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仕事力の真髄「問題解決力」と「コミュニケーション力」は稟議という実践の場で磨かれる

仕事力の真髄「問題解決力」と「コミュニケーション力」は稟議という実践の場で磨かれる

前回の記事では、生産性の観点から稟議のメリットやその効果についてお話しました。今回のテーマは人材育成と稟議。稟議がどのように人材育成に活用できるかを考察していきたいと思います。

前回の記事はこちら

稟議とは生産性のレバレッジ最大化を実現する、一石三鳥の特効薬

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<プロフィール>

高森厚太郎

ワークフロー総研 フェロー
高森厚太郎

一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事
東京大学法学部卒業。筑波大学大学院、デジタルハリウッド大学院修了。日本長期信用銀行(法人融資)、グロービス(eラーニング)、GAGA/USEN(邦画製作、動画配信、音楽出版)、Ed-Techベンチャー取締役(コンテンツ、管理)を歴任。

現在は数字とロジックで経営と現場をナビゲートするプレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFOとして中小・ベンチャー企業などへの経営コンサルティングのかたわら、デジタルハリウッド大学院客員教授、グロービス・マネジメント・スクール講師、パートナーCFO養成塾頭等も務める。

2020年9月にはワークフロー総研のフェローに就任。著書に「中小・ベンチャー企業CFOの教科書」(中央経済社)がある。

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稟議は問題解決力とコミュニケーション力が鍛えられる格好の場

稟議を通じて何が成長するのか?稟議とは、単刀直入に言えば、仕事で必要な能力の二大要素である「問題解決力」と「コミュニケーション力」の結晶であり、稟議の起案から承認までのプロセスを経ていくことが、人を成長させていきます。

具体的な場面で上述の二大要素を説明しましょう。

たとえば営業の仕事は、自社の対象となる顧客を見つけ、アプローチを行い、アポイントを取って提案し、受注を獲得することです。顧客が買うか買わないかを決める軸として、商品やサービスが自社の役に立つか、つまり顧客の「問題解決」に繋がるかということ。これが「問題解決力」です。

しかし、いくら顧客の問題が解決できる商品であっても、それが相手に伝わらなければ意味がありません。ここで必要なのは、商品やサービスの魅力を伝えて働きかける「コミュニケーション力」です。

営業の仕事は社外との場面におけるものですが、社内を通す稟議でも同じ性質をもっています。

稟議は起案者が実現したい企画を提案することですが、その企画を会社が承認するということは、その企画が会社が大なり小なり抱えている問題を解決することに繋がるからです。

そして、企画が通るか通らないかは内容の善し悪しに加え、テキストでの伝え方、すなわちコミュニケーション力で決まります。

稟議の内容に説得力がない場合、差し戻しが行われます。ここで再起案を行うわけですが、このプロセスを経る段階で再起案のための補足やアドバイスによって新たな発見や知恵などの学びを得ることが可能です。

つまり、このプロセスによって、自身の問題解決力が磨かれたとも言えます。伝え方も同様です。

再起案でより適切なコミュニケーションや表現を行い、その結果理解を得られるようになります。コミュニケーション力も磨かれているのです。

つまり、稟議は仕事で必要な二大要素「問題解決力」と「コミュニケーション力」を鍛える格好の仕組みだといえるわけです。

稟議は1枚にまとめよ!その理由と、うまくまとめるコツとは

前述のように、稟議には仕事のエッセンスが詰まっています。さらに効果を上げるために私が常に言い続けていることがあります。それは、稟議や企画書は、1枚の紙にまとめるべきということ。それはなぜなのかを解説していきます。

1枚にまとめることには、読み手と書き手の双方にメリットがあります。まず読み手にとってみれば、一枚に収まっているほうがコンパクトで読みやすい。

2枚、3枚に分かれていると、内容を理解するためにページを行ったり来たりしなければなりません。これが1枚であればストレートに視界へ入り、全体像が視覚的に理解しやすいのです。

ポイントも端的に整理されることになるため、読み手も判断が素早くできます。

一方、書き手にとってみれば、1枚にまとめることで思考を整理して研ぎ澄ますことができます。最も伝えたい部分や欠けてはいけない要素などを踏まえながら企画を進めるため、本質的に重要な部分に焦点が当たります。

また、読み手のメリットと同様に、情報がまとまっており視覚的に理解しやすいため、推敲する際にもより精度が高い内容に仕上げることができるでしょう。

1枚にまとめるということは、口頭でのコミュニケーションでも応用できます。これは俗に言う、伝えたいことは30秒や1分で話しなさいというものです。このコツは、当たり前のように思われるかもしれませんが、結論から先に述べるということです。

伝えたいことの前段や、道筋から始めて結論を話すと、話が長くなりがちです。先に結論から言えば、次に述べるのは根拠や理由の話になり、結果としてコンパクトにまとまるのです。

結論から話すテクニックは、よりよいコミュニケーションの常套手段ともいえますが、思いのほか、できる人は多くありません。これには2つの理由があります。

一つは、話し手に自信がないということ。結論から伝えるためには、言い切ることが必要ですが、言い切るには勇気がいります。「受け入れられなかったらどうしよう」という不安から、つい背景を語りたくなってしまうのです。

二つめは、「できるだけ正確に伝えたい」というマインド。話し手は自分が用意してきた情報やメリットなどをちゃんと伝えたいがあまり、つい物事のストーリーや背景を丁寧に話しがちです。そうなると、結論から言えなくなってしまうのです。

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稟議の却下を恐れない文化が、会社を強くそして創造的にする

稟議そのものは一見無機質であり、作業のイメージがどうしてももたれがちです。しかしこれまで繰り返し述べてきたように、本質的には、稟議とは問題解決とコミュニケーションが文章にアウトプットされたもので、想像力やクリエイティブの結晶です。これこそ、人にしかできない仕事であるといえるでしょう。

労働人口も消費も減っていく少子高齢化社会とは、放っておいたら縮小していく時代です。この時代こそ、想像力やクリエイティブで、ひいては問題解決とコミュニケーションで、さらに言い換えれば『稟議』で世の中を活性化させていく必要があります。『稟議』の必要性が今こそ問われています。

稟議は社内に正式な文書という形で残ります。その一方で、仕事をする中で思いついた企画は、口頭で話しただけでは提案もなされず、結果実行されず宙に浮いてしまっていることがほとんどです。

企画が実行のために承認されるかどうかは上長や役員・社長の判断です。つまり、やりたいこと・やるべきことがあれば、稟議で企画を現実のものにしていくことが必要です。

その意味では、起案する側も承認する側も、却下を恐れないマインドが必要です。稟議とは企画そのものです。企画が積極的に場に出され、素早く精査されることが企業の強さと創造力に繋がるのです。企画が果敢に生まれるチャレンジングな文化こそが社内をクリエイティブにし、これからの時代を乗り越える力をもたらします。

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過去の稟議にはアイデアやヒントが詰まっている

最後に、人材育成の観点から、研修における学びと、稟議による学びの違いにも触れたいと思います。

研修は経営戦略やマーケティングなどの一般論のレクチャー、成功事例の紹介、フレームワークによる分析などが主となります。事例や問いを使ったワークショップもありますが、限定されたシチュエーションでの学びになります。

一方で、仕事はリアルタイムの場であり、現場で発生した問題を解決していく世界です。問題解決とコミュニケーションの実践である稟議を使えば、仕事で能力を意識的に磨くことができます。また、稟議は記録が残るので、自分の仕事も、同僚の仕事も振り返りが可能になります。まさに生きた学びです。

さらに、稟議には成功の記録が残っているだけでなく、仕事のヒントも眠っています。例えば、過去却下された稟議の中には、再起させられるプロジェクトもあるかもしれません。大企業ともなれば、日の目を見なかった惜しいアイデアもたくさんあることでしょう。

事実、私自身も銀行員時代には、配属先の支店の過去の稟議ファイルを読み漁りました。稟議書を通じて過去の成功・失敗を体系化し、仕事に役立ててきました。

稟議は仕事そのものであり、かつ、成功事例や失敗したケースなどからビジネスに活かせるヒントの宝庫でもあります。ぜひ、能力を磨く、成長するという観点でも稟議を捉えてみてください。

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ワークフロー総研<br>フェロー<br>高森厚太郎
この記事を書いた人 ワークフロー総研
フェロー
高森厚太郎

一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事
東京大学法学部卒業。筑波大学大学院、デジタルハリウッド大学院修了。日本長期信用銀行(法人融資)、グロービス(eラーニング)、GAGA/USEN(邦画製作、動画配信、音楽出版)、Ed-Techベンチャー取締役(コンテンツ、管理)を歴任。現在は数字とロジックで経営と現場をナビゲートするプレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFOとして中小・ベンチャー企業などへの経営コンサルティングのかたわら、デジタルハリウッド大学院客員教授、グロービス・マネジメント・スクール講師、パートナーCFO養成塾頭等も務める。2020年9月にはワークフロー総研のフェローに就任。著書に「中小・ベンチャー企業CFOの教科書」(中央経済社)がある。

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