これからの働き方を考える

社内のナレッジアクセスのスピードが経営スピードを決定する チャットボットとワークフローのコラボが紡ぎ出す未来

社内のナレッジアクセスのスピードが経営スピードを決定する チャットボットとワークフローのコラボが紡ぎ出す未来

本記事は、社内向けAIチャットボットサービス「hitTO(ヒット)」を提供する株式会社ジェナの代表取締役 Co-CEO五十嵐 智博氏と、ワークフロー総研 所長 岡本の対談をまとめたものです。
社内の情報整理やアクセスのしやすさがますます重要になるなか、テレワークとナレッジマネジメントは経営にどう影響するか。チャットボットとワークフローは親和性が高いという議論とともに、コラボレーションした先にはどんな未来が実現できるか、などを語りました。

<対談者プロフィール>

五十嵐 智博 氏

五十嵐 智博 氏

株式会社ジェナ 代表取締役 Co-CEO。セキュリティ系ソフトウェアベンダーの事業責任者を経て現職。2017年にリリースした社内向け(BtoE)に特化したAIチャットボット「hitTO」で新しい市場を開拓し、大手企業を中心に生産性向上や働き方改革の支援を担う。

ワークフロー総研 所長
岡本 康広

ワークフローシステムを開発・提供するエイトレッドの代表取締役社長も務める。
ワークフローを出発点とした働き方の見直しが意思決定の迅速化、組織の生産性向上へ貢献するという思いからワークフローの普及を目指し2020年4月、ワークフロー総研を設立して現職。エイトレッド代表としての知見も交えながら、コラムの執筆や社外とのコラボレーションに積極的に取り組んでいる。

チャットボットでナレッジを体系化し、社内の問い合わせ対応を自動化

岡本:チャットボットは社内向けのほか、ECやカスタマーサポートなどいくつかの用途があります。まず、なぜ五十嵐さんは社内向けに注力しようと思ったのか教えてください。

五十嵐:「hitTO」のサービスリリースは2017年5月ですが、当初は社内向けだけではなく、どんな用途でも使えるプラットフォームとしてリリースしました。ただ、提案していく中で明確な価値を提供でき、ニーズを感じたのが社内向けだったのです。例えば、バックオフィス部門への社員からの電話やメールの問い合わせが多い、対応が属人化している、会社全体でナレッジマネジメントのサイクルが回っていないなど、お客様から教えていただくような形で、リリースから4カ月ほどでサービスの方向性を社内向けに集中するようになりました。

五十嵐 智博 氏 1枚目画像

岡本:特に大きなきっかけはありましたか?

五十嵐:2年目からは次第に継続いただけるクライアント様が増えてきました。「hitTO」ではプロジェクトの開始にあたって、名前を付けたりアイコンを決めるなどチャットボットのキャラクター設定をするのですが、方向性が間違っていないと感じたのは、「答えられないと悔しい」「キャラクターの種類を増やしたい」「キャラクターを出し分けしたい」など、チャットボットを育てることに熱中されるお客様が増えてきたことですね。

岡本:社内向けだからこそ、自由度が高く設計できることが熱中やこだわりを生んでいるのかもしれませんね。では少しずつ本題に入らせてください。いままで対面でできていた社内への情報アクセスについて、テレワークによりハードルが高くなったと感じます。この点について、クライアント様の声などはいかがでしょうか。

五十嵐:注目いただく機会が多くなっていると感じています。これまでは、気になることは人事総務などの管理部門に直接聞いたり内線で聞いたり、などが行われていましたが、テレワークによって出社率が下がったことで、聞けないケースも増えてきました。

岡本:その対策としてチャットボットに期待が高まっているということですね。

五十嵐:はい。チャットボットを導入いただいた企業様の例では、時差出勤やテレワークを「来月から行う」という意思決定の後押しになったなどの声も聞いています。

岡本:チャットボットの環境があるから踏み切れる、という判断ですね。その点はワークフローも期待をいただいていると実感します。

五十嵐:やはりチャットボットとワークフローは親和性が高いですよね。共通項として、情報アクセスの不備を課題に感じるお客様が増えているからだと思います。

岡本:いち企業様の、チャットボットの質問数や回答数に変化はありましたか?

五十嵐:上昇傾向ですね。緊急事態宣言中に稼働を控えていた業種の中にはストップしていた企業様もありますが、通常稼働している場合の活用量は上がっています。

岡本:質問内容の変化に関してはいかがでしたか?

五十嵐:勤務体系が変わったこともあり、就業の開始や終了といった勤怠を中心とした申請関連が多いですね。如実に増えています。

岡本:テレワークともなりますと、イレギュラーも多いですからね。本末転倒な話なのですが、「テレワークするため」の申請を「紙」でしないといけないということをワークフロー関連で私も聞いています。

五十嵐:出社率を抑えるために、出勤可否の承認フローを設けているとも聞きますね。厳しいところは本部長決裁がないとダメとか。「こういう場合はどうすればいい?」といったコロナ絡みの問い合わせも増えています。ほかにも、チャットボットだからこそ質問できる、といった内容もあります。

岡本:どんな内容ですか?

五十嵐:具体的には給与や評価など、人事労務に関わる他人には相談しづらい内容です。チャットボットだと心理的ハードルが下がって聞きやすいんですよね。

岡本:チャットボットもワークフローと同様、コミュニケーションをデジタル化しているようなものですよね。システムだから聞きやすいという点はよく似ています。ワークフローも、上司に面と向かって「休ませてほしい」と言いづらい有給休暇申請などをシレッと挙げられるというメリットがあります。変なコミュニケ―ションを取らなくてもいいというか。コミュニケーションは大切ですが、取らなくてもいいコミュニケーションもたくさんありますので。チャットボットは似ている側面があり、さらに幅広いツールだと感じています。

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五十嵐:そうですね。身近なところだと産休などの休暇関連、マイナスなものだととハラスメント系などが聞かれています。本来は窓口に相談するのがベストな相談ですが、直接的には言いづらい内容です。チャットボットが導入されることで、今まで見えていなかった相談が「こんなに多いのか」と見えてくる部分も増えているようです。

岡本:問題点も発見できますし、ログで管理できることに価値がありますよね。御社のクライアントで、ログ分析によって改善できたという声はありますか?

五十嵐:チャットボットの回答後に「お役に立ちましたか?」と簡易アンケートが出せるので、その如何によって改善点がわかります。答えが「いいえ」であれば回答が古いのか、より親切な回答が必要だったのか、などが見えてきます。

岡本:見えづらい改善点をログから想定できるということですね。

五十嵐:あとは、チャットボットにこう回答させたいので、人事部と総務部で一緒に回答を作りましょう、など、部署を横断してナレッジを集約するという新しいコミュニケーションを生む作用もあります。

岡本:社内向けのチャットボットと聞くと、問い合わせを自動化して、省力化やコストカットなど無駄をなくすイメージが多いと思います。しかし、それ以外の新たなメリットも見えてきますね。その部分もワークフローと共通しています。

五十嵐:今まで見えなかったことが解決できるようになったといえることが大きな価値だと思います。あとは深夜など、業務時間外だからこそ拾える声もあり、新たな可能性を感じますね。

岡本:出てこなかった従業員の本音をしっかり拾え、サポートできるということですか。そういった面で人事部や総務部などが施策を打てるツールになっているんですね。

五十嵐:バックオフィスと現場の距離感を縮めたり、バックオフィスの発信力を高めたり、といったことを後押しできるかなと。サービスの支援体制としても、いかに導入企業様内で浸透できるか、活用を促進できるかを重視しています。例えば、チャットボットのキャラクターを10種類用意したり、月ごとに季節感を出したテイストに変えていただいたりと、より擬人化させることでユーザーのみなさんにより愛着を持っていただけるように努めています。

岡本:バックオフィスが主体的に発信しており、全社を巻き込める会社はそれに引っ張られるよう営業やマーケティングも強くなっていく印象です。会社全体の力が向上しますよね。

五十嵐:やりがいも感じていただけているようで、今までの人事労務の仕事で、チャットボット関連が一番楽しいという声もあり、非常にうれしく感じています。

岡本:バックオフィス関連でも、ワークフローとの親和性や考え方の近さを感じます。フローで流れていくものと、一対一の問い合わせという面では違いますが、集積される情報から、そこから生まれるつながりやアクションを起こせますからね。

知りたいことが気軽に聞ける環境を後押しする

岡本:コロナ禍を経てチャットボットサービスのニーズの変化、また問い合わせ数の変化などはありましたか?

五十嵐:問い合わせ数は上昇傾向にあり、緊急事態宣言解除後すぐの6~7月は推移平均の150~200%となりました。ニーズが顕在化して優先度が上がった印象です。環境整備系の優先順位は、営業やマーケティングの次で3番手になりがちだと思うのですが、コロナを通じてそこに改めて向き合う、中長期目線で考えるきっかけになったのだと思います。

岡本:3番手、確かにワークフローでもありがちですね。

五十嵐:もうひとつが、以前は問い合わせ対応を外部に委託していたものを、コストの最適化の観点からチャットボットで内製化するなどの動きが出てきました。テレワークが恒常化するなかで、内部で対応する方向になっています。

岡本:ワークフローも、もともと働き方改革があり、この課題がテレワークで浮き彫りになる中で、稟議と申請の効率化やスピードアップを求めてニーズが増しています。

五十嵐:環境の変化により、時代が追いついてきた部分もありますよね。

岡本:業務フローの見直しもそうですし、見方がより広がって、入力や調査して回答するという作業的な部分は自動化し、頭を使って経営に貢献するバックオフィスが求められてくると考えています。ワークフローは攻めるツールであり、社内チャットボットもその最たるものだと思います。

五十嵐:戦略人事、戦略総務ですよね。実現したいことがかなり近いと思います。

岡本:テレワークにより、今年の4月に入社した新卒がなかなか馴染めない、社内のことがわからない、というナレッジの問題でパフォーマンスを発揮できていない事例も聞いています。この点においてはどうお考えですか?

五十嵐:わからないことによって不安になることは多いですよね。一方、その不安が解消されれば会社への理解が深まり、パフォーマンスやエンゲージメントも高まります。その点では、知りたいことが気軽に聞ける環境をチャットボットで後押しすることで、貢献できるのでは、と思います。

大げさかもしれませんが、チャットボットは企業文化にも影響を与えられると思っています。コロナのような局面は、企業文化を見つめ直すきっかけになると思うんですね。ナレッジを体系化して活用できるようにすることは価値の高い仕事ですが、セットでアクセスしやすい、活用しやすい環境を整えることで、全社的に体系化への意識を強化していけると考えています。

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岡本:アクセスのしやすさは重要ですよね。

五十嵐:そういった環境が、仕組み化など質の高い仕事をしていこうというモチベーションや、現場で自己解決していこうというカルチャーにつながるのかなと。また、体系化が進むことで、新卒や中途入社のような方でも早く仕事に慣れることができますし、現場の仕事の効率化も進むと思います。

岡本:仕組み化への意識が高い文化であれば、取り組みの数も増えますし、相乗効果も生まれますよね。

五十嵐:体系化することのモチベーションの源泉は、自分がいい仕事をしたいという気持ち以上に、使ってもらって役に立った、助かったという感謝のフィードバックの方が大きいと思います。その第一段階が使ってもらえることであり、だからこそアクセスできることは大事ですし、浸透しやすくすることを含めてのチャットボットのユーザー体験なのかなと思いますね。

岡本:感謝のフィードバック。非常にポジティブなコミュニケーションでいいですね。

五十嵐:今までは電話で聞いてきていた方が、チャットボットに意識が向くようになるだけでも、自分の取り組みが影響を与えているという実感や達成感を感じます。そうなれば、もっとよりよいものにしていこうと思うはずです。その好循環サイクルを回すきっかけになれると思います。このサイクルにはワークフローの整備も入ってくるでしょうし。

岡本:ちなみに、チャットボットはAIの学習能力を持っていると思うのですが、だれかが質問しない限りはその情報を拡散することはしませんか?

五十嵐:基本的にはプッシュでチャットボットから何かを発信することはないですね。ただ中長期的なビジョンでは、アクションするような概念も議論しています。聞く人によって最適な回答を出し分けるようになるなど、各人が自分のアシスタントを抱えられるようなシステムですね。技術的にはチャレンジできる範囲だと思っています。

岡本:将来的には人事や総務など、経営側がどういう情報を吸い上げたいか、社員がどう考えているのかのバロメーター的な要素を拾えるようになるのでしょうか。私は目に見えない隠れた改善案や不満を知ることが重要だと思っていて、そういった情報の吸い上げなどに可能性を感じています。

五十嵐:一般的なナレッジは、ネットで検索すればいいと思うのですが、社内のことは当然ながらそれでは分かりようがありません。この社内のナレッジをどれだけ集めて還元できるのかが、私たちの中長期なビジョンであり、残り続けるコンセプトの1つだと思います。今後まだまだAIと連携しているメリットは大きくなっていきますので、どんどん改良していきたいですね。

岡本:HR系のベネフィットとしては、新しい分野になると期待しています。

五十嵐:人事部様との相性はとてもいいですね。会社全体を中長期でどうしていこうとか、従業員を元気にするなど、抽象的ですが重要な課題と向き合う部署ですから、全社を巻き込むチャットボットのプロジェクトに関しても共感いただくことは多いですね。

岡本:人事部の取り組みが、経営サイドから評価されたという事例はありますか?

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五十嵐:はい。チャットボットのプロジェクトリーダーがご昇進されたという例があります。人事や労務系の問い合わせ自動化からスタートし、バックオフィス領域でどんどん活用業務を拡げていったケースです。チャットボットの導入は全社への波及効果をアピールしやすいですし、経営層の方もチャットボットを使うようになるわけで、効果的な取り組みだと評価されたということです。

岡本:経営者層が使うようになると、話は早いですね。

五十嵐:トップ層の方も2タイプがいらっしゃり、ひとつは現場担当者に電話などで積極的に質問する方。もうひとつは、トップだからこそ簡単な質問をするのが恥ずかしいという方です。いまさら聞けないから、チャットボットがありがたいということなんですね。

岡本:全社への波及の面では、ワークフローでも似たような事例があります。社内でDXを進めるにあたり、何を改善するかというときに、全社に横断して効果が明らかになり、分かりやすいものから変えるべきだということで、であれば稟議書であると。紙からデジタルになることで、コスト、時間、制度などを全社含めて改善できるワークフローがいいという流れですね。

五十嵐:ユーザーが全社にわたるというところは共通点ですね。

岡本:全社横断する管理システムはなかなかないのですが、提供しようとしているものも似ていますし、共通点が多いですね。

最大のベネフィットは自己解決のカルチャー作りを後押しすること

岡本:私は、ワークフローは社内の意思決定の集積、ナレッジの宝庫、集合知であると考えています。チャットボットとワークフローがコラボレーションすることで、どのような力が生まれるとお考えですか?

私自身は、経営への貢献度がより上がり、バックオフィスが主人公になれるというところだと考えています。たとえば、ワークフローの集合知として知見を付加するときに、社内ナレッジも自己判断の目安にできるという意味での、支援ツールがチャットボットであるかなと思います。

五十嵐:私もイメージはその通りですね。稟議を上げたいけど上げ方がわからないときに、チャットボットで書類の種類や書き方のルールを確認するとか。発展系としてはワークフローで溜まった稟議起案時の注意点やポイントなどを回答するなどもあるかと思います。

「稟議はここからだよ」という注意事項の案内や、「過去にはこういうことがあったよ」「こっちも見てみたら」ということで参考にできるなど、蓄積されたナレッジへのインターフェイスとしてチャットボットを介するなど、つなぎ役になれるのがチャットボットのいいところかなと思っています。

岡本:情報が溜まっているだけではなく、必要な時に出てきて使えるというのが大事ですよね。参照先がしっかりしていれば自発的に取り組みができ、稟議の質も上がりますし。

五十嵐:整理されればされるほど、意思決定のスピードも質も上がりますよね。ワークフローとチャットボットを活用し合うことで、仕事のクオリティを上げることに役立つと思います。

岡本:では、最後に、五十嵐さんが自社のサービスをお客様に提供するベネフィットをひと言で伝えるとしたら何でしょうか。

五十嵐:「自己解決のカルチャー作り」を後押しすることだと思います。チャットボットと”一緒に働く”という新しいユーザー体験や、ナレッジマネジメントのサイクルがしっかり回る仕組みが全社的に根付くことは、企業文化を変えるきっかけになると考えています。

岡本:とてもわかりやすい表現ですね。主体性を持ってもらえるという観点となると、そこに自己解決できる従業員を増やせるという価値があり、教育としても素晴らしいですね。今日はありがとうございました。

集合写真
ワークフロー総研 編集部
この記事を書いた人 ワークフロー総研 編集部

「ワークフロー総研」では、ワークフローをWork(仕事)+Flow(流れ)=「業務プロセス」と定義して、日常業務の課題や顧客の潜在ニーズの視点からワークフローの必要性、重要性を伝えていくために、取材やアンケート調査を元にオンライン上で情報を発信していきます。また、幅広い情報発信を目指すために、専門家や企業とのコラボレーションを進め、広く深くわかりやすい情報を提供してまいります。

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