これからの働き方を考える

ウィズコロナ・アフターコロナ時代の働き方、IT投資のトレンド徹底解説・後編

ウィズコロナ・アフターコロナ時代の働き方、IT投資のトレンド徹底解説・後編

本記事では前編・後編にわたって、アイ・ティ・アール(以下、ITR) シニア・アナリスト三浦氏にお伺いした、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大前後のIT投資動向調査結果と今後のIT投資のトレンド予測をお伝えしています。

後編では具体的な投資時期やITツールの検討状況について見ていきます。

企業のIT投資に関する意欲の変化、投資テーマのトレンドについて解説した前編はこちらをご覧ください。

前編はこちら

ウィズコロナ・アフターコロナ時代の働き方、IT投資のトレンド徹底解説・前編

OUTLINE 読みたい項目からご覧いただけます。

ワークフローはこんなに進化!最新のワークフローシステムが解決できる課題とは?

年度内にインフラ強化と社内外文書の電子化に着手予定が多数

前編では企業のIT投資意欲が各段に高まっていることを確認しましたが、では実際にどのようなスケジュールで投資を検討しているのでしょうか。次のような結果が明らかになりました。

以前から、あるいは緊急対策として「実施済み」として最も多かったのは、前編でデジタル技術の活用でも選択率の高かった「コミュニケーション・ツールの新規・追加購入」でした。

「テレワーク制度の導入」「リモートアクセス環境の新規・追加購入」の上位3項目は、テレワーク実施のための必須項目と言えます。

「実施済み」回答が多く、「実施予定」としては比較的選択率は低くなっていますので、おおよそ緊急対策として完了しつつあるのでしょう。

一方で「実施予定」として選択率が高かったのは「PC、モバイルデバイスの追加購入・追加支給」、「ネットワークインフラの強化」、「社内外取引文書(契約書など)の電子化対象拡大」、「社内文書(稟議書など)の電子化対象拡大」でした。

「PC、モバイルデバイスの追加購入・追加支給」、「ネットワークインフラの強化」は、フルリモートでのテレワークの長期化に対応するための投資であることが推察されます。

これらは「緊急措置として実施し、完了」の選択率も比較的高い項目です。テレビ会議用のカメラやデスクトップモニターなど、自宅での作業環境の整備が該当します。

「社内外取引文書(契約書など)の電子化対象拡大」、「社内文書(稟議書など)の電子化対象拡大」は、押印や紙の書類の処理のために出社を余儀なくされるいわゆる「紙、ハンコ問題」に対応する項目です。

しかし、詳細の時期を見ると「実施予定」の中でも「時期は未定だが実施予定」が、他の項目に比べて高い結果が出ています。

「この質問では、目の前のテレワーク実施のために実施した項目、テレワークを実施して露呈した課題に対する対応として企業が検討している項目を示しています。

在宅からでも生産性を下げないために、ITインフラへの投資は状況を鑑みながら継続傾向となるでしょう。

一方で紙、ハンコ問題はテレワークを妨げる大きな問題の一つとして捉えられながらも、法令の整備状況や社内の法務との確認・調整、加えて契約書などは取引先の対応という課題があるので、どう進めていいのか難しいという声をよく耳にします。

社内外いずれも課題の解消には少し時間がかかると考える企業は多く、それがこの結果に反映されているようです。

どちらかというと、着手しやすい社内文書に対する回答のほうが若干、着手時期が早いことが分かります」(三浦氏)

さらに具体的に、新規導入/追加投資の対象となったIT製品サービスを見てみましょう。

上図の結果からも想定できるとおり、新規導入/追加投資ともにトップは、「Web会議/ウェビナー」です。

これに「グループチャット/社内SNS」「オンラインファイル共有」など、テレワークに直ちに必要となるコミュニケーション系が上位となっています。

しかし、三浦氏は今後の早急な投資対象として「電子決裁」「勤怠・就業管理」「電子契約/契約管理」への注目が急速に高まっていると指摘しています。

また、「近年、急速に市場が拡大している『電子契約/契約管理』よりも、『電子決裁/ワークフロー』が新規導入・追加投資ともに比率が高いことに注目しています。

法整備や取引先からの影響がそれほど高くない社内文書およびそれに関わる回覧・申請・承認プロセスから、まだまだ電子化が必要ということではないでしょうか」とも述べています。

投資優先度はコミュニケーション、情報共有、意思決定が高い

コロナ禍の前後で、具体的に投資を検討するITツールの比較を行いました。

Web会議/ウェビナー」は突出しています。新規導入は4倍に増加しています。

これと合わせて「グループチャット/社内SNS」が2番目に選択率が高く、テレワーク実施時のコミュニケーションツール確保が重要視されているということがこの質問でも裏付けされました。

「オンラインファイル共有」、「電子決裁/ワークフロー」も緊急対策投資先として選択率が伸びています。この傾向について三浦氏は次のように説明しています。

「コロナ禍前後で、具体的な技術・IT投資ツール先は大きく
(1)コミュニケーションツール
(2)情報共有、意思決定ツール
の2つに大きく絞られていることが分かります。

(1)コミュニケーションツールは言わずもがな、企業運営・売り上げへ直接関わるので新規・既存投資ともに、投資対象への意向が高いのは納得です。

(2)情報共有、意思決定ツールですが、こちらも新規、追加投資ともに投資意向は増大していますから、コロナ禍の影響を確実に受けていると言ってよいでしょう。オフィスでは紙の書類で回覧、申請、決裁といった情報共有ができていても、テレワークではそうはいきません。追加投資の比率も比較的高く、これを機に電子化対象を拡張するという選択をする企業も加わっているかもしれません。

その他はオンライン上での様々な情報のやりとりが行われることを鑑みてか、セキュリティ関連の項目でも変化が見られました」(三浦氏)

ウィズコロナ/アフターコロナ時代のIT戦略ー
投資した技術・ツールを組み合わせてより高度な業務運営へ

ここまで企業のIT投資への意欲の変化や、具体的な技術・ツールの投資対象についてトレンドを解説してきましたが、最後に少し先の未来におけるIT戦略予測をしていきたいと思います。

コロナ以前から投資意欲の高かったRPA+ワークフロー

「緊急の投資が一旦落ち着き、日々のコミュニケーションや情報共有のデジタル化が進んだあとは、それらのツールを組み合わせ、より高度な運用効率化が進んでいくということが予想されます。上図はRPAとワークフローシステムを組み合わせた例です。

RPA→省力化、ワークフローシステム→承認業務の効率化ということで、起案と承認/否認の、本当に人の判断が必要な部分以外はRPAに任せるという業務の流れが表現されています」(三浦氏)

RPAは定型化された業務をロボットに任せ、自動化するツールの一つです。自動化により作業時間の短縮、人的ミスの削減ができ、生産性を向上させることが可能です。

ワークフローシステムが多く利用されるような申請、稟議といった業務は、書類のチェックや申請ルートを進める(書類を確認に回す)という業務が発生します。こうした業務は定型化できるため、RPAとの相乗効果が期待できます。

社内外で「ハンコ問題」の解消

既に触れた押印や紙の書類の処理のために出社が余儀なくされる「紙、ハンコ問題」は、電子契約+社内外のフローを電子化することで解消することができます。

「相手方がいるので難しいという理由がまだ多いですが、緊急調査結果からも見て分かるように、全体として社内外文書の電子化、電子契約へ投資する気運は高まってきています。

ゆくゆくは上図のような運用が実現できる会社は増えていくのではないでしょうか」(三浦氏)

結び

これまで前編・後編を通して企業のIT投資意欲、投資先のテーマや技術・ツールのトレンドとその変化についてお伝えしてきました。いかがでしたでしょうか。

これを読んでくださっている企業の皆さんは刻一刻と変化する状況の中、様々な課題に直面されていると思います。本記事がそれぞれの課題に合った対応策立案の一助となれば幸いです。

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ワークフローはこんなに進化!最新のワークフローシステムが解決できる課題とは?

<解説者プロフィール>

三浦 竜樹氏

株式会社アイ・ティ・アール シニア・アナリスト。
広告代理店にて、ITベンダーのマーケティング・プラン策定、広告戦略などに携わる。2001年4月より現職。

これまでに、コミュニケーション/コラボレーション基盤の刷新、ワークスタイル変革、仮想デスクトップ導入支援、Web/EC基盤構築・刷新などのコンサルティングに携わる。近年は主に、企業におけるクライアント運用管理(仮想化/DaaS)、Web/EC戦略策定、マーケティングオートメーションやCDP、SAF/CRMなどのマーケティング、SalesTech分野、および主にこれらの業務領域での音声認識などのAIの適用に関するアドバイスやコンサルティングを提供している。

プロフィールをもっと見る

※本記事で取り上げている調査レポートの概要は次の通りです。

『国内IT投資動向調査報告書2020』

https://www.itr.co.jp/report/itinvestment/S20000100.html
ITRが毎年実施している調査報告書の2019年12月に発行されたもの。調査時期は2019年8~9月、有効回答数2,826件。文中では『IT投資動向調査』と表記します。

『コロナ禍の企業IT動向に関する影響調査』

https://www.itr.co.jp/special/covid_19/index.html#COVID-19_01
ITRが実施した、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大後に実施した緊急調査レポート。調査時期は2020年4月24日~27日、同年5月12日に発行、有効回答数1,370件。文中では『緊急調査』と表記します。

ワークフロー総研 編集部
この記事を書いた人 ワークフロー総研 編集部

「ワークフロー総研」では、ワークフローをWork(仕事)+Flow(流れ)=「業務プロセス」と定義して、日常業務の課題や顧客の潜在ニーズの視点からワークフローの必要性、重要性を伝えていくために、取材やアンケート調査を元にオンライン上で情報を発信していきます。また、幅広い情報発信を目指すために、専門家や企業とのコラボレーションを進め、広く深くわかりやすい情報を提供してまいります。

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