建設DXとは?建設業界が抱える課題や注目のデジタル技術、成功事例を紹介!
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DX推進の機運が高まる昨今ですが、とりわけDXの推進が急務とされている業界のひとつに建設業界が挙げられます。
そこで今回の記事では「なぜ建設DXが急務なのか」「建設DXにはどのようなものがあるか」「建設DXは何からはじめればいいのか」など、建設DXに関する基礎知識や導入事例について解説していきます。
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・建設業界にお勤めの方
・建設DXの進め方を知りたい方
・紙業務のデジタル化を検討されている方
建設業界が抱える課題

建設DXが何かを説明する前に、まずは現在の建設業界が抱える課題について整理しておきましょう。
1.人材不足
建設業界が抱える課題としてまず挙げられるのは人材不足です。
総務省が公開している「労働力調査(基本集計) 2024年(令和6年)平均結果」によれば、2024年の建設業の就業者数は477万人で、前年から6万人の減少、ピーク時である平成9年の685万人からは200万人以上の減少となっています。
また、就業者の年齢階級を見てみると、2024年の建設業の就業者数のうち37%(約175万人)を55歳以上が締めているのに対し、
29歳以下の就業者数は約56万人(全就業者のうち約12%)なのに対し、55歳以上の就業者数は約175万人(全就業者のうち約37%)となっており、29歳以下の割合はたった12%(約56万人)しかなく、全産業の平均が、55歳以上32.3%、29歳以下が16.8%であることを鑑みても、ほかの業界と比べて著しく高齢化が進行していることがわかります。
これは、労働人口の減少だけではなく、伝統的な建築技法を次の世代へつなぐことができないなど、技術継承の観点からも深刻な課題であると言えます。
2.働き方改革
建設業界における2つ目の課題は働き方改革です。
前述の報告によると、2024年における建設業従事者の平均年間就業時間は、1,995時間となり、全産業の平均1,805時間と比較して約1割多くなりました。
また、年間の平均就業日数についても、全産業の平均が231日であるのに対し、建設業が246日であることから、建設業に従事する者が恒常的に長時間労働の過酷な環境にさらされていることがわかります。
建設業においては、2019年に施行された働き方改革関連法における特例処置(時間外労働の月上限45時間に対して、5年の猶予期間が与えられた)が設けられていましたが、2024年4月からは他産業と同様に労働時間(残業時間)の上限が適用されています。このことからも、建設業界は今、働き方を抜本的に見直す必要性に迫られています。
3.低い生産性
建設業界における3つ目の課題は低い生産性です。
建設ハンドブック2021によると、2019年の付加価値労働生産性において、建設業は2872.9円/人・時間となり、全産業平均の5788.7円/人・時間を大きく下回る結果となりました。
現場ごとに環境が異なるため業務や作業の標準化が難しいほか、1で説明したような人材不足が原因で適切なリソースを配置することができない、慢性的な長時間労働で作業効率が低下してしまう、手作業が多く存在しているなどさまざまな要因が挙げられています。
4.対面主義
現場に赴かなくてはならない、連絡体制の構築が難しい、作業指示書や図面を共有しなければならないなどさまざまな事情により、建設業界では対面主義が根強く残っています。
総務省より発表された「令和5年 通信利用動向調査報告書」によれば、2023年の建設業におけるテレワーク導入状況は53.6%となっています。
総務省より発表された「令和5年 通信利用動向調査報告書」によれば、建設業におけるテレワーク導入状況は2021年に57.9%、2022年に63.6%と、コロナ禍においてはテレワークを導入する企業が増加傾向でした。しかし、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が「5類」に引き下げられるなど、アフターコロナへと移行しはじめた2023年には、建設業におけるテレワーク導入状況が53.6%となり、前年から約10ポイントも減少しています。
建設DXとは?

そもそもDXとは、2018年に経済産業省が公表した「DX推進ガイドラインVer.10」によると 「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。
つまり建設DXとは、建設業界にデジタル技術を取り入れることで、前述にあるような課題を解決し、業務や組織に変革をもたらすことを指します。
では、建設DXに取り組むことのメリットや用いられている技術、建設DX推進に向けた国の取り組みを見ていきましょう。
建設DXに取り組むメリット
建設DXに取り組むことで、以下のようなメリットが期待できます。
建設DXに取り組むメリット
- 生産性の向上
- 働き方改革の促進
- ナレッジの共有
それぞれ詳しく確認していきましょう。
生産性の向上
建設DXに取り組むことで、生産性の向上が見込めます。
先述したように、生産性の低迷が課題となっていることに加え、それを補うための人材も不足している状況です。
後述するようなデジタル技術を活用して業務効率化を図ることで、労働生産性の向上および労働力不足の解消につなげることができるでしょう。
働き方改革の促進
建設DXの取り組みは、働き方改革の促進という面でも効果を発揮します。
デジタル技術を活用して労働生産性が向上すれば、建設業界で恒常化している長時間労働の是正にもつながるでしょう。
また、事務手続きなどのデジタル化が進めば、バックオフィス部門のテレワーク導入・定着にも効果が期待できます。
ナレッジの共有
建設DXの取り組みは、属人化しがちな経験や技術といったナレッジの共有にも有効です。
先述の通り、建設業は就業者の高齢化が深刻であることに加え、職人の技術や経験が属人的であることから、技術継承が大きな課題となっています。
デジタル技術を活用し、熟練の職人が持つ技術のデータ化・見える化を図ることで、共有可能なナレッジとして蓄積・継承していくことが可能になるかもしれません。
建設DXで用いられるデジタル技術
それでは、建設DXで用いられる具体的なデジタル技術についてみてみましょう。
AI(人工知能)
AI(人工知能)とは人間の知能をコンピュータによって再現する技術のことで、建設DXにおいて重要視されている技術のひとつです。
たとえば、建設現場の画像や映像をAIで分析して進捗状況を可視化したり、建築物の構造設計の安全性を判定したり、職人の技術を解析してデータ化したりといったAI活用が進められています。
クラウド
クラウドとは、インターネットなどのネットワーク経由で各種サービスを提供する形態・技術を指します。
クラウドサービスを活用することで、現場とバックオフィスの手続きや図面・資料の共有などを遠隔地でもシームレスに行うことが可能になります。
ドローン
ドローンとは無線で遠隔操作される無人の飛行物体のことで、主に測量の際に効果を発揮します。
たとえば、人手で行えば膨大な日数を要する数百万地点の測量データの取得も、ドローンであれば15分ほどで取得できます。
また、高所や斜面など危険が伴う確認作業についても、現場で目視する必要がなくなるため、従業員の安全を確保することができます。
ICT建機
ICT建機とは、情報通信技術を取り入れた重機を指します。重機のコントロールや操作のガイダンスを位置検測装置で入手したデータをもとに自動で行います。
従来、オペレータの経験や技量に依存する分野でしたが、ICT建機を活用することで、属人化が解消され、工事全体の効率化や品質保持につながります。
BIM/CIM
BIM/CIMとは、計画・調査・設計の段階から3次元モデルを利用した情報共有を行うことにより、建設における生産管理を効率化させる取り組みを指します。
BIMが建築領域、CIMが土木領域で主に活用されています。
BIM/CIMを活用することにより、ミスや手戻りの大幅な減少、単純作業の軽減、工程短縮等の施工現場の安全性向上などの効果が見込まれます。
国の取り組み
次は、上記のようなデジタル技術を普及させるために国がどのような取り組みを行っているのか見てみましょう。
i-Construction
「i-Construction」とは、2016年に建設現場の生産性向上を目標に国土交通省が主導で行うプロジェクトです。
「ICTの全面的な活用」「規格の標準化」「施行時期の標準化」の3つの施策が柱として掲げられました。
なかでも「ICTの全面的な活用」については、「ICT導入協議会」の設置や、各種容量の策定、ICT建設機械等認定制度の導入など重点的に取り組まれています。
BIM/CIM原則適⽤
2020年4月国土交通省より「2023年までに小規模を除く全ての公共事業にBIM/CIMを原則適応」との発表がありました。
もともと、2020年2月開催の「BIM/CIM推進委員会」第3回会合時には2025年までの目標が掲げられていましたが、それを2年短縮するものとなりました。
【録画配信(無料)】建設DXの推進に役立つワークフローシステムとは?

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建設DX最初1歩はワークフローシステム

さてここまで、建設業界が抱える課題やそれらを解決するためのデジタル技術、建設DXに関する国の動きなどを見て、建設DXの必要性についておわかりいただけたと思います。
しかし、DXの必要性はわかっていても、「いきなり高度なデジタル技術を取り入れることに不安がある」「もっと簡単なことからはじめたい」という人たちもいるのではないでしょうか。
そこで、建設DXの最初の1歩としておすすめしたいのがワークフローシステムです。
ワークフローシステムとは、社内で行われる稟議・申請手続きを電子化するシステムです。
導入することで、さまざまな効果を得ることができます。
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ワークフローシステムが建設DXに効果的な理由
それでは、ワークフローシステムが建設DXに役立つ理由をいくつかご紹介します。
1.業務効率化
ワークフローシステムを導入することによる効果として最初に挙げられるのがペーパーレス促進による業務効率化です。
手続きそのものを電子化できるため、書類の作成や検索、保管だけではなく、申請や承認、回付といった一連の業務を大幅に改善することができます。
2.働き方改革の促進
ワークフローシステムを導入することで、オンライン上で作業指示書や図面の共有が可能となるため、現場へ赴く必要がなくなり、テレワークなどの柔軟な働き方の実現が可能になります。
もちろん、メールやビジネスチャットを利用してこれらを共有することも可能ですが、過去の内容を時系列で確認するのが難しかったり、確認作業を順番に回すことができないといったデメリットがあります。
一方ワークフローシステムであれば、確認のルートを柔軟に設定することができるので、場所を選ばず作業指示書や図面を指定の順番で回付することも可能になります。
3.DX推進の基盤づくり
ワークフローシステムは、業務のデジタル化およびDX推進の基盤として活用することが可能です。
将来的に会計業務や受発注業務、勤怠管理業務などの他業務をデジタル化していく場合、それぞれの業務領域でシステム・ツールを導入していくことになるでしょう。
しかし、システム・ツールが散在してしまうことで、各業務における手続きが煩雑化・複雑化してしまうケースが少なくありません。
システム連携が可能なワークフローシステムを導入していれば、会計システムや受発注管理システム、勤怠システムなどと連携し、各システムの手続きをワークフローシステムに集約することができます。
つまり、ワークフローシステムが基盤となって、デジタル化する業務範囲をシームレスに拡張していくことが可能になります。
ワークフローシステムによる建設DXの成功事例
ワークフローシステムの建設DXの有効性について説明したところで、次はワークフローシステム「X-point Cloud」と「AgileWorks」を導入して建設DXの推進に成功した事例を紹介したいと思います。
若手中心のDX推進チームが組織文化を変革(ヤンマーグリーンシステム)
ヤンマーグリーンシステム株式会社は、「X-point Cloud」を導入して申請業務を電子化し、DX実現に向けた業務のデジタルシフトを加速しました。
同社では従来、紙ベースで申請業務を行っており、コロナ禍の出社制限下では業務の円滑な進行が困難に。そこで同社は、グループ会社であるヤンマー建機株式会社がエイトレッドの「AgileWorks」で申請業務の電子化を実現していることに着目し、同じくエイトレッドが提供する「X-point Cloud」の導入を決断しました。
さらに同社は、DXの実現を目的に、若手社員による「DX推進チーム」を組成し、「X-point Cloud」による申請業務の電子化を推進。現在、同社では全部門・全社員が「X-point Cloud」を利用しており、社内の紙の申請書の80%以上が電子化されています。
場所や時間を選ばない働き方が可能になったほか、申請に関する業務時間の約90%が効率化され、年間約600時間の業務を削減することに成功しています。
また、「X-point Cloud」の導入プロジェクトはDX推進チームメンバーのITスキル向上につながり、DX推進の起爆剤に。現在は文書管理システムやRPA、BIツールの導入・連携を進めており、DX推進体制の確立が加速しています。
建設DXに向けた組織基盤を構築(加藤建設)
株式会社加藤建設は、工事関係を含む約100種類の帳票を「X-point Cloud」で電子化し、建設DXへの第一歩を踏み出しました。
「X-point Cloud」の導入以前、同社ではほとんどの業務で紙の書類が使われており、数々の無駄や非効率が発生していました。
利用していたグループウェアで申請業務の電子化を試みたものの、付属のワークフロー機能では同社の複雑な申請業務を電子化することができないことから、専用のワークフローシステム導入を決定。検討の結果、申請フォームや承認ルートを細やかに設定できる「X-point Cloud」の導入に至りました。
スモールスタートで運用を開始し、段階的に電子化の範囲を拡大して申請業務のデジタル化を推進。現在では社内のほとんどの申請業務が電子化されており、申請業務に要していた時間を約50%削減するなど全社的な業務効率化を実現し、建設DXに向けた組織基盤の構築に成功しています。
DXに向けた基盤づくりを推進(東急建設)
東急建設株式会社は、導入から15年以上が経過してサポート終了が迫っていた電子決裁システムを刷新するため、ワークフローシステム「AgileWorks」を導入。
以前利用していた電子決裁システムでは、工事に関する受注決裁などの一部業務で紙ベースの運用が残っていたほか、メンテナンス工数が増大し、他システムとの連携にも多くの手間を要していました。さらに、ベンダーサポートの終了が決定したことで、同社は決裁システムの刷新を決断。
検討の結果、「拡張性」と「組織や回付ルートの設定しやすさ」が決め手となり「AgileWorks」の導入に至りました。建築事業本部や土木事業本部などの施工部門も巻き込んだ導入プロジェクトを経て、300以上の部署、200ヶ所以上の作業所に「AgileWorks」を展開。
DXを阻害していた紙の申請書を電子化したほか、基幹システムなどの複数システムとの連携により各種業務をシームレスにつなげ、DXの実現に向けたデータ基盤づくりを推進しています/p>
清水建設株式会社の事例
清水建設株式会社は、本社移転を転機に働き方の革新活動の一環としてペーパーレスによる業務効率化を目指し、これまで紙で行っていた決裁・申請業務をワークフローシステム「AgileWorks」で電子化。
同社では以前、表計算ソフトで作成・印刷した紙帳票や、グループウェアの付属機能で申請・決裁業務を行っており、個々に運用負荷が高い状況でした。そうしたなか、本社移転をきっかけに紙資料の削減が求められたことや、新たに発足した働き方の革新活動の取り組みの一環としてペーパーレスに着手することとなり、ワークフローシステムの導入を決定。システム選定の結果、設定の柔軟性や操作性、システム連携による拡張性などを評価し、「AgileWorks」の導入を決めました。
導入後、決裁の迅速化や起案者の作業効率化、自動申請による所管部署の管理効率UP、保管・管理負荷の軽減、業務改善などを実現。月1,200時間のコスト削減につながるなど、大きな成果を得ています。
まとめ
国土交通省と日本経団連が、旧来より建設業界に定着している3K(「きつい」「汚い」「危険」) のイメージを払拭すべく新3K(「給料が良い」「休暇がとれる」「希望が持てる」)を提唱したのは2015年のことです。
あれから約10年、働き方改革やコロナ禍などをきっかけに大きく変わりつつある今だからこそ、ワークフローシステムを導入し、建設業界のニューノーマルな組織体制を築いてみてはいかがでしょうか。
担当者必見!
【録画配信(無料)】建設DXの推進に役立つワークフローシステムとは?
建設DXのはじめの一歩としてワークフローシステムをご紹介させていただきます。
こんな人におすすめ
・建設業界にお勤めの方
・建設DXの進め方を知りたい方
・紙業務のデジタル化を検討されている方


「ワークフロー総研」では、ワークフローをWork(仕事)+Flow(流れ)=「業務プロセス」と定義して、日常業務の課題や顧客の潜在ニーズの視点からワークフローの必要性、重要性を伝えていくために、取材やアンケート調査を元にオンライン上で情報を発信していきます。また、幅広い情報発信を目指すために、専門家や企業とのコラボレーションを進め、広く深くわかりやすい情報を提供してまいります。