今だからこそ自分自身の思考力が必要ということですね。当社もテレワークを導入する中、私自身が従業員を見ていて実感しました。

高森:どんなことがありましたか?

岡本:例えば、チーム内で相談しながらやっていた仕事が、テレワークで個人となると得意不得意の差が出るんですね。

これは各人の考える力の差なのかなと。部下の思考力もそうですし、上司が部下に仕事を与える力というものも考えるようになりました。

高森:リアルなコミュニケーションは、あうんの呼吸というか、状況や気持ちを察する世界じゃないですか。

ただしオンラインのコミュニケーションは平面的なので、察する力や五感が使いづらいですよね。

自分で相手の状況などを想像して察するのではなく、言わないといけないシーンが多くなります。この能力も、思考力が関係してくると思います。

岡本:思考力に関しては、水平思考や仮説思考などの「○○思考」といったものがあふれているなかで、特に必要とされる思考は何でしょうか?

高森:方法論のようなものが色々あるものの、絶対的な思考法がある訳ではありません。

その中で押さえておくべきは、広く受け入れられている定番、ベーシックなものです。

思考法でいえば、クリティカルシンキングやロジカルシンキングと整理されているものです。

岡本:やはり論理的思考は大事なんですね。

高森:考える場面で押さえるポイントは3つ。まずはイシューです。これは考えるべき目的のことで、その上でイシューに応える枠組みや切り口を考えていきます。

これらを前提に、伝える局面や問題を解決する局面でそれぞれのプロセスを考えます。

考える際には、問題の解決策や原因は何か?と思考を広げていきます。そうして広げた場合、いくつかの解決策や原因が出てきますよね。

そのすべてを追求できるわけにはいかないので、収束させなければいけません。

その収束では、解決策の優先順位をつけたり、本質的な原因を究明したり、因果関係の構造を考えたりするわけです。

こうした拡散と収束の方法論は身に付けるべきだと思います。

岡本:拡散と収束。2大思考プロセスですよね。では、この思考が必要な場面といえばという具体的なケースはありますか?

高森:例えばミーティングです。戦略会議やアイデア出しなど、皆が思いついた考えたことを言う中で、論点がずれてしまいがちですよね。

岡本:ありがちです。結局結論は何だったのか、何の話をしていたのかがわからない、みたいな。

高森:これはミーティングが迷子になっている状況であり、整理するためにホワイトボードなどを使うわけです。

整理というのは、話しているゴールはこれであり、そのゴールに向けてどういうことを話して考えるか、という作業。

いわゆるロジカルシンキングですね。テーマのポイントはこれ、など図を使って整理していくと、しかるべき結論にたどりつきやすくなります。

岡本:やはりこの思考力が身についていると、会話や考え方も変わってきますよね。

高森:はい。例えば、スタッフにロジカルシンキングの手法を教えると、仕事などがうまく運ぶということはあると思います。

稟議には仕事の根幹となる2つの要素が入っている

岡本:今回のテーマである稟議について、考えを聞かせてください。

稟議は社内プロセス上ほぼすべての企業に存在しており、ワークフロー総研では稟議力と仕事力に深い関係があると考えています。高森さんはいかがですか?

高森:おっしゃる通り、私も深い関係があると思います。稟議には仕事で根幹となる2つが入っています。

それは問題解決とコミュニケーションです。例えば、単純で決まりきった作業であればAIとかロボットでも代替できるでしょう。

そうではなくて人が介在するということは、AIやロボットではできない作業、付加価値を作ることです。

それは、トラブルなど困ったときの問題解決や、解決したことをどう伝えるかというコミュニケーションです。

岡本:そもそもの問題が何なのかという発見があり、その解決とコミュニケーションですね。

高森:そして、まさに稟議はそのためのツールです。何かの事象に対して「こうしたい」という解決策が稟議書。

問題解決のための案を稟議として書いているのです。そして、その稟議を上司などに提出し、ハンコを押して決裁してもらう行為はコミュニケーションですよね。

だから稟議には、問題解決とコミュニケーションという仕事の根幹となる2つが入っているのです。

岡本:私の考え方としては、稟議がデジタル化すれば決裁者のノウハウや知恵を蓄積できる、つまりワークフローは集合知であるべきだと。

本来はスタンプラリーのようなものではなく、最終的には精度の高い意思決定につながると思っています。

高森:そうですね。稟議書というものは、作成されたものにハンコを押すだけではない。コミュニケーションそのものです。

突き返しもあれば、コメントを付けて回されることもある。これらのプロセスが意思決定の精度に影響します。

岡本:一方で、例えば特に若手を中心に、稟議とは大変なもの、面倒なものとして認識されがちです。そこに対してはどうお考えで、どうあればよいと思いますか?

高森:稟議を嫌がることについて、理解はできます。書くことが面倒という側面と、だれかに許可をもらわなければいけないという、2つの嫌な側面が混ざっているので、一般的には避けたいものだと思います。

ただしそれは稟議をネガティブに考えているからであり、価値を転換すればいいのです。

岡本:と、言いますと?

高森:例えば、稟議書を問題解決の手段と考えます。稟議の立案や決裁を行ってもらうということは、問題解決に向けて周りを巻き込んでいく行為です。

それを記録として残せばエビデンスになるので、問題解決の正当性がある状態で仕事できる訳です。

仮に稟議の関係者以外がレビューしたいときは、その記録を見れば背景は一目瞭然です。考え方によっては稟議書というツールを使うことで、ポジティブな価値が生み出せるということです。

岡本:捉え方、使い方次第だということですね。あと、思考力の反映の場として稟議というのは、良いトレーニングの機会だとも考えられます。

これまで高森さんが経験されてきた中で、この点の実感値がありましたら具体的な事例を教えてください。

高森:以前携わっていた会社のひとつに、稟議書の存在しない会社がありました。ここは申請をメールで行っており、ルールとしては24時間以内に、特に反対意見がなければOK。ただし、大事な案件に関しては経営会議にかけるとなっていました。

そのなかでも私は新規事業の担当だったので、決裁を取る場面が多かったんですね。そして商品開発に関して、3000万円ほどかかる見通しとなり経営会議にかけたのですが、否決されてしまいました。

私の立場としてはこの商品がなければ事業の未来がないので、なんとかする方法を考えたのです。

岡本:巻き直しをはかったということですね。

高森:はい。たまたま代表に直談判できる機会があったので、銀行時代に培った稟議書を通す資料の作り方や話し方を駆使してプレゼンし、了承を得ることができました。

岡本:稟議書の代わりに、企画書のようなものを作ったということですか?

高森:はい。稟議書のロジックを活用したパワーポイントのスライドみたいなものですね。代表の承認が取れていましたので、その後の経営会議でも案が通り、晴れて新規商品を開発することができました。

この案件は、私が辞めた後も10年間ぐらい毎年1億円強稼ぐコンテンツになりましたので、結果も出せてよかったと思います。

岡本:やはり論理的思考力は稟議やプレゼンの場で試されますね。

高森:そうですね。まさに稟議の考え方で周りを動かすことができました。

――前編はここまで。後編では、稟議書とは?押さえるべきポイントは?など、より稟議の本質に迫っていきます。

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ワークフロー総研 編集部
この記事を書いた人 ワークフロー総研 編集部

「ワークフロー総研」では、ワークフローをWork(仕事)+Flow(流れ)=「業務プロセス」と定義して、日常業務の課題や顧客の潜在ニーズの視点からワークフローの必要性、重要性を伝えていくために、取材やアンケート調査を元にオンライン上で情報を発信していきます。また、幅広い情報発信を目指すために、専門家や企業とのコラボレーションを進め、広く深くわかりやすい情報を提供してまいります。

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