これからの働き方を考える

【後編】すべての働き方に安心と快適性を。ヤマハが提唱する「ハイブリッド型ワークスタイル」とは?

【後編】すべての働き方に安心と快適性を。ヤマハが提唱する「ハイブリッド型ワークスタイル」とは?

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、今までのワークスタイルが変わりつつあります。

これからは、オフィスと自宅、本業と副業、ビジネスとプライベート、など複数の環境や立場や顔を融合しながら価値を創出する、「ハイブリッド型ワークスタイル」が普及していくと考えられます。

今回の対談では、ヤマハ株式会社・平野尚志氏とワークフロー総研フェロー・沢渡あまね氏に、ハイブリッド型ワークスタイルについて語っていただきました。

前編では、ニューノーマルな働き方を支えるヤマハの技術と想い、ハイブリッド型ワークスタイルの概念についてお聞きしました。

後編は、ハイブリッド型ワークスタイルの効用や近未来における理想の働き方について、対談者2名にお話いただきます。

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【前編】すべての働き方に安心と快適性を。ヤマハが提唱する「ハイブリッド型ワークスタイル」とは?

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これを読めばワークフローがわかる!ワークフローの意味とメリットを徹底解説

オフィスという「箱」の必要性が問われる今、デジタルワーク化を軸に「ハイブリッド型ワークスタイル」へのシフトを

新型コロナウイルス感染症は「ビジネスコミュニケーション」を変えた (出典:ヤマハ株式会社)

平野:今までの働き方では、オフィスという「箱」の中に働く場所が限定されていました。仕事やコミュニケーションは、おもに「箱」の中に入っている人同士で行う状態だったと思います。

それが、緊急事態宣言により自宅待機が余儀なくされた「Underコロナ」のタイミングや、感染予防と経済活動の両立を目指す「Withコロナ」のフェーズに至って、「箱」という概念の存在が希薄になりました。

なぜなら従業員は、自宅やコワーキングスペースなどで、テレワークを体験してしまったからです。

業務上のコミュニケーションは、インターネット上やバーチャルな環境の中で行わなければなりません。

沢渡:「ハイブリッド型ワークスタイル」では、オフィスと自宅、本業と副業、ビジネスとプライベートなど異なる環境や立場を融合させて価値を創出します。

それぞれの人にとって、もっとも生産性の高い働き方を目指します。人々は場所に捉われず、オープンにつながり仕事をしていきます。

そんなハイブリッド型ワークスタイルを実現するうえで、デジタルで仕事をできることは必須の要件です。

平野:デジタルな働き方が浸透していくと、会社が管理すべきファシリティ(資産)の概念も変わりますよね。

ですから、テレワークをはじめとする働き方改革は、企業がしっかり取り組まなければいけない課題だと思います。

そうしないと、従業員が高いパフォーマンスを発揮できる環境は作れないはずなんです。

沢渡:確かに、ひとりでもアナログな仕事のやり方をしてしまうと、チーム全体の生産性が落ちてしまいますからね。

その人のために例外の対応をする、あるいは情報を共有する機会を別途設ける必要が生じるからです。

平野:おっしゃるとおりです。やはりテレワークや働き方改革の実現には、デジタルワーク化は避けて通れませんね。1887年創業で歴史の長い会社ですが、ヤマハも変わろうとしています。

コロナ禍で悲しいことはたくさんあります。この苦境を乗り越えていくのが先決であることに変わりはありません。

それでも、変わるのに良いタイミングと捉えてマインドチェンジをしていくことが求められていると感じています。

仕事も人生もより深みを増す「ハイブリッド型ワークスタイル」の効用

平野氏

沢渡:実は、平野さんも「ハイブリッド型ワークスタイル」を実践されているとお聞きしました。

平野:はい。平日はヤマハに勤務し、週末は家の農業を手伝っています。野菜の手入れや収穫、直売所に野菜を並べて販売するといったことが主な仕事です。

沢渡:平日は“ITネットワークのインフラを守る人”であり、週末は“食のインフラを守る人”なのですね。ただ、「農業はやりたくないので、コンピューターの世界に入られた」と、聞いておりますが(笑)

平野:そうなんです。というのも、私の祖父が農業で苦労するのを目の当たりにしていたからです。

祖父は、夜明けから夜中の23~24時くらいまで働く毎日でした。それでも手が回りません。私も、18時ころから23時ころまで毎日手伝っていたので、そのために学校の宿題もできないほどでした。

「ここまでして農業をやらなければいけないのか?」と、ずっと悩んできたのです。そして「農家だけはやりたくない」と思い、高校生のころに心を惹かれていたコンピューターの仕事に就きました。

沢渡:そんな背景がおありだったのですね。

平野:ところが、結婚して婿入りすると、義父が農業をやっていました。しかし、義父は祖父と対照的にいつもニコニコ楽しそうで、辛そうなそぶりがまったくありません。

また、仕事ぶりは神業の域です。野菜を作り始める前の入念な準備や、従業員への仕事の割り振りなど、80代とは思えない集中力で段取りをしています。

義父の野菜作りを必死にがんばっている姿に、「ものづくり」の姿勢を学ばせてもらっている気持ちがします。

私が本業でネットワーク製品を作るときの「ものづくり」の姿勢に参考となる部分が大きいのです。

集合写真 ▲平野さんの義実家にあたる「ひらの農園」(浜松市浜北区)でのひとコマ、どの野菜も大きく採れたてを販売しているのが特徴

沢渡:私も先日、平野さんの農園にお邪魔しました。いただいた春菊をそのままサラダにして食べたら、とてもおいしくて驚きました。

平野:どれも義父がこだわり抜いた野菜なので、たくさんの人に味わってもらえたら嬉しいです。義父も、育てた野菜をおいしいと言ってくれる人がいるのを楽しみにしています。

そんな想いもあって、直売所の店頭に立って野菜の説明をしたり、お客さまの声を義父に伝えたりもしています。

沢渡:すばらしい話です!そこに、平野さんの核であるコミュニケーションや支えるという文脈があるのですね。

平野:ただ、農業で採算を取るのは難しいことです。家業だからこそ、売り上げよりもお客さんの喜びや義父のサポートに徹することができるのかもしれません。

そのように社会貢献を体現する仕事も選べるのは副業の良いところだと思います。

一方、会社では、社会貢献を含めてやりたいことを実現するための経営を学べます。何かを達成することも誰かを支えていくことも、ボランティアでは続きません。

お客さんや大切な人を支えるためにも収入を得て、サポートや投資に収入を回していく必要があります。

これからハイブリッド型ワークスタイルが普及していけば、さまざまな会社や仕事を経験しやすくなります。それは個人の成長につながり、本業にも良い影響が出るはずです。

私たちヤマハの目標は、音・音楽を原点に培った技術と感性で、新たな感動と豊かな文化を世界の人々とともに創りつづけることです。

ハイブリッド型ワークスタイルが進んでも、ヤマハの技術で快適なビジネスコミュニケーションを支えていきたいと考えています。

沢渡:平野さんの考え方や働き方そのものが、ヤマハさんのブランディングになっていると感じます。

ブランディングとは、製品や会社、コンセプトそのものなどの認知・理解を促進し、ファンを増やしていく取り組みをいいます。

開発の背景にある想いや技術力を語ることが、製品のブランディングになります。

さらには、ネットワーク技術やネットワークエンジニアの仕事そのものにもフォーカスし、その価値を世の中に発信する取り組みにも心を打たれています。

製品を超え、職種や世界観で魅了している平野さんのブランディング活動意義はとても大きいと思います。

平野:そういえば、仕事でご一緒したことのない人から笑顔で話しかけられることが山ほどあって不思議でした。

最近、その答えがわかったのです。実はみなさん、私がエンジニア向けに配信してきたメールを愛読してくださっていたのです。

ヤマハのネットワーク機器開発チームは、オープン型のコミュニケーションを図る目的で、もう25年以上メーリングリストを運営してきました。

メーリングリストでは、私が携わっていた当時、Eメールにまつわるノウハウのほかに、インターネット上でのマナーやコミュニケーションついても発信してきました。

それを読んで、「社会人としての生き方を学びました」と言ってくれる人がたくさんいたのです。

沢渡:それは、コンセプト・ブランディングであると感じます。ITネットワークインフラを守る仕事の価値とは何か、働き方とは何か、ヤマハさんや平野さんご自身が大切にしていることは何か。

そうしたコンセプトが平野さんの取り組みや発信を通じて世の中に認知され、理解されてきた結果でしょう。

このようなコンセプト・ブランディングの活動が、普段なかなか人の目に触れず認知されにくいITネットワークインフラの技術や仕事の価値の認知向上、ひいては私たちのよりよい働き方やライフスタイルの創造につながっていきます。

平野さんは、これからの時代において大事なことを先がけて取り組んで来られたのですね。

ひらの農園のFacebookはこちら、Instagramはこちら

Withコロナ時代の働き方を支えるエンジニアの存在と近未来における理想の働き方

沢渡氏 ▲1~4名程度の打ち合わせに最適なヤマハスピーカーフォン「YVC-200」(沢渡氏私物)と4~6名程度の会議にも対応できる「YVC-330」(平野氏使用)。

沢渡:コロナ禍で医療従事者にスポットライトが当たりました。最前線で治療や感染拡大の防止に取り組み、医療というインフラを支えてくださっています。

しかし、コロナ禍における生活を支えてくれているのは医療従事者だけではありません。テレワークやハイブリッド型ワークスタイルを支えてくれている人たちがいます。

ITネットワークエンジニアも、私たちの生活になくてはならない大切な存在なのです。

ヤマハさんは2019年より「ネツエン(“ネッ”トワーク“エン”ジニアは最高。の略)」キャンペーンを通じて、ITネットワークエンジニアにスポットライトを当ててきました。

ネットワークエンジニアは最高だ。▲東海道新幹線内で掲載された「ネツエン」キャンペーンの車内広告(出典:ヤマハ株式会社、2019年5月掲出)

平野:みなさんが日常的に利用しているお店などにも、ヤマハのネットワーク機器が入っています。

そうした製品のネットワーク構築や保守運用をしてくれているのが、ネットワークエンジニアのみなさんなのです。

私たちの大切なパートナーであるネットワークエンジニアさんたちの仕事ぶりをたたえたい。

そこで、「ネットワークエンジニアは最高だ」というメッセージを「ネツエン最高!」のコピーに込めて発信してきました。

沢渡:すばらしい企画ですね。私自身もNTTデータのネットワークソリューション事業部門でネットワークの運用保守の仕事に従事していました。

「ネツエン最高!」のメッセージを新幹線の中で見たとき、涙が出るほど感動しました。ようやく、ITネットワークインフラの世界にも光が当たるようになったと。

平野:あまり知られていませんが、ネットワークエンジニアのみなさんは「一瞬でもネットワークを途切れさせてはいけない」という切羽詰まった状態の下で仕事をしています。

彼ら/彼女たちが陰で必死にネットワークを守ってくれていることを、私たちヤマハの従業員は誰よりもよく知っているんです。

ですので、サブメッセージを「Yamaha is Proud of Network Engineers(ヤマハはネットワークエンジニアを誇りに思います)」としました。

彼らを支えられるような仕事の仕方をしたいという私たちの想いを、クリエイティブに落とし込んだのです。

「影」か?「陰」か?(出典:ヤマハ株式会社)

沢渡:そもそも、ネットワークやITインフラがなければ、テレワークどころか通常のオフィスワークもできません。

世の中のクラウド化が進んでいっても、仮想化された環境を守っていくことが必要です。

ネットワークやITインフラを支える仕事は、ますます重要性を増していくでしょう。

ただし、ネットワークエンジニアの仕事は目に見えません。見えにくく、認知されにくい、しかしながら重要な仕事を見える化したのが「ネツエン」です。

しかも、新幹線の車内という多くの人の目に入る場所で広報された。この価値は非常に大きいと思います。

目に見えないけれど重要な仕事が正しく評価され、リスペクトされる仕組みや文化は大事です。

テレワークやデジタルワークが進むほどに、陰でがんばる人たちが「ありがとう」と言われる環境をいかに作れるかが重要になっていくでしょう。

平野:沢渡さんのおっしゃる通りです。たわいなく見えるような作業でも、これだけ真剣にやっている人がいることを伝えたいですね。

沢渡:すばらしいですね。最後に、平野さんが考える「近未来の理想の働き方」をお聞きしたいと思います。

平野:私が「良心回路」と呼んで信じている世界観が、世の中に浸透すると良いなと思っています。

「良心回路」とは、敵も味方も関係なくオープンにつながり、世の中にとって本当に必要なものを生み出していくネットワークです。

私たちインターネット技術者たちは本来、技術者同士のつながりによって新たな技術・製品を世に生み出してきました。

競合他社同士であってもオープンにやり取りしながら、理想の社会について議論してきたのです。

理想の社会について議論していくと、必要な技術・製品に関するアイデアが出てきます。そのアイデアが、ある会社にとってはメリットが薄いこともあります。

しかし、トータルで社会の役に立つものになるならば、アイデアを形にしていく方向で合意します。そうした「良心回路」こそ、これからの社会の理想かなと思います。

沢渡:今日、平野さんにお話しいただいたように、「ハイブリッド型ワークスタイル」によって、仕事とプライベートの相乗効果が生まれることは明らかですね。

この相乗効果を生み出すためには、とにかくデジタルな世界に身を置くことが先決です。

デジタル上でオープンに想いを共にする人と出会い、意見を交わす。議論する。そういったデジタルな経験を組織も人も増やしていくと、問題や課題が解決され、イノベーションが生まれます。

そうした成功体験を積み重ねることが、理想の働き方に近づくための第一歩ではないでしょうか。

本日はありがとうございました。

平野:こちらこそ、ありがとうございました。



ヤマハ株式会社では「テレワーク相談窓口」を開設し、テレワークの導入や環境整備にまつわる相談を受け付けています。本窓口を通じ、快適なオンラインコミュニケーションや安全なリモート接続を実現するためのサポートを行っています。

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<対談者プロフィール>

平野 尚志 氏

ヤマハ株式会社 音響事業本部 コミュニケーション事業部 マーケティング&セールス部 マーケティングG 主幹
平野 尚志

静岡県浜松市出身、1987年にヤマハ(当時:日本楽器製造株式会社)に入社。CD-Iや-ROM、-R関連のソフトウェア開発に従事する。1997年よりルーターの開発、ネットワーク機器の商品企画などを経て、現職。Webサービスの開発から営業企画、広報、市場分析などを幅広く手がける。20年以上続けるメーリングリストやブログを通した顧客コミュニケーションも担当している。

ネットワーキングの応援メディア『ネツエン』、“音”で働き方改革を支援する『働く音改革』を主導。

著書に、日経コミュニケーション誌『トラブル対策講座 ISDNルーター』連載(1999年)、日経NETWORK誌『ネットワーク検定2008』出題と解説(2008年)、日経NETWORK誌『無線LAN構築ここがツボ』連載(2013年)』、ソフトウェアデザイン誌『遠州発 ヤマハネットワーク通信』連載(2021年)ヤマハ株式会社コミュニケーション事業部Twitter:@hisashi_hirano

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沢渡 あまね 氏

ワークフロー総研フェロー
沢渡 あまね

1975年生まれ。作家、業務プロセス/オフィスコミュニケーション改善士。あまねキャリア工房 代表(フリーランス)/株式会社なないろのはな取締役 浜松ワークスタイルLABO責任者/株式会社NOKIOO顧問。日産自動車、NTTデータ、大手製薬会社を経て2014年秋より現業。経験職種は、ITと広報。

300以上の企業/自治体/官公庁などで、働き方改革、マネジメント改革、業務プロセス改善の支援・講演・執筆・メディア出演を行う。著書に『職場の科学』(文藝春秋)、『ここはウォーターフォール市、アジャイル町』(翔泳社)、『ざんねんなオフィス図鑑』『ドラクエに学ぶチームマネジメント』(C&R研究所)、『職場の問題地図』『業務改善の問題地図』(技術評論社)など。趣味はダムめぐり。 #ダム際ワーキング エバンジェリスト。

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ワークフロー総研 編集部
この記事を書いた人 ワークフロー総研 編集部

「ワークフロー総研」では、ワークフローをWork(仕事)+Flow(流れ)=「業務プロセス」と定義して、日常業務の課題や顧客の潜在ニーズの視点からワークフローの必要性、重要性を伝えていくために、取材やアンケート調査を元にオンライン上で情報を発信していきます。また、幅広い情報発信を目指すために、専門家や企業とのコラボレーションを進め、広く深くわかりやすい情報を提供してまいります。

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