スピードアップとコスト削減を実現。データを解析と対策に役立ててよりよい経営を目指す
- 更新 -
今回は、ワークフローシステムを導入されている企業を紹介します。人材派遣・アウトソーシングをはじめ多岐にわたって事業を展開する、株式会社グロップ 情報システム部の下山さんと須東さんにインタビューを行いました。
ワークフローシステムを導入した背景や、運用開始後に現れ始めた効果などをお伝えします。
OUTLINE 読みたい項目からご覧いただけます。
煩雑な業務から解消され、承認フローもスピードアップ
グロップ社は2019年の夏ごろにワークフローシステムの導入を決定し、現在は社内帳票の約8割がシステム化されています。
例えば、新規クライアントと取引をはじめる際の社内申請をはじめ、管理部門への申請書類をシステム化。これにより、紙ベースでFAX・郵送していた申請・承認のフローがスピーディーに行えるようになりました。
「特にスムーズになったと感じるのは、社内規程を遵守した個人情報の管理です。当社はプライバシーマークを取得しており、社内規定では個人情報を発送する際、配達記録を添付するルールがあります。
それがシステム化により全てがシステム上で完結できるようになったため、配達記録を添付しなければならなかった個人情報を含む媒体の郵送が不要となりました。
また、名前や住所をはじめすべての情報を手入力していましたがワークフローシステムによってデータベースから自動的に反映されるようになり、入力作業も省かれました。
その結果、ヒューマンエラーも減り、非常に改善されたと思います」と下山さんは話します。
上層部の意識変化がシステム化の決め手に
導入した背景には、拠点の増加が大きかったとのこと。拠点が増えればその統括責任者が巡回する機会も多くなり、デスクを離れる時間が増えて承認待ちも溜まっていきます。
現場から改善を希望する声もあり、相互コミュニケーションの円滑化を1つの目的に、システム化が検討されました。
7~8年前からシステム化を希望する声はあったものの、事業部によって運用に対する考え方に違いがあり、これまでは全社で足並みをそろえた活動を進めるまでに至りませんでした。
しかし、近年では上層部の意識に変化があり、トップダウンでワークフローシステムの導入を進める運びとなったのです。
そのキーパーソンとなったのが今回お話を聞いた下山さんと須東さん。いくつかの部門に協力をあおぎ、システム化の対象となる帳票を確認してもらい、キーとなるメンバーを選定して導入プロジェクトを進めていったとか。
「申請から承認までのスピードが早くなったこと、その案件がどこで止まっているか進捗を可視化できるようになったことが非常に大きいメリットだと思います」と須東さんは振り返ります。
「書類を郵送していたときは、別の書類とまとめて送ることで遅延が発生していました。また郵送でもFAXでも、送ったことを先に電話で確認するケースもありましたね。FAXの送信時には宛先間違いを防ぐためにダブルチェックをしていましたし、郵送コストやリソース面で削減ができました」(須東さん)
一方、導入当初に難しかったのは、処理担当者の切り分けだったとか。紙の場合、慣れた従業員が書類を見れば担当が総務なのか、人事なのか判断できたものが、システム経由の場合は運用を明確にするまでに時間がかかったそうです。
現場からのフィードバックが増えてきた
グロップ社がワークフローシステムの運用を開始してもうすぐ1年。今では「申請内容の一覧をCSV出力したい」「この帳票の内容を変えたら検索しやすくなる」など、現場からのフィードバックも増えているそうです。
「解析できるように帳票内容の修正を検討したいという声も挙がっていますし、ワークフローシステムの効果はこれからさらに出てくると思います」と下山さんは期待を寄せています。
アナログからデジタルに移行するタイミングは、業務フローを見直したり整理したりする機会でもあります。
実際に同社でも、「このルートは不要」「この人は承認者に入れなくてもよいのでは」など、プロセスを圧縮したことにより、スマートになった部分が多々あり、さらに「ここも圧縮できるのでは」という改善案も挙がっているそうです。
「次の課題としていることですが、人材派遣部門では、現在取引開始までに2種類の書類を申請しています。その2つの書類は内容が重複しており、途中までは承認ルートも同じです。
一つ目の書類は上司に取引開始の承認を得ることが目的の書類、もう一つは管理部門に売上や請求の管理のための登録を依頼する書類です。
それぞれの書類の目的から本当に必要な項目を選んで内容を簡素化したり、承認者を省略できるのではと考えています。理想は2つの書類を一つにまとめてしまうことですね。」
蓄積されたデータを解析と対策に役立てる
帳票とは会社の歴史や知見、ノウハウが文章で表現された集合知であり、資産であるともいえます。こうして少しずつデータを蓄積することで、解析や改善に役立てることがこれからの展望だと下山さんは言います。
「例えば、通常と異なる対応をした場合の報告書を解析して、従業員の経験や能力に起因した事象なのか運用ルールに起因した事象なのか、などの考察。
どうしたら未然に防げるか、マニュアルを変えるべきかといった対策。こういった改善に向けた活動は、データが蓄積されているからこそ生み出せることだと思います」(下山さん)
また、経営層に報告の資料を提出する際には、まとまった期間の情報を一覧にしたエクセルを準備する必要がありましたが、ワークフローシステムの導入後はシステムからいつでも一覧で出せるようになり、経営層へのレポート業務も最適化されたとか。
「まだまだこれからですが」と2人は謙遜するものの、着実に成果を生み出している。今後の社内改善にも注目です。
「ワークフロー総研」では、ワークフローをWork(仕事)+Flow(流れ)=「業務プロセス」と定義して、日常業務の課題や顧客の潜在ニーズの視点からワークフローの必要性、重要性を伝えていくために、取材やアンケート調査を元にオンライン上で情報を発信しています。また、幅広い情報発信を目指すために、専門家や企業とのコラボレーションを進め、広く深くわかりやすい情報を提供しています。