これからの働き方を考える

ウィズコロナ・アフターコロナ時代の働き方、IT投資のトレンド徹底解説・前編

ウィズコロナ・アフターコロナ時代の働き方、IT投資のトレンド徹底解説・前編

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大、全国に緊急事態宣言が発出されたのは4月上旬のことでした。それから1カ月が経過したものの、その間企業の働き方に関する動向は、企業発表のニュースを見ると、業種・業界などによってかなり差が開いてきています。

このような状況から、ワークフロー総研では新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大前後で、企業のIT投資動向や、投資する具体的な技術・ツールに変化があったかなどを、アイ・ティ・アール(以下、ITR) シニア・アナリスト三浦氏にお話を伺いました。

本記事では前編・後編にわたって、『コロナ禍の企業IT動向に関する影響調査』の調査結果や今後のIT投資トレンド予測についてお届けします。

前編では企業のIT投資全体に関する態度、意思決定の変化について調査結果と分析を見ていきます。

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ウィズコロナ・アフターコロナ時代の働き方、IT投資のトレンド徹底解説・後編

OUTLINE 読みたい項目からご覧いただけます。

ワークフローはこんなに進化!最新のワークフローシステムが解決できる課題とは?

企業のIT投資意欲は新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を受けて、増大

まず、ITRが毎年発行している『IT投資動向調査』から、コロナ禍以前の企業の投資動向について確認してみましょう。

投資動向の上位に位置していたのは「全社的なデジタルビジネス戦略の策定」、「基幹系システムのクラウド化の実践」でした。

「マルチクラウド環境の採用」、「レガシーシステムの撤廃」も重要度指数としては中位に入っていることから、業務アプリケーションだけでなく、企業の根幹を支えるシステムにも手を入れようとする意向が読み取れます。

「AI/IoT技術の実用化」「5Gネットワーク活用方針の策定」「ドローン、物理ロボットの実用化」といった最新技術をベースとした事業計画策定へ関心を寄せる企業も増えてきています。

「デジタル人材の新規採用」、「ベンダーとの共創型プロジェクトの実施」、「スタートアップ/ベンチャー企業の直接活用」も同程度の重要度指数を示し、社内外で最新技術の活用を推進しようとする意欲が伺えるような結果でした。

それでは次に、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大後に実施した『緊急調査』の結果を見てみましょう。

こちらは業界ごとにIT戦略遂行に対する意向を調べた結果です。業界を問わず「大いに加速すると思う」という層がおよそ30%を占め、「やや加速すると思う」と合わせるとほぼすべての業界で70%を超える結果が示されました。この結果について三浦氏は、次のように述べています。

「この調査結果で『大いに加速すると思う』、『やや加速すると思う』と回答した割合は、サービス業界を除いてすべての業界で70%を超えています。

経済活動が停滞している中ではありますが、今後のビジネス活動においてIT戦略の重要性は増していると言えます」(三浦氏)

特に公共機関は80%に近い組織がIT戦略の推進を検討しており、金融・保険と合わせて社会インフラに直結する業界ではよりIT戦略に対する取り組みの意欲が高くなっていることが分かります。

過去、東日本大震災やMERS流行の際などにBCP(事業継続計画)を策定していた企業でも、今回見直しを迫られています。

IT戦略を多分に組み込んだBCP策定を検討されている企業も少なくないのではないでしょうか。

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IT投資戦略のテーマは、従業員の働き方改革が再燃

IT投資のテーマにも変化がありました。上図は、新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大後、IT投資領域として優先度が上がったテーマを企業規模ごとに示しています。

ここから、コロナ禍前後での投資内容の変化が分かります。

『緊急調査』で優先順位が急上昇している「従業員の働き方改革」は、毎年のIT投資動向調査の傾向では、東京オリンピック期間での通勤困難なケースを想定したテレワークのトライアルなど、一定の準備は整ったとの認識からか、戦略としての重要度は想定的に低下傾向にあったと三浦氏は言います。

しかし今回は企業規模に関わらず、IT戦略の中で最も見直されたテーマになりました。

「このコロナ禍で半強制的かつ長期間テレワークを実施し、過去策定したテレワーク制度やインフラ等の準備では、ほぼ全員がテレワークになるという急激な働き方の変化に対応できないということが、どの企業でも実感されているところかと思います」と三浦氏。

「実際にテレワークを全社的に実施してみて、課題があまり出なかったという企業は多くはないはずです。

不十分と感じられた自宅のネットワークやPC環境、社内ネットワークへの接続帯域やセキュリティ、テレワークでは遂行できなかった業務などの課題に対して企業はIT投資計画を見直し、新規投資または追加で投資を行うということが予想されます」(三浦氏)

企業規模で結果に違いが出たのは、「事業継続計画や災害対策の強化」、「システムの性能や信頼性の向上」、「経営における意思決定の迅速化」の3点です。

「事業継続計画や災害対策の強化」、「システムの性能や信頼性の向上」は5,000人以上の企業で優先度が高く、有事の際の円滑な事業継続への関心が表れていると言えるでしょう。

他方300人以下の企業では「経営における意思決定の迅速化」の項目において、全体平均を上回る優先度の上昇傾向が見られました。企業の規模によってコロナ禍において感じた課題と、取り組みの優先度に違いが見られる結果となりました。

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デジタル技術の活用目的は“コラボレーション/コミュニケーション”

それでは、企業は具体的にどういった技術活用を目指して投資を検討しているのでしょうか。下図は、従業員エンパワメント領域に関心が集中していることを示しています。

「最も関心を集めた『コミュニケーション/コラボレーションの高度化』から、情報共有や意思決定などに関わるワークフローに課題を感じている企業が多いのではないでしょうか。

『業務の自動化』と『意思決定の迅速化・高度化』も選択率が比較的高くなっており、オフィスと自宅で業務フローが分断する課題が想定されます。

簡単な例では、取引先からのFAX受信が組み込まれた業務があげられます。FAXをOCRでテキストデータ化し、宛先の従業員のメールアドレスへFAX画像と共にメール送信することができれば、この分断が解決できますよね。

また、テレワーク環境整備のためのPC購入申請なども、承認のための印鑑が必要など、迅速な意思決定の妨げになったのではないでしょうか。

オフィスで働くのと変わらないスピード、質で仕事を行うための技術活用は、企業にとって重要度も緊急度も高いと言えるでしょう。単に情報のやりとりをするだけでなく、より複雑で高度な情報の認知・判断を支援する技術への期待が垣間見えます」(三浦氏)

冒頭述べた通り、例年のIT投資動向調査では上図の「オペレーション最適化」「製品・サービスの競争力向上」に関連する、最新技術への投資関心が高かった結果が出ていましたが、コロナ禍で確実に変化を受けていることが分かりました。

今後緊急調査結果の通りに投資が進められるとすると、業種・業界を問わず、従来の仕事の仕方は変わるようになるでしょう。

特にコミュニケーション分野では「対面、オフィス、紙書類、電話、メール」だったのが「チャット、ビデオ会議、オンライン上のプラットフォーム、電子化されたドキュメント、必要があればオフィスや対面」というように、コミュニケーションをとる手段と場の優先順位が変わることが予想されます。

すでに、オンライン上で仕事を進めてみると、オフィスにいるよりも成果を出せるようになったという人が増えたという声を、ちらほら耳にするようになりました。

コミュニケーション/コラボレーション領域へのIT投資は柔軟な働き方をもたらし、コロナ禍を乗り切るだけでなく、コロナ禍以前から企業が抱えていた働き方の課題解消も期待できます。

ここまでの結果を通して、企業のIT投資意欲はコロナ禍を受けて確実に、そして大きく高まりを見せていることが明らかになりました。テレワークを本格運用してみた反省からか、働き方改革へ注力すると回答した企業数も再度増加傾向が見られます。

また、コミュニケーション/コラボレーションといった、オフィスで働くのと変わらない意思疎通、意思決定を支援するIT技術へのニーズの高まりが見えてきました。

後編では、今後企業は、どれくらいの時期でどういった技術・ITツールへ投資を検討しているのか、引き続き三浦氏にお話を伺います。

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ウィズコロナ・アフターコロナ時代の働き方、IT投資のトレンド徹底解説・後編

ワークフローはこんなに進化!最新のワークフローシステムが解決できる課題とは?

<解説者プロフィール>

三浦 竜樹氏

株式会社アイ・ティ・アール シニア・アナリスト。 広告代理店にて、ITベンダーのマーケティング・プラン策定、広告戦略などに携わる。2001年4月より現職。

これまでに、コミュニケーション/コラボレーション基盤の刷新、ワークスタイル変革、仮想デスクトップ導入支援、Web/EC基盤構築・刷新などのコンサルティングに携わる。近年は主に、企業におけるクライアント運用管理(仮想化/DaaS)、Web/EC戦略策定、マーケティングオートメーションやCDP、SAF/CRMなどのマーケティング、SalesTech分野、および主にこれらの業務領域での音声認識などのAIの適用に関するアドバイスやコンサルティングを提供している。

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※本記事で取り上げている調査レポートの概要は次の通りです。

『国内IT投資動向調査報告書2020』

https://www.itr.co.jp/report/itinvestment/S20000100.html
ITRが毎年実施している調査報告書の2019年12月に発行されたもの。調査時期は2019年8~9月、有効回答数2,826件。文中では『IT投資動向調査』と表記します。

『コロナ禍の企業IT動向に関する影響調査』

https://www.itr.co.jp/special/covid_19/index.html#COVID-19_01ITRが実施した、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大後に実施した緊急調査レポート。調査時期は2020年4月24日~27日、同年5月12日に発行、有効回答数1,370件。文中では『緊急調査』と表記します。

ワークフロー総研 編集部
この記事を書いた人 ワークフロー総研 編集部

「ワークフロー総研」では、ワークフローをWork(仕事)+Flow(流れ)=「業務プロセス」と定義して、日常業務の課題や顧客の潜在ニーズの視点からワークフローの必要性、重要性を伝えていくために、取材やアンケート調査を元にオンライン上で情報を発信していきます。また、幅広い情報発信を目指すために、専門家や企業とのコラボレーションを進め、広く深くわかりやすい情報を提供してまいります。

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