これからの働き方を考える

ワークフロー総研メディア開設記念対談、働き方とワークフロー(後編) ~本質的な働き方改革に向けて~

ワークフロー総研メディア開設記念対談、働き方とワークフロー(後編) ~本質的な働き方改革に向けて~

 本記事はワークフロー総研 フェロー 沢渡氏、ワークフロー総研 所長 岡本の対談記事後編です。前編では働き方や社会の価値観の変化について、それぞれの意見を交換しました。後半では新しい社会、価値観に適応するためにどのように変わっていけばよいか議論を深めています。

前編はこちら

目指すは攻めのバックオフィス~総務とワークフロー~(前編)

<対談者プロフィール>

フェロー紹介 沢渡あまね氏

沢渡あまね氏

ワークフロー総研 フェロー、業務プロセス/オフィスコミュニケーション改善士。
企業・自治体・官公庁などこれまで300を超える組織のワークスタイル変革、組織風土改革、マネジメント変革を支援。著書『職場の問題地図』『職場の問題かるた』『仕事ごっこ』『業務デザインの発想法』『チームの生産性をあげる。』など多数。

ワークフロー総研 所長
岡本 康広

ワークフローシステムを開発・提供するエイトレッドの代表取締役社長も務める。
ワークフローを出発点とした働き方の見直しが意思決定の迅速化、組織の生産性向上へ貢献するという思いからワークフローの普及を目指し2020年4月、ワークフロー総研を設立して現職。エイトレッド代表としての知見も交えながら、コラムの執筆や社外とのコラボレーションに積極的に取り組んでいる。

~今回対談を実施した環境~

緊急事態宣言を受け、沢渡氏は浜松、岡本は東京から、Zoomで対談を行いました。

本質的な働き方改革をもたらす切り口とは?

沢渡:前半は日本でどのような変化が起きているかに焦点を当てたトークでした。後半では、どのような切り口で環境の変化に適応していけばよいかをお話できればと思います。

 そこでもう一つスライドをご紹介します。このスライドは、4種類の働き方改革の切り口を示しています。日本ではこれまでも働き方改革が叫ばれ、各企業は何かしらの取り組みをしてきたわけですが、その内容は①または②にとどまっていたのではないでしょうか。

 例えば、働き方改革で実施された施策の一つに残業抑制があります。しかし結果としては、残業ができないのでそのまま翌日に仕事が繰り越されてしまった、残業を記録としては残せないのでサービス残業が増えたという声を耳にします。まさに③に切り込んでいないから起きた結果でしょう。  コロナ禍で④場の変更が余儀なくされた企業は多いですが、その変更に耐えうる③プロセス(仕事のやり方)を想定していなかったので、今これだけ問題が発生してしまっているのだと思います。

岡本:これまでは、そもそも旧来製造業モデルでみんなが働いてきたので、まずは形からということで、①制度には目が向きやすいのでしょうね。数年前には過労死問題が取りざたされた時期がありました。まずは無理やりにでも制度を作って、働き方を直ちに変えなければならないという社会的要請もあったのだと思います。

 しかし制度は作っても実態が追いついていないのが現状です。ワークフロー総研でもコロナ禍を受けていくつか実態調査を行いましたが、総じてテレワーク制度があっても機能していないという結果が明らかになりました。本質的に働き方を変えるためには、①から④、総合して切り込んでいかないといけませんね。

沢渡:そうなんです。これからの時代、多様性あふれる組織を目指しイノベーションを起こすことが大事であるとはよく言われます。もし今、旧来製造業モデルの組織が創造的な組織を目指すのであれば、足枷になるようなあらゆる習慣を見直し、コラボレーションが起きやすい土壌を作っていくことが大切です。

 さらにそのポイントについてお伝えすると、2つあって、それは1)経路の見える化、2)結果の見える化だと思っています。誰がどのようにつながっているか、そのつながりでどのように協働し、その結果はどうなったのかを誰が見ても分かるようにすることが大切です。

 その結果、まず透明性の高さが個々人の信頼関係を生みます。加えてプロセスが明確になっているのでPDCAサイクルも回しやすくなります。人材の流動性が高まり新しくやってきた人がいても、過去どういった成功/失敗がそのプロセスの中であったのかが分かるので、成功確率を上げられるはずです。

 組織全体でプロジェクトやビジネスの成功に向けて取り組めるようにするといいですよね。こういった組織が健康的、理想的であると言えると思います。

岡本:今おっしゃった2つのポイントは、まさにワークフローの根底にある思想だと思います。ワークフローは単に正確に情報を運ぶ・伝えるだけの仕組みだと思われがちですが、本来は、関わる人たちがその人の知見や専門性を加えて次の人に送り、最終的によりよい意思決定ができるようになっているのが理想です。

 稟議を上げるときを例にとってみます。紙の書類でワークフローを回すと、書類を見たときに思いついたアイディアは別の資料を作るか、その場で次の承認者に話せなければ立ち消えになってしまいます。数人、もしかしたら十数人の承認を経て決裁者の手元に上げられる稟議書には、その人たちのアイデア、アドバイスなど様々な情報が詰め込まれているはずが、目の前にあるのは承認のハンコだけ......それまで交わされた議論の時間がなかったことになってしまっています。こんなにもったいないことはありません。

 決裁者に至るまでに経たあらゆるプロセスを残しておくこと、関わった人たちの知恵を残して次に活かすことが、本質的な効率化、生産性向上につながるのではないでしょうか。

 働き方改革の背景には日本の労働人口の減少、生産性の低さという大きな課題があります。これらを解決するためには一人ひとりがプロフェッショナルとしてそれぞれの専門性を発揮してもらうことが不可欠です。そうなったとき組織は、個々人の価値発揮を支えるために制度や風土を整えていく存在として、その役割を変えていくことが求められるのではないかと思っています。

ITツール活用で、変化に強い柔軟な組織へ

岡本:課題へ取り組む切り口、変化した先の組織や個人像についてお話したところですが、具体的な方法についてはどうでしょうか。

沢渡:オープン型の組織を実現すること、そして今回のコロナ禍の状況にあっても変わらず事業継続していくためにはやはりITツールは必須ですね。私はもともと東京が拠点であったものの、ビジネス拠点が東海地区にシフトしました。新型コロナで移動が憚られる状況下、3月からはずっと浜松に滞在して生活をしています。浜松にいながらにして、ITツールをフル活用でまったく問題なく仕事ができています。

 この対談も企画はFacebook Messenger、対談はZoomでやっていますし、ビジネスチャット、Web会議システム、あとはタスク管理ツールやマインドマップなど思考を可視化して共有することができるツールがあれば、まったく問題なくコミュニケーションがとれ、様々な人とコラボレーションができていると感じています。

 岡本さんはどうですか?

岡本:ワークフローシステムはもちろんですが、チャットツール、オンラインのファイル共有は自身も便利さを感じているところです。チャットツールは、コミュニケーションの形を変えたと思います。オンラインのファイル共有はURL共有ができるので、重たいファイルのやりとりをしなくて済みますし、バージョン管理もできます。共同編集をしてどんどんアイデアをブラッシュアップしていくことができます。チャットと組み合わせてとても効率が良いですよね。

 それからRPAにも注目しています。先ほどオペレーション型とクリエーション型の仕事があるというお話がありましたが、RPAはオペレーション型の仕事を効率化し、より人が人にしかできない仕事に集中することができます。その分コラボレーションの時間を増やすことに一役買ってくれます。

沢渡:すごくよく分かります。今いきなりITツールの話になっていますが、これだけメリットがあって使わないのはもったいないですね。企業の現状を伺うと、ITツールを導入するだけで得られるメリットがたくさんあるように思います。それこそ「紙、ハンコ問題」はITツール導入で解消できる部分も多いでしょう。

岡本:そうですね。ただ、私は紙のほうがいい作業があって...... 例えば文章などの赤入れは紙の方がやりやすいです。

沢渡:はい、業務によって当然向き不向きはあると思います。それでいいと思っています。これもやはり、目的などによって手段を選択できるのが大切だと思います。

岡本:働き方や手段を「選択できるようになる」は、この対談中何度も出てきました。これからの働き方のテーマですね。

これからの働き方に、ワークフロー総研ができること

岡本:いよいよ対談もまとめに入ってきました。大きな視点から具体的なツールの話まで様々お話してきましたね。確実に社会は変わっているので、その時々の価値観を体現できるような組織づくりをしていかなければならないと感じました。そのためにITツールの活用は必須ですね。多様性を受け止めやすくなります。組織の柔軟性を高めると改めて思いました。

沢渡:そうですよね。しかしこれまでの働き方、そして社会から変わることに対して抵抗がある人は少なくありません。実際、変えることに対して感情的な部分でわだかまりも起きやすいと思います。しかしそのまま現状維持を続けると、社会の変化に適応できません。変化に適応している企業、そして個人との格差は確実に広がっていってしまいます。一番若い今、未来へ負債を残さないように組織も個人も変わる決断をしていってほしいと思います。

岡本:そうですね。ワークフロー総研ではどういった未来を目指したいのか、一人ひとりの答えがあると思いますので、その答えを一緒に考えようというスタンスをとっています。

沢渡:「働き方は、みんなで変えていく」ですね。

岡本:はい。選択できるようになることが働き方のテーマになりそうだと言いましたが、その選択肢はこれから作っていくものだと思います。すでに考えられた働き方を紹介したり推奨するのではなく、それぞれの働き方を一緒に考え、実践してもらう後押しとなるコンテンツを発信していきたいと考えています。

沢渡:私もITを使って世の中を良くしていきたい、強い思いがあります。ワークフロー総研での活動を通して、少しでも多くの方に課題の着眼点や解決方法をお伝えしていければと思います。

岡本:これから、どうぞよろしくお願いします。今日はありがとうございました。

沢渡:ありがとうございました。

ワークフローを知らない人に 上手に説明するための「ワークフローとは?」
ワークフロー総研 編集部
この記事を書いた人 ワークフロー総研 編集部

「ワークフロー総研」では、ワークフローをWork(仕事)+Flow(流れ)=「業務プロセス」と定義して、日常業務の課題や顧客の潜在ニーズの視点からワークフローの必要性、重要性を伝えていくために、取材やアンケート調査を元にオンライン上で情報を発信していきます。また、幅広い情報発信を目指すために、専門家や企業とのコラボレーションを進め、広く深くわかりやすい情報を提供してまいります。

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