経営者が「経営者の仕事」をするために必要な環境を整理する
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ワークフローは日常業務の効率化はもちろん、企業が抱える経営課題を解決します。
そのメリットを最大化するためには、経営者が自らの仕事領域を把握し、環境整備を行うことが欠かせません。
そこで今回は経営者の仕事を4つの要素にわけ、それぞれに対するワークフローの重要性を解説していきます。
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企業理念はワークフローで仕組化を
経営者の仕事は多岐にわたり、対象は業務のすべてと言っても過言ではありません。しかし会社の規模が大きくなれば一人でこなすことはできません。そこで、営業部、管理部、人事部といった各セクションにわけて任せることになります。
しかし、最終的に経営者に残る仕事、経営者だからこその仕事があります。それが「理念・戦略の作成と浸透」「PDCAサイクルの実行」「リソースの調達と配分」「エグゼクティブへの渉外活動」の4つ。
まずは「理念・戦略の作成と浸透」に触れながら、ワークフローの重要性をお伝えします。
企業経営に大きな野望や目標がなくても、現状で満足しているということはないでしょう。規模の大小問わず、何らかの問題や課題はあるもの。どんな会社でも問題や課題を乗り越え、成長を目指していくことになるはずです。
では、どこを目指して成長させていくのか。この、目指すところを示すのが、ビジョンとミッション。いわゆる経営理念です。
ビジョンとは見えるもの、つまり会社の目指すところ。短中期的であれば3年後や5年後、長期的であれば30年後、100年後のビジョンを立てる会社もあります。
一方のミッションは、果たすべき使命。使命は理屈で決まる世界ではなく、経営者なり創業者が決めるべきものであり、スタッフや第三者が議論して決めるものではありません。
また、ビジョンは成長に応じて変わることがあっても、ミッションは基本的に変わるものではないと言えます。
企業経営では、このミッションを踏まえたビジョンを実現すべく戦略がつくられ、バリュー(行動指針)に沿いつつ組織化されます。これら大方針が社内へ浸透していなければ、各人の日々の仕事にブレが生じ、ひいては大方針の実現が遠くなりかねません。
そのため、理念を掲げるリーダーである経営者がミッションやビジョン、戦略を作成し、浸透させる必要があるのです。
浸透させるということはどういうことか。それは仕組みに落とすということと言えます。仕組みとは業務の役割分担と流れ、つまりワークフローに落とし込むということです。また、稟議を伴う意思決定は、経営理念や戦略を反映したもの。だからこそ、「理念・戦略の作成と浸透」にはワークフローが大切なのです。
PDCAサイクルの実行にはワークフローが効果的
経営理念や戦略は、実行しなければ“絵に描いた餅”です。しかし、各現場の実務を経営者がやっているようでは会社が大きくなりようがありません。そこで、経営者は実務をやるのではなく、実務を回していく、監督していくこととなります。
戦略に基づいて計画を立て、組織を動かして実行していく。実行したものは過程や結果に良し悪しあるので、それをしっかりチェックし評価する。必要であれば改善をし、それを戦略や実行計画に生かしていく。
これを繰り返すことがPDCAサイクル(Plan計画→Do実行→Check評価→Action改善)です。よく「トヨタのPDCA」など製造現場で大事と言われますが、現場レベルの改善活動だけではなく、経営レベルでも必要なものです。
経営レベルでの肝となるのが、組織マネジメント。Do実行は、自分以外のスタッフにしてもらうことになるので、組織内の情報共有やチームワークなどが重要となります。
さらに、PDCAを回すうえではCheck評価からのAction改善も欠かせません。Do実行の過程と結果を残すことが、Check、Actionにつながり、失敗を防ぎ、成功を引き寄せるのです。
情報を共有し、稟議で意思決定プロセスの過程と結果をログで残る。これを可能にするのがまさにワークフローです。「PDCAサイクルの実行」を迅速明快に回して成長を促すには、ワークフローが極めて効果的なのです。
ワークフローは、リソース配分の基礎情報であり、情報や知恵をストックする
戦略を立てて組織を動かすとなると、人材や設備投資が必要となります。つまりは「ヒト」「モノ」「カネ」、いわゆる経営資源(リソース)を用意しなければいけません。これらを調達し、選択と集中によってどの業務に使うのかを決めていきます。これが「リソースの調達と配分」です。
こうしたリソースの調達は、大企業なら人事部や財務部など、組織でスタッフが行うことでしょう。しかし、会社が盤石でない中小やベンチャー企業のリソース調達は、経営者次第となります。銀行も投資家も経営者を見て、出資するかどうかを判断します。
採用も、会社のブランドで応募が来るわけではないので、これも経営者次第。結局は経営者の仕事となります。
どこになにがどれだけ必要なのか。リソースを配分するにはまず、現状把握が欠かせません。それには情報を現場から吸い上げる仕組みが重要です。つまりはワークフロー。また、リソースを戦略的に配分していくには情報が必要です。
携わっている事業は儲かりそうか、自社はどこに向かってるのか、以前の取引の際はどうだったのか、などは過去の稟議書を見ればわかります。
設備やビジネスパートナーへの投資に関しても、優先順位を見積もってペンディングという判断もありえます。そういった意思決定を的確に行うための情報として、過去や現在の情報を検索できるのがワークフローです。
企業の財産は前述の「ヒト」「モノ」「カネ」だと言われますが、「情報」も同様に大切です。情報やノウハウは失ったり減ったりすることがありません。忠義に厚い人材でもいつかは退社します。高性能な設備であってもやがて陳腐化しますし、資本は経営状況と隣り合わせで安定したものではありません。
しかし、情報やノウハウは記録さえしておけば増えるのみ。裏切られることはありません。ワークフローは、会社の情報やノウハウを記録して安定的な経営を約束する、企業の財産と言えるでしょう。
経営陣と現場をつなぎ社員の当事者意識を醸成
企業が事業拡大していくうえで、ビジネスパートナーを増やし、良好な関係を築いていくことは欠かせません。会社同士の友好関係は、ある程度の権限をもった役職でないとつくりづらいものです。特に事業提携などの大きなプロジェクトは、経営者同士の関係性と意思決定によって成立するものです。
そこで重要となるのが「エグゼクティブへの渉外活動」。これは経営者だからこその仕事です。社外活動には情報交換の意味合いもあります。現場レベルが持っている情報と、経営レベルが持っている情報では重要度が違います。特に経営マターの情報は、経営者同士でないと交換されないものです。
経営者は接待や会食が多いなど、会社にいないイメージがあるかもしれません。しかし、こうした社外活動によってビジネスチャンスが見つかったり、事業提携のきっかけになったり、ビジネスが進んだりするものです。外にアンテナを広げて会社の枠を広げられる適任者は、経営者なのです。
とはいえ、その渉外活動で得た新規事業や提携になりえる案件は、必ずしも経営者が独断で決めるものではないでしょう。稟議や会議を通して起案され、慎重に検討されるものです。そこで重要なのがワークフローです。
新規案件とはいえ、実務は経営者だけが行うわけではありませんし、専門部署や各責任者を巻き込む必要があります。そして、より円滑に進めるためには各人の当事者意識を高めることが大切です。
また、新規案件はトップダウンではなく、現場レベルからのボトムアップで起案されることもあるでしょう。ワークフローという仕組みで情報を共有し、稟議を重ねて現場と経営陣を一体化させる。起案者の当事者意識を醸成し、関係部署を巻き込んでいく。そのなかで様々な知見や意見を取り込みながら、新たなビジネスが生まれることもあるでしょう。
経営者と現場をシームレスにつなぎ、相互がよりよい関係性をもって会社を成長拡大させていく。ぜひワークフローで経営者のビジネス環境を整備して、イノベーティブな経営を実現しましょう。
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フェロー
高森厚太郎
一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事
東京大学法学部卒業。筑波大学大学院、デジタルハリウッド大学院修了。日本長期信用銀行(法人融資)、グロービス(eラーニング)、GAGA/USEN(邦画製作、動画配信、音楽出版)、Ed-Techベンチャー取締役(コンテンツ、管理)を歴任。現在は数字とロジックで経営と現場をナビゲートするプレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFOとして中小・ベンチャー企業などへの経営コンサルティングのかたわら、デジタルハリウッド大学院客員教授、グロービス・マネジメント・スクール講師、パートナーCFO養成塾頭等も務める。2020年9月にはワークフロー総研のフェローに就任。著書に「中小・ベンチャー企業CFOの教科書」(中央経済社)がある。