セキュリティを左右する「ロール」とは?ロール管理の課題や効率化のポイントを解説
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本記事では、ロールの基礎知識やロール管理でよくある課題、効率化のポイントを解説します。
ロール管理に役立つソリューションや効率化に成功した事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
OUTLINE 読みたい項目からご覧いただけます。
- ロールとは?管理の必要性をチェック!
- ロール管理が重要視される理由
- ロール管理のよくある課題とその背景
- ロール管理を効率化・適正化するポイント
- ロール管理の効率化・適正化にワークフローシステム
- ワークフローシステムでロール管理を改善した事例
- まとめ
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こんな人におすすめ
・ロール管理や証跡管理を強化したい
・自社の内部統制に課題がある
・内部統制を構築・強化する方法を知りたい
ロールとは?管理の必要性をチェック!

ロール(Role)とは「役割」を意味する言葉であり、ビジネスにおいては組織内での役職・職位を指します。そして、役職・職位ごとの権限等を付与したり制限したりすることをロール管理と言います。
企業では一般的に、職務権限規程によって各役職・職位における権限と責任範囲を定めています。また、業務で使用するシステムやツールにおいても、組織内でのロールに基づいてアクセス権限などを管理するケースが一般的で、この手法は「RBAC(Role-Based Access Control:ロールベースアクセス制御)」と言われています。
ロール管理の取り組みは内部統制や業務効率の観点で非常に重要であり、具体的には以下のような効果があります。
- セキュリティの強化:ユーザーが必要最小限の権限のみを持つようにすることで、不正アクセスや情報漏洩のリスクを低減します。
- 管理業務の効率化:ユーザー個別に権限を設定するのではなく、ロール単位で権限を管理するため、人事異動や組織変更の際の権限変更作業が簡素化されます。
- コンプライアンスの遵守:誰がどの情報にアクセスできるかを明確に記録・管理することで、内部統制や各種法規制への対応が容易になります。
- 業務効率の向上:ユーザーは自身の業務に必要な情報や機能にスムーズにアクセスできるようになり、業務の生産性が向上します。
ロール管理が重要視される理由
近年、ロール管理の効率化が情シス部門にとって喫緊の課題となっている背景には、企業が扱うシステムやデータの爆発的増加があります。クラウドサービスの利用拡大や取り扱うデータ量の増大に伴い、管理すべきIDやアクセス権限が飛躍的に増加しています。
また、セキュリティ面の脅威も見逃せません。サイバー攻撃は日々高度化しており、ひとたび不正アクセスを許せば、甚大な被害につながりかねません。不適切なロール設定や放置されたアカウントは、攻撃者にとって格好の標的となります。
さらに、働き方の多様化もロール管理の重要性が増す要因のひとつです。 リモートワークが普及したことで、社内外のさまざまな場所から企業リソースへのアクセスが行われるようになりました。これにより、従来の境界型セキュリティモデルの有効性が低下し、ロール管理の重要性が一層高まっています。
これらの背景から、ロール管理の効率化は単なる業務改善に留まらず、企業のセキュリティ基盤を強化し、事業継続性を確保するための戦略的な取り組みとして位置づけられています。
ロール管理のよくある課題とその背景

次は、ロール管理でよくある課題とその背景について見ていきましょう。
ロールの無秩序化と形骸化
ロール管理におけるよくある課題のひとつが、ロールの無秩序化です。
これは、場当たり的にロールを作成したり、既存ロールを細分化しすぎたりした結果、管理すべきロールの数が無秩序に増加してしまうことに起因します。
また、過剰な権限付与も問題です。利便性を優先したり、「念のため」といった理由で本来不要な権限まで付与してしまうと、セキュリティリスクを高める要因となります。
さらに、従業員の異動や職務変更、組織改編に伴う対応を行っていないと、権限の形骸化を招きます。これにより、有効なまま放置されている「休眠アカウント」や「孤立ロール」が発生し、不正アクセスの踏み台となるリスクを抱えています。
業務プロセスの改善や効率化が進まない
ロール管理の改善や効率化が進まないという課題も存在します。
たとえば、多くの企業ではロールの割り当てや変更、削除といった作業が依然として手作業で行われています。これは時間と手間がかかるだけでなく、ヒューマンエラーを誘発しやすく、セキュリティ上の脆弱性を生み出す原因ともなります。
とくに中小企業においては、IT関連業務全般を一人の担当者が担っており、ロール管理の負担が集中したり属人化してしまうケースがあります。多くのシステムやツールを管理しなければならない状況では、目の前の業務に忙殺されてしまい、ロール管理を含む各種業務プロセスの改善にまで手が回らないケースは少なくないのです。
セキュリティとコンプライアンス要件への対応の難しさ
ロール管理の不備は、セキュリティリスクの増大やガバナンスの脆弱化を招きます。
たとえば、手作業による管理や分散した情報管理体制では、「誰が、いつ、どの情報にアクセスし、何を行ったか」という監査証跡を迅速かつ正確に提出することが難しくなります。また、J-SOX法など内部統制への対応が困難になったり、退職者アカウントの削除漏れなどによって、重大なセキュリティインシデントにつながる可能性があります。
ロール管理を効率化・適正化するポイント
次は、ロール管理を効率化・適正化するためのポイントを解説します。
最小権限の原則
ロール管理におけるもっとも基本的かつ重要な原則が「最小権限の原則(Principle of Least Privilege: PoLP)」です。これは、ユーザーやプロセスに対して、その正当な業務目的を遂行するために必要最小限の権限のみを付与するという考え方です。
最小権限の原則を徹底することには、以下のような多くのメリットがあります。
- 攻撃対象領域の縮小:万が一アカウントが侵害された場合でも、攻撃者がアクセスできる範囲や実行できる操作が限定されるため、被害を最小限に抑えられます。
- 内部不正リスクの低減:従業員による意図的な不正行為や、誤操作による情報漏洩のリスクを軽減します。
- コンプライアンス遵守:誰がどの情報にアクセスできるかを明確にすることで、監査対応や規制遵守が容易になります。
- ロール設計の簡素化:ユーザーに本当に必要な権限は何かを明確にするプロセスを通じて、ロール設計がよりシンプルかつ効果的になります。
情シス担当者は、最小権限の原則に従い、新しいアカウントを作成する際や既存の権限を見直す際に、必要なものだけを許可する「デフォルト拒否」の考え方を基本とすることが重要です。
効果的なロール設計のステップ
最小権限の原則を基盤としつつ、自社の組織構造や業務特性に合わせたロール設計を行うことも大切です。
そのために、以下のステップで段階的にロール設計に取り組むのが有効です。
- ニーズの特定:組織の構造、各部門の業務内容、各職務に必要な情報やシステムへのアクセス要件を徹底的に洗い出します。
- 明確なロール階層の確立:組織の構造や指揮命令系統を反映した、明確なロールの階層を定義します。
- 最小権限の原則の適用:設計する全てのロールに対して、最小権限の原則を一貫して適用し、各ロールにはその役割を果たすために真に必要な権限のみを割り当てます。
- 職務分掌の考慮:利益相反や不正行為のリスクを低減するために、特定の業務プロセスにおいて、要求、承認、実行といった権限を異なるロールに分散させることを検討します。
- 命名規則の標準化:ロール名や権限名に一貫性のある命名規則を導入することで、管理の容易性と可読性を向上させます。
ロールと権限の文書化:設計したロール、各ロールに割り当てられた権限、ロールの割り当て基準などを明確に文書化し、関係者間で共有します。
定期的な棚卸しと見直し
一度設計したロールや付与した権限も、組織の成長、事業内容の変化、従業員の異動・退職などにより、時間とともに陳腐化していきます。
形骸化した権限を放置することは、セキュリティリスクを高めるだけでなく、ロール管理全体の複雑性を増大させます。
継続的な見直しを通じて、ロールと権限を常に最新かつ最適な状態に保ちましょう。
ゼロトラスト時代への対応
近年、セキュリティの新たなパラダイムとして「ゼロトラスト」が注目されています。これは、「何も信頼せず、常に検証する」という原則に基づき、すべてのアクセス要求に対して厳格な認証と認可を行うセキュリティモデルです。
ゼロトラスト環境においても、RBACはアクセス制御の基本的な要素として依然として重要です。しかし、ゼロトラストでは、静的なロール情報だけに依存するのではなく、複数の要素を組み合わせて、アクセスの可否や許可する操作範囲を動的に判断することが重要になります。
ロール管理の効率化・適正化にワークフローシステム

次は、ロール管理の効率化・適正化に有効なソリューションとして、ワークフローシステムをご紹介します。
ワークフローシステムとは、各種申請や稟議などの手続きを電子化するITツールで、ロール管理にも役立てることが可能です。
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では、ワークフローシステムがロール管理に有効な理由を見ていきましょう。
効率的かつ適正なロール管理プロセスを実現
ワークフローシステムを活用することで、ロールの付与や変更申請のプロセスを電子化できます。
紙の申請書よりも効率的に確認や承認のステップを遂行することができ、人的ミスの防止にもつながります。また、ロール管理に関わる申請・承認プロセスが可視化されるとともに、ログがシステム上に記録されるので、定期的な棚卸し・見直しや監査対応の効率化にも役立てることができるでしょう。
人事異動や組織改編時の負荷を軽減
ロール管理に取り組む上で、とくに業務負荷が高くなるのが人事異動や組織改編などのタイミングです。
ワークフローシステムは、人事異動や組織改編に伴う設定変更を効率化する機能が備わっています。たとえば、変更予定の組織図を事前設定できる「先付けメンテナンス機能」や、変更後の設定が正常に機能するか検証できる「ステージング環境」が用意されている製品もあります。
そのような機能を活用することで、人事異動や組織改編に伴うロール設定をスムーズに更新できるでしょう。
システム連携でメンテナンスを効率化
ワークフローシステムは、さまざまなITシステム・ツールと連携することで利便性をさらに高めることができます。
たとえば、ロール管理と深く関係するシステムとして人事システムを挙げることができますが、ワークフローシステムとの連携により、人事関連のマスタデータの受け渡しが可能になり、ロール管理における設定作業の自動化を目指すことができます。
会計システムや給与管理システムなど、さまざまなシステム・ツールと連携することで、各システム・ツールで行っていたロールの申請・承認をワークフローシステム上に集約し、一元管理することが可能です。
ワークフローシステムでロール管理を改善した事例
最後に、ワークフローシステムを活用してロール管理を改善した事例を見ていきましょう。
複雑な組織構造を再現しセキュリティ強化と効率化を達成(リボミック)
株式会社リボミックは、「X-point Cloud」を導入して申請業務の効率化とセキュリティ強化を実現しました。
同社では従来、Wordファイルで作成した申請書をメールで回付し、決裁後にはクラウドストレージに保管するという流れで申請業務を運用していました。しかし、管理簿への記載漏れやクラウドストレージへの保管漏れといった不備が頻発しており、作業負担の増大や内部統制上のリスクが課題に。
すでに導入していた会計システムのワークフロー機能で申請業務を電子化する案もあったものの、部門ごとに役職階層が異なる同社の複雑な組織構造に対応できないことから、ワークフローシステムの導入を決めました。
クラウドサービスの利用増加に伴い、アクセス管理とセキュリティを両立させる必要があることから、柔軟な承認ルート設定機能に加えて、シングルサインオンを実現できる「X-point Cloud」の採用に至りました。
導入後、幅広い申請業務の電子化を推進するとともに、SSOによりセキュリティの担保も実現。承認ルートを細やかに設定することで、効率的かつ適切な申請フローが完成し、意思決定の迅速化や内部統制の強化に効果を得ています。
膨大なコストを生んでいた組織改編の課題を解決(えがお)
株式会社えがおは、多大なコストを費やしていた組織改編の課題を解消するため「AgileWorks」を導入しました。
2010年代に急速な拡大期を迎えた同社では、頻繁に発生する組織改編への対応に多くの手間を要していました。とくに、当時利用していたワークフローシステムは組織改編のたびに外部パートナーに改修依頼する必要があり、コストの面でも対応スピードの面でも大きな課題に。また、一人の人物が複数の役職を兼任するパターンや、ある階層の役職を空位とするパターンなど、同社の複雑な組織構造・承認経路に対応することが難しいことから、ワークフローシステムの刷新を決定しました。
役職の兼任や空位などに対応できるフロー設定機能に加え、ノーコードでの運用・開発が可能なメンテナンス性を評価し、「AgileWorks」へのリプレイスに至りました。
導入にあたっては、承認権限の切り分けなど社内規定の見直しを行うとともに、他システムとの連携を実施。拡大中の組織にふさわしい、効率的かつメンテナンス性が高い申請業務の仕組みを構築していきました。
運用開始から数年で、外部パートナーに委託していた保守運用作業や、申請書や承認経路の設定・改修作業の完全内製化を実現。懸案であった組織改編時の負荷軽減および対応の迅速化を達成するとともに、約2,000万円のコスト削減にもつながっています。
まとめ
今回は、ロール管理の基礎知識からよくある課題、効率化するためのポイントについて解説しました。
企業が扱うITシステムやデータは増加を続けるなか、セキュリティリスクへの対応やガバナンス体制の構築などの面で、効率的かつ適正なロール管理の必要性が高まっています。
そして、ロール管理の効率化・適正化に役立つソリューションのひとつが、ワークフローシステムです。ロール管理に課題を感じている企業は、記事内でご紹介したワークフローシステム「X-point Cloud」や「AgileWorks」の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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