市民開発とは?メリット・デメリットやDX推進に必要な理由を解説!
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本記事では、市民開発の基本からメリット・デメリット、そしてなぜ市民開発が重要なのかをわかりやすく解説します。市民開発の促進に効果的なツールとその活用事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
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市民開発も効果的!草の根DX推進のポイントは?

こんな人におすすめ
・各種ツールを導入しているが成果に至っていない
・現場でのシステム活用が進まない
・DX推進に対して社内の反発が強い
市民開発とは?
市民開発とは、IT部門に所属していない現場の従業員が、業務に必要なアプリケーションやシステムを自ら開発・改修することを指します。
まずは基礎知識として、市民開発の特徴を見ていきましょう。
IT専門家でなくても開発が可能に
市民開発の最大の特徴は、開発の主役が現場の従業員である点です。
日々の業務の中で「この作業が自動化できれば楽になるのに」「Excelでのデータ管理に限界を感じる」といった課題をもっとも理解しているのは、実際にその業務を担当している従業員自身です。
市民開発では、こうした現場の担当者が自ら手を動かして、課題解決に直結するツールや小規模なアプリケーションを開発します。これにより、IT部門に開発を依頼する時間や手間をかけずに、迅速かつ的確に業務上の問題を解決できるようになります。
ローコード/ノーコードツールで実現
現場従業員による市民開発を可能にしているのが、ローコードツールやノーコードツールの存在です。これらのツールは、プログラミングの知識がほとんどなくても、直感的な操作でアプリケーションを開発できるのが特徴です。
- ノーコードツール:ソースコードの記述が一切不要。あらかじめ用意された部品(コンポーネント)をマウス操作で組み合わせるだけで開発可能。
- ローコードツール:必要に応じて少量のコード記述も可能。より複雑な処理や外部システムとの連携にも対応しやすい。
これらのツールの登場により、アイデアを素早く形にできる環境が整い、市民開発は企業にとって一気に現実的な選択肢となっています。
市民開発のメリット・デメリット

市民開発は多くのメリットをもたらす一方で、導入にあたって考慮すべきデメリットも存在します。双方を正しく理解し、対策を講じることが成功の鍵となります。
市民開発のメリットとは?
市民開発を導入することで、企業は以下のようなメリットを享受することができます。
開発スピードの向上
IT部門を介さずに現場で開発するため、要件定義から実装までのサイクルが高速化し、市場や業務の変化にも迅速に対応可能です。
開発・運用コストの削減
外部の開発会社への委託費用や、高スキルなIT人材の採用コストを抑制できます。既存の従業員による内製開発が可能になるため、費用対効果が高い投資と言えます。
業務効率化と生産性向上
現場のニーズに即したアプリが生まれることで、手作業や反復作業で構成される定型業務が自動化され、従業員はより付加価値の高い業務に集中できます。
全社的なDX推進とデジタル文化の醸成
従業員一人ひとりが「自らデジタルツールで課題を解決できる」という当事者意識を持つようになります。現場主体で自律的に動くデジタル文化が醸成され、全社的なDX推進を加速させます。
市民開発のデメリット
市民開発には多くのメリットがある一方、無秩序に市民開発を進めると以下のような課題が生じる可能性があります。
ガバナンスの欠如と「野良アプリ」の乱立
現場が自由にアプリを作成した結果、IT部門が管理しきれない「野良アプリ」が乱立するリスクがあります。これらのアプリが重要なデータを扱っていた場合、セキュリティインシデントの原因になりかねません。
そのような状況を防ぐには、開発できるアプリの範囲や使用データに関するルールを策定し、IT部門を主体としたガバナンス体制を構築することが大切です。
品質とセキュリティレベルのばらつき
開発者のスキルによってアプリの品質に差が出たり、セキュリティへの配慮が不十分になったりする可能性があります。
対策としては、現場向けの開発ガイドラインを整備し、重要なアプリについてはIT部門がレビューする仕組みを整えるのが有効です。
アプリの属人化
開発した担当者が異動・退職すると、そのアプリの修正やメンテナンスが誰にもできなくなる「ブラックボックス化」のリスクがあります。
開発業務のブラックボックス化を防ぐためにも、複数人での管理体制を組んだり、アプリの仕様や操作方法に関する簡単なドキュメント作成をルール化したりといった対策が求められます。
市民開発がDX推進に有効な理由
なぜ今、多くの企業がDX推進の文脈で市民開発に注目しているのでしょうか。その背景には、現代企業が抱える構造的な課題があります。
深刻化するIT人材不足への対応
経済産業省の調査によると、日本のIT人材は2030年に最大で約79万人不足すると予測されています。
(参照:IT人材需給に関する調査 調査報告書|経済産業省)
IT人材の不足が深刻化するなか、すべてのシステム開発をリソースが限られたIT部門だけで担うのは現実的とは言えません。
その点、市民開発はIT人材に依存しすぎることなく開発体制を構築するのに有効な手段です。IT部門は基幹システムなど専門性が高い領域に集中し、現場の細かなニーズは市民開発で補う、という役割分担によって、企業全体のデジタル化を効率的に加速させることができると考えられています。
現場主導で変化に強い組織文化を醸成
市民開発によって従業員が自ら課題を発見し、テクノロジーを使って解決策を考え、実行するプロセスは、人材育成の絶好の機会となります。
この経験を通じて、従業員はデジタル技術への理解を深め、問題解決能力を高めることができます。結果として、トップダウンの指示を待つのではなく、現場からボトムアップで改善提案が生まれるようになり、変化に強い組織文化が醸成されるのです。
成功の鍵はIT部門との連携
市民開発を成功させるためには、情報システム部門などのIT部門の積極的な関与とサポートが不可欠です。現場の自由な発想を尊重しつつも、企業として守るべきセキュリティやコンプライアンスなどはIT部門が管理する必要があります。
IT部門の役割例
- 利用するツール(プラットフォーム)の選定と管理
- 全社的な開発ルールの策定(ガバナンス)
- セキュリティやデータ連携に関する技術支援
- 市民開発者の育成支援(勉強会の開催など)
「現場の自由な発想」と「IT部門による統制」という両輪がうまく機能することで、市民開発はその効果を最大限に発揮します。
市民開発の第一歩にワークフローシステム

「市民開発の重要性は理解できたが、一体どこから手をつければいいのか?」とお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、市民開発の第一歩としておすすめしたいのが、ワークフローシステムの導入・活用です。
ワークフローシステムとは、社内で行われる各種申請・稟議などの手続きを電子化するツールで、業務のデジタル化やDX推進に有効なソリューションとして多くの企業で利用されています。では、市民開発の第一歩にワークフローシステムが適している理由を見ていきましょう。
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ノーコードで誰でも「開発者」になれる手軽さ
先述した通り、市民開発を始める上で注目すべきポイントが、「専門知識がなくても開発可能か」という点です。
その点、高機能なワークフローシステムのなかには、ノーコードやローコードの思想で設計されている製品が多くあります。
たとえば、簡単なマウス操作で入力項目や選択肢などを配置して申請フォームを作成できたり、「誰がどの順番で承認するのか」といった承認ルートを、まるで図を描くように視覚的に設定できます。
現場の担当者が「自社の業務ルールに合った申請・承認の仕組み」を自ら構築できる点は、まさに市民開発のコンセプトそのものと言えるでしょう。
効果を実感しやすい「定型業務」の電子化
部署部門を問わず行われる定型業務を電子化できる点も、ワークフローシステムが市民開発の第一歩として適している理由です。市民開発の対象として最初に着手すべきは、成果が表れやすい「定型業務」であり、その代表格が申請・承認業務です。
たとえば、
- 交通費や出張費の精算
- 稟議書や物品購入の申請
- 休暇取得やリモートワークの届け出
といった申請・承認業務は、あらゆる組織に存在し、全従業員が関与します。
そして従来、これらの業務は紙やExcelで行われることが多く、ハンコのための出社や、書類の紛失、進捗の不透明さといった多くの課題を抱えていました。ワークフローシステムでこれらの定型業務を電子化することで、従業員の誰もが業務効率化の効果を直接的に実感できるでしょう。そして、この成功体験は全社へデジタル化を広げていく上での強力な推進力となり得ます。
DXの基盤となる「データ連携」の拡張性
ワークフローシステムを「ハブ」として活用することで、デジタル化の範囲を大きく拡張し、DXの取り組みを加速していくことが可能です。
ワークフローシステムは、専用のアダプタやAPIを用いることで他システムとのデータ連携が可能です。これにより、申請・承認に前後する一連の業務プロセスを効率化・自動化することができます。
- ワークフローで承認された経費データを会計システムに自動転記
- 各種入社手続きが完了したら、人事管理システムへ従業員情報を自動で追加
- 契約条件の承認後、電子契約サービスに情報を引き継ぎ契約締結プロセスを自動化
このように、ワークフローシステムは単なる電子化ツールに留まらず、社内に散在する各種システムをつなぎ、データを一気通貫で流すための「DXの基盤」としての役割を担います。
ワークフローシステムで市民開発を推進した事例
最後に、ワークフローシステムを活用して市民開発を推進した事例をご紹介します。
現場が自発的に業務改善を行える体制を構築(日進製作所)
自動車部品・工作機械メーカーの株式会社 日進製作所は、「X-point Cloud」を導入して、社内の各部門が自発的に業務改善を行う体制を構築しています。
複数拠点を擁する同社では従来、拠点をまたぐ申請業務において多くの非効率が生じており、内部統制の面でも不安を抱えていました。この課題を解消するため、一部の申請をデジタル化するアプリケーションを自社開発して社内に展開。各部署から好評を得たことから、本格的なワークフローシステムの全社導入に向け動き出しました。システム選定の結果、システムの柔軟性とわかりやすい操作性が決め手となり、「X-point Cloud」の導入を決定。
導入プロジェクトでは、既存業務の見直しに加え、システム名称を社内投票で決定するなど、システムの定着を促進。現在、約700名の社員が「X-point Cloud」を利用しており、幅広い範囲の申請書がデジタル化されています。経費削減効果は年間で約650万円に上り、内部統制の強化も実現。
さらに同社では、IT部門以外の一部部署に対して運用権限の分譲を進めており、各部署が自発的に申請業務をデジタル化できる体制を整えています。
デジタル化の意識醸成につながり「草の根DX」が加速(ヤンマー建機)
ヤンマーグループの一角として建設機械の製造販売を行うヤンマー建機株式会社は、「AgileWorks」を導入して「草の根DX」を加速することに成功しています。
従来、同社では数多くの申請業務が紙ベースで運用されており、持ち回りによる決裁は多くの無駄が生じていました。また、承認後の処理業務にも多くの手間が費やされており、バックオフィス部門の負担となっていました。
そこで同社はワークフローシステムの導入を決断。システム選定では、すでに導入していたウイングアーク1st社の製品をはじめとした他システムとの連携性を重視。検討の結果、「AgileWorks」の導入に至りました。導入プロジェクトでは各部門から人員を募り、現場の従業員が自らフォームの作成や承認ルートの設定を行える体制を目指しました。
現在、社内の全部門にシステムを展開し、幅広い業務のデジタル化を実現。他システムとの連携により年間1,000時間以上の業務削減を達成しています。
さらに、「AgileWorks」の導入は従業員のデジタル化への意識醸成にも寄与。各部門から業務改善のアイデアが生まれるようになるなど、同社が掲げる「草の根DX」の加速に効果を実感されています。
まとめ
今回は、市民開発の基本からメリット・デメリット、重要性まで解説しました。
IT人材不足が懸念される現在、市民開発は企業のDX推進に有効なアプローチだと言えます。そして、市民開発の第一歩におすすめなのが、ワークフローシステムの活用です。
これから市民開発に取り組みたいと考えている企業は、記事内でご紹介したワークフローシステム「X-point Cloud」や「AgileWorks」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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市民開発も効果的!草の根DX推進のポイントは?
草の根DXを実現するポイントから成功事例まで解説!
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