請求書とは?意味や書き方、電子化の方法やメリットについて解説!
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ビジネスシーンで使われる重要な書類のひとつに、請求書があります。
スタートアップ企業から大企業、あるいはフリーランサーまで、あらゆる企業・個人事業主にとって必要な文書ですが、
「請求書はなぜ必要なの?」
「請求書には何を記載すればいいの?」
「請求書を電子化するメリットや方法は?」
といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また近年では、2022年1月に行われた電子帳簿保存法の改正や、2023年10月に開始予定のインボイス制度などにより、請求書を電子化して業務効率化を図る企業も増えつつあります。
この記事では、請求書の基礎知識や書き方のポイント、電子請求書のメリットや導入方法などをわかりやすくご紹介します。
請求書について詳しく知りたい方や、請求業務の効率化に課題を感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。
OUTLINE 読みたい項目からご覧いただけます。
請求書の基礎知識
まずは、請求書の基礎知識として、その概要や必要性、保存期間について確認していきましょう。
請求書とは?
請求書とは、納品した商品・サービスなどの対価を取引先に請求するための文書を指します。
通常、商品やサービスの納品が完了していても、請求書を発行・送付しなければ、その代金が支払われることはありません。
親切な取引先(発注側)であれば請求書の発行を促してくれる場合もありますが、納品後のトラブルを避けるためにも、請求書の作成・送付漏れがないように注意が必要です。
請求書の必要性
じつは、請求書の発行は法律で義務付けられているわけではありません。
しかし、取引が行われた事実の証明、および自社・取引先間の認識違いや金銭トラブルを防止するためにも、請求書の発行は必要だと言えます。
また、請求書には角印(社印)などを捺印することが慣例となっていますが、印鑑の有無で法的な有効性が変わることはありません。ただし、取引先から捺印済の請求書発行を求められるケースが少なくないということは覚えておきましょう。
請求書の保存期間
請求書は企業間で取引が行われたことを証明する「証憑書類」に該当し、一定期間の保存が法律で義務付けられています。
そのため、金銭のやり取りが完了したからといって、独自の判断で破棄することはできません。
条件によって保存期間が異なるケースもありますが、法人の場合は7年間、個人事業主の場合は5年間の保存が基本となります。
なお、請求書の発行日から起算した年数ではなく、その事業年度の確定申告書の提出期限翌日から起算した年数になるため注意が必要です。
また、2023年10月から開始されるインボイス制度(適格請求書等保存方式)では、請求書の発行側・受領側のどちらも7年間保存が必要になります。
請求書の記載項目と書き方のポイント
次に、請求書に記載するべき項目や、書き方のポイントを確認していきましょう。
ここでは、2023年10月開始のインボイス制度で必要な記載項目と、経理処理をスムーズに行うために記載するべき項目を紹介していきます。
適格請求書(インボイス)に必須の記載項目
まずは、インボイス制度開始に伴い、請求書への記載が必須となる項目について確認していきましょう。
- 適格請求書発行事業者の氏名または名称、および登録番号
- 取引年月日(請求日)
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額、および適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
(1)適格請求書発行事業者の氏名または名称、および登録番号
請求書には、発行者の氏名または名称を記載し、「誰からの請求であるか」を明確にする必要があります。
法人の場合は会社名、個人事業主の場合は屋号もしくは氏名を明記しましょう。
また、インボイス制度開始後は、適格請求書発行事業者しか適格請求書を発行することができません。上記に挙げた発行者の氏名または名称を記載するとともに、適格請求書発行事業者の登録番号も併記しましょう。
(2)取引年月日
「いつ行われた取引なのか」を明確にするため、取引年月日の記載も忘れないようにしましょう。
取引年月日は、実際に取引を行った日付を記載します。なお、年表記については西暦でも和暦でも問題ありません。
(3)取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
請求書には、「何を取引したのか」という具体的な取引内容についても記載が必要です。
取引内容に軽減税率の対象品目が含まれる場合には、軽減税率対象品目である旨を記載しておきましょう。
(4)税率ごとに区分して合計した対価の額、および適用税率
インボイス制度開始後、請求書には税率ごと(10%/8%)に区分した合計金額と、それぞれの適用税率を記載する必要があります。
合計金額は、税抜もしくは税込のどちらで表記しても問題ありません。
(5)税率ごとに区分した消費税額等
インボイス制度の開始に伴い、税率ごと(10%/8%)に区分した消費税額の記載も必要になります。
消費税額の端数処理は、税率ごとに1回ずつである点を覚えておきましょう。
(6)書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
「誰宛ての請求書なのか」を明確にするため、交付を受ける事業者(取引先)の氏名または名称を記載しましょう。
敬称として、取引先の社名(もしくは氏名)に「御中」を付けるのが一般的です。
請求書への記載が好ましい項目
次に、請求書への記載が必須ではないものの、商習慣として記載することが好ましい、あるいはスムーズな経理処理のために記載するべき項目とその書き方を見ていきましょう。
- 題目(文書のタイトル)
- 発行日
- 請求書番号
- 支払期限
- 振込先口座
- 振込手数料の負担について
題目(文書のタイトル)
「何の文書なのか」が一目でわかるよう、題目として「請求書」や「御請求書」と記載するのが一般的です。
また、継続して取引が発生する場合には、「〇月分請求書」と記載するケースもあります。
発行日
「いつ発行した請求書なのか」が伝わるよう、請求書の発行日を記載しましょう。
発行日は取引した日や請求書を作成した日ではなく、取引先の締め日に合わせるのが一般的です。
請求書番号
請求書の管理を効率化するために、請求書番号を記載しましょう。
取引先から請求内容についての問い合わせがあった際、スムーズに確認することが可能になります。
支払期限
「いつまでに支払を済ませればよいのか」を明確にするために、支払期限を記載しておきましょう。
支払期限日は、契約内容や取引先の社内規定に従い期日を指定するのが一般的です。
振込先口座
「どの口座に振り込めばよいのか」が伝わるよう、振込先の情報を記載します。
銀行名や支店名、口座名義など、取引先が振り込みに迷うことがないよう、正確に記載しましょう。
振込手数料の負担について
振込手数料をどちらが負担するのかも明記することをおすすめします。
請求書を受領する側(支払い側)が振込手数料を負担するのが一般的です。
注目を集める電子請求書とは?
DXの取り組みが活発化する昨今、電子請求書が注目を集めています。
電子請求書とは、その名の通り電子データとして発行された請求書のことで、後述するさまざまなメリットから、近年導入する企業が増えつつあります。
また、請求書などの帳簿書類は紙での保存が原則とされていますが、電子帳簿保存法の要件を満たすことで、電磁的記録(電子データ)として保存することが認められています。
電子帳簿保存法の基礎知識や2022年改正のポイントについては、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてお読みください。
請求書を電子化するメリット
請求書を電子化する主なメリットとして、以下の4点を挙げることができます。
請求書を電子化するメリット
- オフィス以外でも請求書を発行可能
- 印刷や配送、保管スペースのコストを削減
- 再発行や修正に即座に対応可能
- 管理の負担軽減につながる
では、請求書を電子化することのメリットについて詳しく見ていきましょう。
オフィス以外でも請求書を発行可能
従来の紙の請求書では、印刷した請求書に社印を押した上で取引先へと郵送するのが一般的でした。この場合、請求書の印刷や捺印、封入・封緘(ふうかん)といった作業をオフィスで行う必要があります。
一方、電子請求書であれば、オフィスに縛られることなく請求書の作成や送付を行うことが可能になります。これにより、在宅勤務をはじめとしたテレワーク下でも、請求業務の停滞を防ぐことができるでしょう。
印刷や配送、保管スペースのコストを削減
請求書の電子化は、紙の請求書で発生していた各種コストの削減にもつながります。
電子請求書であれば、紙やインクなどの印刷コストはもちろん、取引先へ郵送するコスト、文書保管のための物理的なスペースが不要になります。
また、紙の請求書の作成や発送、管理業務の負担も軽減されるため、人的コストの削減にも効果が期待できるでしょう。
再発行や修正に即座に対応可能
紙の請求書の場合、取引先への送付後に記載内容の誤りが発見された場合、修正してから再度印刷し、改めて取引先に送付することになります。
そのため、コストが二重にかかってしまうだけでなく、再発行から取引先に届くまでに多くの時間を要します。
一方、電子請求書であれば、万が一請求書にミスがあった場合でも、データを修正して速やかに再発行・送付することが可能です。
管理の負担軽減につながる
請求書を紙ベースで管理している場合、後から請求内容を参照したり、保存期間を過ぎた請求書を廃棄したりする際に、大量の紙書類のなかから該当の文書を探し出す手間が発生してしまいます。
電子請求書であれば、取引先や取引年月日、取引内容などの情報で検索を行い、速やかに文書を参照したり探し出したりすることが可能です。
そのため、管理の負担軽減はもちろん、監査や税務調査時の対応を効率化することができるでしょう。
受け取る側のメリットは?
上記は請求書を発行する側のメリットですが、請求書の電子化はもちろん受け取る側にもメリットをもたらします。
1.必要なときに請求書を受け取れる
従来の紙の請求書の場合、請求書を取引先に郵送する必要があり、発行から受けとりまでに数日要してしまいます。また、届いた請求書に誤りがあった場合は、再発行・再発送してもらう必要があり、請求書を受け取るまでにさらに時間がかかってしまいます。
一方、請求書が電子化されていれば、請求書のデータをダウンロード形式でメールに添付して送信すればいいので、早ければ、発行当日に受け取ることができます。また、万が一誤りがあった場合も、すぐに対応してもらえます。
スムーズな過去書類の参照
従来の紙の請求書の場合、過去書類を参照する際は、ファイリングされた書類の山から自分が見たいものを探し出す必要がありましたが、電子化されることで、請求書をデータとして取り扱うことができるようになるため、検索の作業効率が大幅に改善されます。
電子請求書の保存に関する注意点
電子請求書をデータのまま保存するには、e-文書法と電子帳簿保存法で定められた要件を満たしている必要があります。もしこれらが満たされていない場合、メール等で受け取ったPDFの電子請求書を、プリントアウトして、紙で保存する必要があり、逆に作業効率が悪くなってしまう可能性もあります。
e-文書法 e-文書法とは、請求書も含め、これまで紙媒体での保存が義務付けられていた文書・書類の一部について、電子化したファイル(電磁的記録)で保存することを認める法律です。 請求書は、法律により7年の保存義務期間が定められていたこともあり、紙媒体での保存について、作業効率と経費の両側面で課題になっていましたが、2005年の施行をきっかけに多くの企業が請求書の電子化に踏み切りました。 (e-文書法について詳しく知る:e-文書法の施行について|高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部)
電子帳簿保存法 電子帳簿保存法とは、国税帳簿書類を電子化して保存することを認める法律です。2022年の改正により、電子保存に関する要件が大幅に緩和されました。
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インボイス制度に備えよう
電子請求書に関連する法律として、留意しておきたいのが2023年に開始されるインボイス制度です。 インボイス制度とは、請求書の受け取り側が仕入額控除を受けるためには、従来の請求書に「登録番号」「適用税率」「税率ごとに区分した消費税額等」の項目を追記した「適格請求書」を保存する必要があるという制度です。
もし、インボイス制度がはじまってからも紙媒体のまま請求書の運用をしていると、会計・経理システムに手入力で情報を入力したり、登録番号を目視で照合したりといった手間が発生し、請求書関連の業務負担が非常に大きくなってしまいます。そのため、今のうちに請求書を電子化して、請求書関連業務の負担を軽減しておくことをおすすめします。
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請求書を電子化する方法
次に、請求書を電子化する方法として、以下の2つをご紹介します。
- 電子帳票システムを使用
- PDF化した請求書をメールで送付
それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。
電子帳票システムを使用
請求書を電子化する場合にもっとも一般的な方法が、電子帳票システムの導入です。
電子帳票システムであれば、Web上で請求書を発行し、取引先は専用ページから請求書データを受領することができます。フォーマットを自由に設定できたり、取引先ごとに自動的にデータを仕分けできたりと、請求関連業務を効率化しつつ請求書の電子化を実現することが可能です。
また、タイムスタンプ機能や証跡管理機能によって、改ざんなどの不正防止やガバナンスの強化にもつなげることが可能です。
電子帳票システムを導入するのであれば、電子帳簿保存法やインボイス制度の法的要件を満たすシステムの導入をおすすめします。
PDF化した請求書をメールで送付
簡易的な方法としては、WordやExcelなどで作成した請求書をPDF化してメールで送付する方法もあります。
PDF化せずに送付してしまうと、簡単に内容を書き換えることができてしまいます。改ざんを防ぐためにも、書き換えが困難なPDF形式で送るようにしましょう。
また、法的には請求書への押印不要だとお伝えしましたが、社印が付いた請求書の発行を取引先から求められるケースがあります。
そのような場合は、電子印鑑を利用するか紙の請求書に印刷してからスキャナで電子データ化するなどの対応が必要になります。
請求書の電子化とワークフローシステムの関係性
請求書の電子化によるメリットを最大化したいと考えるならば、ワークフローシステムの導入をおすすめします。
ワークフローシステムとは、社内で行われる各種申請や稟議といった業務手続きを電子化するツールのこと。
次は、請求書の電子化とあわせてワークフローシステムを導入することで得られるメリットを見ていきましょう。
ワークフローについて詳しく知る
業務効率を大幅に改善
ワークフローシステムを導入する主なメリットのひとつに、業務効率の改善を挙げることができます。
請求書の発行前後には、社内での承認フローが発生するケースが少なくありません。
そのような際、ワークフローシステムを用いることで円滑かつ迅速に承認手続きを進めることが可能です。
請求書関連業務以外にも、稟議や申請などのあらゆる社内申請手続きが電子化されることで、業務効率を大幅に改善することができるでしょう。
テレワーク促進・定着に効果的
ワークフローシステムの導入は、テレワークの促進・定着にも効果を発揮します。
先述の通り、請求書を電子化することで、請求書の作成や送付をオフィス以外からも行えるようになります。
しかし、それ以外の業務が電子化されていなければ、紙書類の確認や管理、捺印などのために出社しなければならず、テレワーク促進・定着が妨げられてしまいます。
ワークフローシステムを導入することで、社内で行われるさまざまな業務手続きが電子化され、テレワークを推進・定着しやすくなるでしょう。
全社的なペーパーレス化を促進
ペーパーレス化という観点からも、ワークフローシステムの導入は非常に効果的です。
請求書は企業が取り扱う文書の一部に過ぎません。そのため、請求書を電子化しても、ペーパーレス促進という面で効果は限定的だと言えます。
請求書だけでなく、ワークフローシステムで社内文書の電子化を図ることで、ペーパーレス化を大幅に推進することが可能です。
まとめ
今回は、企業が扱う文書のなかでも請求書に注目し、基礎知識や電子化のメリット・方法についてご紹介しました。
請求書の電子化を図ることで、業務効率化やコスト削減といった効果を得ることができます。
また、請求書とあわせて社内文書のペーパーレス化も進めることで、より多くのメリットを享受することができるでしょう。
今回ご紹介した情報も参考に、文書の電子化・ペーパーレス化に着手してみてはいかがでしょうか。
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