ワークフローはデータベースにもなる!? 見積もりから出荷、納品まで一気通貫で効率化
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ワークフローシステムの中には、特定の申請フォームで入力した情報を、システムで扱っている別の管理情報に転記できるものもあります。この特徴を活用しているのが、エイトレッドの『出荷指示』のワークフローです。
さまざまな部署・メンバーが関わる業務プロセスを効率化し、顧客にもメリットが波及したというワークフローをどのように設計したのかご紹介します。
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システムへの手入力など、ライセンス発行作業の非効率性が課題に
エイトレッドでは、販売しているソフトウェアやクラウドサービスを動作させるためのライセンスキーをお客様に納品することを『出荷』と呼んでいます。
新規に受注したときのほか、契約の更新やユーザーの追加をするときにも、この『出荷』が発生します。
今回ご紹介する『出荷指示』のワークフローは、以下のような流れになります。
この出荷指示業務におけるワークフロー導入以前の課題について、ワークフローの設計に携わった藤沼有紀さん(以下藤沼)は以下のように振り返ります。
主に2つの作業段階で、非効率性が生まれていました。
1つ目は、営業アシスタントがライセンスキーの更新の申し込みを受け付け、専用システムに申し込み内容を入力するプロセスです。手入力のため、品目や数量などの項目にどうしても転記ミスが発生していました。
2つ目は、顧客にライセンスキーを納品するプロセスです。紙媒体のライセンス証明書を郵送していたため、印刷や郵送の手間も掛かっていました
当時はこのような無駄の多いプロセスに負担を感じながらも、紙での運用が続いていました。
ワークフロー内の顧客情報を自動で転記し、入力ミスを解消
ワークフローの設計では、先述した2つのプロセスでの課題をそれぞれ解決できるようにしました。
まず、『出荷指示書』の品目や数量といった項目は、受注時に登録される顧客情報をもとに自動で入力されるようにしました。
また、手入力をしなければいけなかった項目の多くは選択式にして、入力ミスを極力避けられるようにしています。
また、ライセンスキーの納品については、導入いただいた企業様専用のサポートサイトへ自動掲載をするようにして、ライセンスキー発行の案内はメールで自動送付する形としています。
「メールでの納品へ完全移行するのにあわせて、お客様向けの約款や使用許諾を修正する必要も出てきました。
管理部門にとっては大変な作業になったと思いますが、協力を得ながらワークフローの設計を進めることができました」とワークフローの設計に携わった角川雄一(以下角川)は話します。
導入効果を作業時間で可視化し、社内の理解を促した
『出荷指示』のワークフロー化には想定以上に時間が掛かりました。理由は、営業アシスタントや担当営業の理解が得られなかったためです。
『ワークフローを導入してライセンスキーの納品をデジタル化すれば郵送する必要がなくなる』と言われても、どの程度の作業量が減るのかがピンと来ない。
また、ライセンス発行数が少なかった時期もあり、『これくらいの量なら手入力でよいのではないか。デジタル化する意味はあるのか』などの声が上がったこともありました。
導入効果をどう見せるのかが問題でした」と角川は当時を振り返ります。
そこで角川は、一連の業務に携わっていた各担当者に、毎月の出荷件数やトータルの作業時間をヒアリングしました。
その情報をもとに、デジタル化することで期待できる効果を定量的に把握できる資料を作り、社内で説得しました。
事業的にも成長スピードが加速し、出荷作業が増えてきた時期と重なったこともあり、『出荷指示』の業務プロセスを課題として感じ始めた担当者の納得を得ることができたのです。
納期短縮やライセンス紛失リスク解消など、顧客へもメリットが波及
ワークフローの導入により、入力ミスや郵送の手間といった課題が解消されたのはもちろん、サポートセンターでの業務負荷も軽減されたと藤沼は言います。
「以前はお客様がライセンスキーの紙を紛失した際、サポートセンターに問い合わせが来ていましたが、デジタル化した今ではそもそも“紛失”という概念はありません。
仮にセンターに問い合わせがあったとしても、サポートサイトに掲載されている旨を案内するだけで済みます。ライセンス発行の出荷作業の時間だけではなく、全社的な業務効率化に貢献できたと感じています」
ワークフローを導入することでライセンスキーを紛失することがなくなっただけではなく、納品までの時間が圧倒的に短縮され、顧客にとっても大きなメリットとなりました。
さらに、今回設計した『出荷指示』のワークフローは、単に出荷指示業務をデジタル化しただけではありません。
「このワークフローの最大のポイントは、顧客情報データベースと連携することで、見積~受注~出荷~納品という一連の業務プロセスを統合した点にあります。
それぞれ、手動であったり、デジタルであったり、他のシステムに入力しなければいけなかったりと、バラバラの業務プロセスを、一つのシステムに統合、自動化したことにより業務効率を高めました。
一つひとつのプロセスを切り取っても、本当の意味で業務効率化につながるとは限りません。
個々の業務プロセスを統合して見直さないと、無駄の本質を見つけられず、抜本的な解決にならないからです」と藤沼は業務プロセス統合のメリットを語ります。
今回の事例から、業務プロセスの見直しや統合を行い、ワークフローを導入することは、業務における無駄をなくすためのひとつの解決手段といえます。
まずは稟議書のデジタル化などからスタートしてみて、少しずつワークフローの活用範囲を広げていけば、全社で業務の効率化を図り無駄をなくしていくことができるのではないでしょうか。
株式会社エイトレッド 開発部
藤沼有紀/角川雄一
「ワークフロー総研」では、ワークフローをWork(仕事)+Flow(流れ)=「業務プロセス」と定義して、日常業務の課題や顧客の潜在ニーズの視点からワークフローの必要性、重要性を伝えていくために、取材やアンケート調査を元にオンライン上で情報を発信していきます。また、幅広い情報発信を目指すために、専門家や企業とのコラボレーションを進め、広く深くわかりやすい情報を提供してまいります。